2019年に開始された「特定技能」制度により、日本企業は一定の専門性と日本語能力を持つ外国人材を受け入れることが可能になりました。なかでもネパールは、日本と「特定技能に関する協力覚書(MOC)」を締結している17ヶ国のうちの一つで、特定技能人材の重要な送り出し国となっています。
外務省の発表によると、ネパール人は技能実習制度でも一定数の実績があり、特定技能への移行者も増加傾向にあります。
本記事では、ネパール人材の特定技能採用に関する最新情報や、採用の流れ、注意点、成功のポイントを徹底解説します。ネパール人材の活用を検討している企業の方にとって、有益な内容となるよう網羅的にご紹介しています。
目次
ネパール人材の特定技能受け入れ状況とは?
ネパールは、2019年3月に日本政府と「特定技能制度に関する協力覚書(MOC)」を締結した国の一つです。これにより、ネパール人材は正規なルートを通じて日本の特定技能制度に基づく在留資格を取得し、労働することが可能になりました。
MOCの締結は、悪質な仲介業者の排除や適正な人材管理を目的としたもので、技能実習制度とは異なり、より即戦力としての就労が前提となっています。

出典:出入国在留管理庁(資料一部加工)
法務省の統計によると、2024年時点で日本に在留する特定技能外国人のうち、ネパール人は上位6位に入っており、特に「介護業」「外食業」「農業」などの分野で多く受け入れられています。また、ネパールでは技能実習から特定技能への移行が多く、技能実習で3年間の経験を積んだ後、同一分野での試験合格を経て、特定技能1号へ移行するケースが一般的です。
この「技能実習から特定技能へ」の流れは、日本での生活や文化にすでに適応している人材を活用できるという点で、企業側にとってもメリットが大きいといえるでしょう。
今後も日本国内の人手不足が続く中で、ネパール人材の特定技能による受け入れは、重要な人材確保の手段としてさらに注目されていくと考えられます。
ネパール人材の特徴と日本企業に向いている理由
ネパール人材は、日本企業にとって非常に親和性が高いといわれています。その理由の一つが、「勤勉で真面目、素直で人当たりが良い」といった国民性です。ネパールは多民族国家でありながら、仏教やヒンドゥー教などの価値観を通じて「集団を大切にする文化」が根付いており、日本の職場に馴染みやすいとされています。
さらに、日本語に対する関心も高く、ネパール国内には日本語教育を専門とする学校が多数存在します。日本語能力試験(JLPT)を受験する学生も年々増加しており、2023年度には1万人以上が受験しています(国際交流基金調査)。特定技能制度では、JLPT N4または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の合格が求められますが、ネパール人の合格者数は増加傾向にあります。
また、ネパール人はすでに技能実習制度を通じて多数の受け入れ実績があるため、日本での生活に慣れている人が多く、再来日への心理的ハードルも低いといわれています。こうした背景から、ネパール人材は介護・外食・建設・農業などの幅広い分野で、日本企業にとって安心して雇用できる存在といえるでしょう。
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特定技能ネパール人を採用する際の手続きと流れ
ネパール人を特定技能制度で採用する場合、大きく分けて「現地採用」と「国内からの移行」の2パターンがあります。いずれも、在留資格「特定技能1号」を取得するために、一定の日本語能力と技能試験への合格が必須です。
まず、現地から直接採用する場合は、特定技能評価試験と日本語試験に合格した人材に対して、企業が内定を出し、在留資格認定証明書(COE)を出入国在留管理庁に申請します。この際、MOCに基づき、ネパール政府が認定する送出機関を通す必要があります。認定外のブローカーを利用した場合、不正手続きとみなされ、在留資格の取得が難しくなる可能性があります。
一方、すでに日本で技能実習を終えたネパール人が特定技能に移行するケースでは、在留資格変更許可申請を行うことになります。この場合はCOEが不要な分、手続きが簡略化され、短期間での就労開始が可能です。
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どちらのパターンでも、受け入れ企業は「支援計画」の作成が義務付けられており、外国人が日本で安定して生活・労働できるよう、生活支援や日本語教育、定期的な面談などを実施しなければなりません。これらの支援業務は、登録支援機関に委託することもできます。
加えて、労働条件通知書や雇用契約書はネパール語と日本語の2言語で作成し、ネパール政府への報告も必要となるため、制度理解と正確な事務処理が不可欠です。
採用時の注意点とよくあるトラブル事例
ネパール人材の特定技能採用においては、多くのメリットがある一方で、いくつかの注意点やトラブル事例も報告されています。特に多いのが「仲介ブローカーによる不当な費用請求」や「必要書類の不備」「文化的な誤解」に起因する問題です。
たとえば、現地の未認可ブローカーを通して日本企業にアプローチする求職者が存在し、高額な手数料を請求された結果、来日後に経済的に困窮するという事例があります。MOCに基づき、ネパール政府は認定送出機関の利用を義務付けており、企業側もこうした制度に則った人材紹介を選ぶ必要があります。
また、採用手続きにおける書類不備や情報の誤記載も注意が必要です。例えば、技能実習経験の有無や過去の在留歴が不正確なまま申請された場合、在留資格の取得が認められない可能性があります。正しい情報を確認し、必要な書類を整備することが不可欠です。
文化・宗教面での理解不足からくる摩擦にも注意が必要です。ネパール人の約8割がヒンドゥー教徒であり、次いで仏教徒(約9%)、イスラム教徒(約4%)などが存在します。こうした宗教背景により、「牛肉を食べない」「断食期間がある」「特定の祝祭日を重視する」などの価値観を持つ人も多くいます。たとえば、ヒンドゥー教徒にとって牛は神聖な動物とされるため、牛肉の調理や取り扱いに従事させる場合は配慮が必要です。
また、ヒンドゥー教では「勤労は徳」とされており、仕事に対する真摯な姿勢を持っている人が多いのも特徴です。仏教徒においても、穏やかで忍耐強い性格が多く、和を重んじる職場文化と相性が良いとされています。これら宗教的・文化的背景を理解し、適切なコミュニケーションを取ることが、職場での良好な関係構築につながります。
ネパール人材採用を成功させるための3つのポイント
ネパール人材の特定技能採用を成功させるためには、以下の3つのポイントを押さえることが重要です。
①事前研修・日本語教育の徹底
来日前に日本語や業務内容に関する研修を実施することで、現場での混乱を減らすことができます。特に、現地の送出機関と連携し、日本の職場文化やマナーについても教育しておくことが重要です。また、来日後も継続的に日本語学習の機会を提供することで、コミュニケーション能力を高め、長期就業につながります。
②生活支援とメンタルケアの仕組みづくり
住居の手配、行政手続きのサポート、交通案内など、日常生活全般にわたる支援が必要です。登録支援機関を活用することで、これらのサポートを外部委託することも可能です。また、異国での生活は精神的なストレスを伴うため、定期的な相談機会を設けるなど、メンタルヘルスにも配慮が必要です。
③継続的な評価とコミュニケーションの重要性
業務の理解度や満足度を定期的に確認し、必要に応じてフォローアップを行うことが大切です。一方的な指示ではなく、意見を尊重しながら働く環境を整えることで、信頼関係を築き、定着率の向上につながります。
これら3つのポイントを実践することで、ネパール人材との円滑な関係を構築し、企業にとっても人手不足解消の有力な手段となるでしょう。
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まとめ
ネパール人材は、真面目で協調性が高く、日本語への意欲も強いなど、日本企業に非常に適した特徴を持っています。特定技能制度においても、ネパール政府との二国間取決めが整備されており、安心して採用が可能です。
宗教的な配慮を含め、文化的な違いを理解しながら受け入れることで、長期的な雇用関係を築くことができます。将来の人材確保において、ネパール人材は有力な選択肢といえるでしょう。

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