2027年に施行予定の「育成就労制度」は、外国人材を教育・育成し、将来的に日本で長期的に働けるよう支援する新しい制度です。
一方、「特定技能制度」はすでに運用が始まっており、即戦力としての外国人材を受け入れる仕組みです。
両制度は似ているようで、目的や対象、位置づけが異なります。
本記事では、両制度の関係性と違いを整理し、企業がどのように活用すべきかをわかりやすく解説します。
育成就労制度の概要をおさらい
育成就労制度は、外国人材を「育てて定着させる」ことを目的に設計された制度です。
旧・技能実習制度の課題を踏まえ、教育・生活支援・キャリア形成を一体で行う点が特徴です。
- 在留資格:育成就労
- 在留期間:最長3年
- 目的:人材育成と特定技能への移行
- 企業の義務:教育、日本語学習、生活支援
外国人材が日本社会に適応し、将来的に特定技能人材として活躍できるよう支援する「育成型」の制度です。
特定技能制度の基本と役割
特定技能制度は、一定の日本語力と技能を有する外国人材を「即戦力」として受け入れる制度です。
2019年に導入され、深刻な人手不足業種での就労を目的としています。
- 在留資格:特定技能1号・2号
- 在留期間:1号=最長5年/2号=期間上限なし(更新制)
- 特徴:試験合格により在留可能、家族帯同可(2号のみ)
- 対象分野:介護・建設・製造業など16分野
特定技能制度は、育成就労制度で育てた人材が次のステップとして活躍する受け皿でもあり、両制度は分断された仕組みではなく連動しています。
育成就労制度と特定技能制度の違い
育成就労制度と特定技能制度は、いずれも外国人材の就労を支える仕組みですが、目的と運用の考え方が大きく異なります。
育成就労は、外国人を教育・育成し、日本での定着を目指す「育てる制度」であり、企業が教育や生活支援を通じて人材を成長させる点に特徴があります。
一方、特定技能は、すでに一定の日本語力や専門的技能を備えた外国人材を「活かす制度」として位置づけられ、即戦力としての就労を前提としています。
比較項目 | 育成就労制度 | 特定技能制度 |
---|---|---|
制度の目的 | 外国人材を育成・教育し、定着を支援 | 即戦力人材の受入れ、人手不足解消 |
在留資格 | 育成就労 | 特定技能1号・2号 |
在留期間 | 最長3年 | 1号:最長5年/2号:更新制(実質上限なし) |
対象者 | 日本語・技能を学ぶ段階の外国人 | 一定水準の技能・日本語力を有する人材 |
企業の役割 | 教育・支援を通じた育成 | 雇用・労務管理中心 |
キャリア位置づけ | 育成段階 | 活躍・定着段階 |
このように、育成就労制度と特定技能制度は「育成」と「即戦力」という異なる目的を持ちながらも、実際には 育成から活躍へとつながる一連のキャリアパス として設計されています。
企業にとっては、育成就労で育てた人材を特定技能として長期的に活かせるため、採用と定着の両立を実現できる点が大きなメリットです。両制度は目的こそ異なりますが、「育成→活躍→定着」へと続くキャリアパスを形成している点が特徴です。
育成就労と特定技能をつなぐキャリア設計
育成就労制度と特定技能制度は、単に別々の仕組みではなく、一人の外国人材のキャリアを段階的に支える制度として連携しています。
育成就労で得た日本語力や基礎技能をもとに、特定技能制度でより専門的な実務へとステップアップする流れが想定されています。
このキャリアの連続性によって、外国人材は「一時的な労働者」ではなく、企業や地域社会で長期的に活躍できる存在へと成長します。
企業にとっても、採用から定着までの見通しを持って人材戦略を立てやすくなり、教育コストの回収や人材の安定確保が実現しやすくなります。
育成と活躍を分断せず、キャリアの一貫性を前提に設計することが今後の外国人雇用の成功の鍵となります。
育成就労から特定技能への移行の流れと活用法
育成就労を終えた外国人材は、一定の技能評価試験や日本語能力(例:N4程度)を満たすことで、特定技能1号へ移行できます。
これにより、教育から就労へとスムーズなキャリアパスが形成され、企業にとっても育成した人材を長期的に雇用できるようになります。
企業が活用する際は、次の点が重要です。
- 育成段階で教育・支援体制を整える
- 特定技能移行を見据えたキャリア設計を立てる
- 支援計画書や届出手続きなど、制度対応を早めに準備
育成就労と特定技能を「分けて考える」のではなく、一貫した人材育成の仕組みとして設計することで、外国人材の定着と企業の安定的な採用が実現します。
👉 今後の記事では、「支援計画書の作成方法」や「届出手続きの流れ」を詳しく解説します。
まとめ
育成就労制度と特定技能制度は、目的や仕組みこそ異なりますが、外国人材が日本で長期的に働き、キャリアを築くための連続した制度として設計されています。
育成就労制度では、外国人材が日本語や専門知識を学びながら働き、企業の一員として育っていくことが重視されます。
その後、特定技能制度を通じて、培ったスキルを実際の現場で活かし、より高い専門性を発揮していくことが期待されています。
企業にとって両制度は、単なる労働力確保のための仕組みではなく、外国人材と共に成長していくための長期的な人材戦略の一部といえます。
制度の趣旨を理解し、教育体制や支援の仕組みを整えることで、外国人材が安心して働ける職場づくりにつながり、結果的に企業全体の定着率向上や生産性の向上にも寄与します。
育成就労制度と特定技能制度を「分けて考える」のではなく、「育てて活かす」という一連の流れとして捉えることが、今後の外国人雇用を成功へ導く鍵となるでしょう。
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