育成就労制度の申請・届出の流れをわかりやすく解説

2027年の施行を目指して準備が進む「育成就労制度」は、外国人材を育て、特定技能への移行を見据えた新しい就労制度です。
企業が制度を活用するには、受入れのための申請や届出など、いくつかの手続きを正しく行う必要があります。
この記事では、育成就労制度を導入する際に企業が行うべき申請・届出の流れをわかりやすく解説します。申請先や必要書類、手続き後のフォローまでを理解し、スムーズな受入れ準備を進めましょう。

育成就労制度の申請に必要な基本知識

育成就労制度は、外国人材を「教育・支援しながら受け入れる」ことを目的とした制度です。
受入れを希望する企業は、まず制度の対象業種であるかを確認したうえで、所定の手続きを行う必要があります。

申請の中心となるのは、出入国在留管理庁(入管庁)への在留資格認定申請です。
この手続きにより、外国人が日本で「育成就労」として働くための在留資格が付与されます。
また、企業は育成計画や支援体制を整え、外国人が安心して就労できる環境を準備することが求められます。

加えて、企業自身が「受入れ機関」として登録することも必要です。
この登録には、過去の労務管理実績や法令遵守体制の確認が含まれるため、早めの準備が重要です。
まずは制度全体の枠組みと、手続きを担う行政機関の役割を理解しておきましょう。

受入れまでの手続きの全体像

育成就労制度の申請・届出は、複数の段階を経て進行します。
全体の流れを把握しておくことで、申請漏れやスケジュールの遅延を防ぐことができます。

  1. 受入れ準備:対象業種の確認、社内支援体制の整備
  2. 受入れ機関登録:法令遵守体制や財務基盤の確認
  3. 育成就労計画の作成:教育・指導内容、日本語学習、生活支援の方針を策定
  4. 在留資格認定証明書の申請(入管庁)
  5. 外国人本人のビザ申請・入国
  6. 就労開始後の支援実施・報告義務

これらの手続きは、技能実習制度よりも企業の主体的関与が大きい点が特徴です。
企業が教育・支援を一貫して担うため、内部体制の整備が不可欠です。
手続きを進める前に、スケジュールを時系列で整理しておくとスムーズに進行します。

登録支援機関・監理支援機関との関わり方

育成就労制度では、受入れ企業がすべての支援を自社で行うことも可能ですが、
実務の一部を登録支援機関および監理支援機関への委託などパートナーを頼ることが可能です。

登録支援機関は、生活支援・日本語教育・相談対応などを専門的にサポートする外部機関であり、企業は支援内容に応じて契約を結ぶことで、より適正かつ継続的な支援を実施できます。
ただし、支援を委託しても最終的な責任は受入れ企業にある点に注意が必要です。

また、制度全体の運用監督は出入国在留管理庁および厚生労働省が担います。
企業は管理支援機関からの報告要請や立入検査に対応する義務があり、提出書類や報告内容の整合性を常に保つことが求められます。

申請時に必要な書類と注意点

育成就労制度の申請では、企業の「受入れ体制」「教育方針」「雇用条件」などが厳格に確認されます。そのため、必要書類の準備と内容の整合性が非常に重要です。主な書類は以下のとおりです。

  • 育成就労計画書:日本語教育、技能指導、生活支援の実施内容を具体的に記載。
    • 教育時間・担当者・教材・評価方法など、実施の根拠を明示することが求められます。
  • 受入れ機関の登録申請書:企業情報、責任者、法令遵守体制を示す資料。
    • 社内規程や労務管理体制の整備状況が確認されます。
  • 雇用契約書・労働条件通知書:日本人と同等以上の待遇であることを証明するため、賃金・勤務時間・休日を明確に。
  • 財務諸表や社会保険加入証明書:企業の健全性と雇用維持能力を示すために必要。
  • 登録支援機関との契約書(委託する場合):支援範囲、費用負担、報告方法を具体的に記載することが必須です。

申請時の最大の注意点は、記載内容の一貫性と具体性です。
特に、育成就労計画と雇用契約内容が矛盾しているケースや、「日本語教育」「生活支援」が曖昧なまま提出されるケースでは、再提出を求められることがあります。

また、書類提出先は原則として出入国在留管理局ですが、業種によっては所管省庁(例:厚生労働省、農林水産省など)への写し提出が求められる場合もあります。
作成段階で担当行政書士や登録支援機関と連携し、省庁ごとのフォーマットや添付資料の違いを確認しておくことが重要です。

手続き後に企業が行うフォロー・報告義務

育成就労制度では、申請や認定が終わっても企業の役割は終わりではありません。外国人材の育成・支援・報告という3つのフォローが、受入れ後も継続して求められます。この段階を丁寧に行うことで、制度の適正運用と人材定着の両方を実現できます。

教育・研修の実施

育成就労計画に基づき、企業は定期的に教育や研修を行います。
OJT(実務を通じた指導)に加え、OFF-JT(日本語学習や安全衛生教育)など、体系的なプログラムを組むことが理想です。
教育記録や教材のコピーを保管し、監督機関の確認に備えましょう。
学習内容を「計画→実施→評価→改善」のサイクルで回すことが重要です。

生活支援と相談対応

外国人材が安心して生活できるように、企業または登録支援機関が生活支援を実施します。
住居の確保、行政手続きの案内、医療や年金制度のサポート、トラブル相談への対応など、支援項目は多岐にわたります。
特に、文化・言語の違いからくる不安を軽減するためには、日常的なコミュニケーションと早期対応が鍵です。
問題が発生した場合は、地方出入国在留管理局や登録支援機関へ速やかに報告し、再発防止策を共有します。

報告と記録の管理

育成就労期間中は、教育や生活支援の実施状況を定期的に報告する義務があります。報告内容には、出勤状況、日本語研修の実績、生活支援の記録などが含まれます。提出先は原則として出入国在留管理庁ですが、分野によっては所管省庁への報告も必要です。

特に、離職・転職・契約解除が発生した場合は14日以内の報告が義務化される見込みです。
報告の遅れや虚偽記載があると、受入れ機関登録の取消しや次回申請の制限などの行政処分を受けるおそれがあります。

継続支援の重要性

育成就労は「入国まで」ではなく「在留中の成長支援」までが企業の責任です。
教育・生活・報告のすべてを記録として残し、特定技能への移行時に活用できるデータを蓄積しておくことが望ましいでしょう。
継続的な支援は、外国人材の信頼を高め、職場への定着とモチベーション向上につながります。
「制度を運用する」意識から一歩進み、「共に成長するパートナーとして支援する」姿勢が求められます。

まとめ

育成就労制度の申請手続きは、これまでの技能実習制度よりも企業の役割が大きく、「自社で教育・支援を行う責任」が明確に求められます。
準備・申請・支援・報告の流れを理解し、制度の趣旨に沿った適正な運用を行うことが重要です。
早めの体制整備と専門家への相談を通じて、スムーズな申請と安定した外国人雇用を実現しましょう。

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渡邉 圭史
人材ビジネス会社の一員として外国人雇用の推進に取り組んでいます。特定技能や技能実習制度、外国人労働者の受け入れについて、実務や日々の学びを通じて経験を積んでいます。このブログでは、外国人雇用に関する知識や最新情報、実際の現場で感じたことを分かりやすくお届けします。ぜひ気軽に読んでいただければと思います!