「特定技能制度」ってどういう制度?

2019年に始まった「特定技能制度」。一言でいうと「現場作業」をする新たな外国人労働者の受入れ制度です。どのような背景で成立し、どのような業種で、どのような仕事ができる制度なのか、ご存知でしょうか?

この記事では、「特定技能制度」について、わかりやすく解説いたします。

「特定技能」ができた背景とは?

そもそも日本では、1980年前後より外国人労働者の受入れを進めていました。特に、1980年代後半のバブル景気においては、労働者不足解消のため、外国人受入れに関する議論が盛んに行われ、1990年からは日系人の受入、1993年からは外国人研修生(現:技能実習制度)の受入が始まりました。

「特定技能制度」は、2010年代になりさらに加速し止まらない労働者不足の問題を解消するため、「一定の知識と日本語能力を持つ外国人」「指定した産業分野に限って」受け入れることを認めた制度です。

今までの制度と一番違うところ

実は外国人の方を「単純労働者」として真正面から受け入れる制度は、これまで日本には存在しませんでした。日系人の方は工員として働いている方が多くみえますが、日系人という理由で日本での在留を認めていますから、労働者として受け入れてるわけではありません。

また、技能実習生も、現在製造業を中心に40万人以上の方が就業していますが、あくまで「実習」であり、期限が満了したら国に帰ることを前提とした制度であり、こちらも労働力としての受入ではありません。

そのため通常外国人が日本で働くことを目的として入国しようとする場合、「大卒程度」の学歴を有し「専門的知識を活用する業務」または「国際的感覚・言語を使用する業務」に従事する「技術・人文知識・国際業務」という在留資格しか選択肢がありませんでした。

つまり日本は、日本人と縁のある外国人か、ホワイトカラーで働く高度な外国人のみに、門戸を開いていたわけです。

しかし、「特定技能制度」は、「一定知識」と「日本語能力」があれば、指定された12分野において就業を認める制度です。また、要件を満たせば最終的に「永住許可」を取得し、日本で在留し続けることもできる制度設計となっています。

この点で、日本は初めて外国人労働者の受入れ=移民政策踏み切った、と称されています。

ただ実際には、目的はどうあれ日本国内には多数の外国人労働者の方が既に働いていますから、実態に合わせて法を再整備したということもできます。

特定技能を雇用できる12の分野とは?

特定技能は、「指定された分野に限って」受入れをすることができます。

  • 建設業
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備業
  • 航空業
  • 宿泊業
  • 介護
  • ビルクリーニング
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造業
  • 外食業
  • 素形材・産業機械・電気電子情報関連産業

書類準備から申請までのステップバイステップガイド

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業種特定の技能試験の合格証明:まずは、働きたい業種で必要とされる技能試験に合格する必要があります。この試験は、その業種の基本的な知識や技能を問うもので、試験内容と合格基準は業種によって異なります。

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日本語能力の証明:特定技能ビザでは、通常、日本語能力試験(JLPT)N4レベル以上の日本語能力が求められます。この日本語のスキルがあることを証明するために、合格証明書を提出する必要があります。

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雇用契約書:日本の企業との雇用契約が必要となります。契約書は、雇用条件、業務内容、報酬などが明記されている必要があります。

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申請書類の準備:以上の書類をもって、在留資格認定証明書交付申請を行います。これには、パスポートのコピー、証明写真、履歴書など、追加の書類が必要になる場合があります。

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在留資格認定証明書の取得:申請が受理されると、在留資格認定証明書が交付されます。これがあれば、日本のビザを受け取るための大きな一歩となります。

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ビザ申請:最寄りの日本大使館や領事館でビザを申請します。この段階で、在留資格認定証明書とその他の書類を提出し、ビザの発行を待ちます。

この手順を踏むことで、特定技能ビザの取得が可能となります。それぞれのステップでは、正確な書類の準備と、適切な手続きの遂行が求められます。不明点があれば、各ステップごとに専門家の助言を求めることも重要です。

特定技能ビザで働ける業種とその要件

特定技能ビザは特定の産業に限定されており、それぞれの業種で必要とされるスキルや資格が異なります。日本で急速に人手不足が進む中、このビザ制度は外国人労働者にとって大きなチャンスとなり得ます。

主要な対象業種とそれに必要な資格や技能

特定技能ビザの対象となる主要業種には、建設業、農業、介護などがあります。これらの業種で求められる資格やスキルには、以下のようなものが含まれます。

  • 建設業:この業種では、特定の技術や機械操作の能力が求められます。例えば、鉄筋作業や土木工事など、専門的な技術が必要とされる場合が多いです。
  • 農業:作物の栽培技術や農機操作の知識が重要です。特に、日本特有の農法を理解し、実践する能力が求められます。
  • 介護業:高齢者の日常生活支援や健康管理のスキルが必要です。介護には人間性も求められるため、コミュニケーション能力も非常に重要となります。

これらの業種では、技能試験の合格が必要であり、日本語能力も一定レベル以上が要求されます。

特定技能ビザ取得のための具体的なアプローチ

特定技能ビザを成功裏に取得するためには、適切な準備と正確な申請プロセスの理解が必須です。ここでは、ビザ取得のための詳細なアプローチと、試験対策について解説します。

技能試験と日本語能力試験の詳細

技能試験と日本語能力試験は、特定技能ビザの申請において最も重要な要素の一つです。これらの試験は、申請者が日本での職業生活に必要な技能と言語能力を持っているかを評価するために設計されています。

  • 技能試験:業種ごとに設定された具体的な技能試験があります。これらの試験は、その業種で求められる実務知識と技術を測るもので、業種によって内容が異なります。試験の準備のためには、過去の試験問題を解析し、必要なスキルを習得することが推奨されます。
  • 日本語能力試験:通常、日本語能力試験N4レベルの合格が必要です。このレベルは、日常的な会話が理解でき、基本的なビジネスシーンでのコミュニケーションが可能な程度の日本語能力を示します。日本語学校やオンラインの日本語コースで事前に準備をすることが効果的です。

試験内容と効果的な対策方法

技能試験と日本語能力試験の成功には、実践的な準備が欠かせません。試験の種類に応じて異なる対策が必要ですが、以下の方法が一般的に有効です。

  • 技能試験対策:業種固有の技能を磨くための実務経験や模擬試験を利用します。また、試験のポイントを理解するために、過去問の解析や専門の研修を受けることも有効です。
  • 日本語能力試験対策:日常的な会話の練習を多く行い、基本的な文法や単語の学習に加え、リスニングや読解の訓練を積むことが重要です。また、模擬試験を利用して、試験形式に慣れることも推奨されます。

これらの対策を計画的に実行することで、ビザの取得率を大幅に向上させることができます。

申請の成功率を高めるポイント

特定技能ビザの申請プロセスは複雑であり、成功には細心の注意が必要です。以下に、申請の成功率を高めるための重要なポイントを紹介します。

応募前に準備すべきこととよくある失敗の回避策

  1. 詳細な職務記述書の準備:雇用契約を結ぶ前に、職務内容や条件が明確に記載された職務記述書を用意してください。不明瞭な職務記述はビザ申請時の不利益につながることがあります。
  2. 正確な書類の準備:申請に必要な書類は、すべて最新で正確な情報を含むものでなければなりません。古い情報や誤った情報を提供すると、申請が拒否される原因になることがあります。
  3. 申請プロセスの理解:ビザ申請の各ステップを事前に理解し、必要なすべての手続きを計画的に進めることが重要です。不明点は事前にクリアにし、必要に応じて専門家の助言を求めてください。
  4. 早期の申請:申請は可能な限り早期に行うことが推奨されます。手続きに予想外の遅延が生じることもあるため、余裕を持ったスケジュールで進めることが望ましいです。
  5. 継続的な情報収集:ビザ政策や法律は変更されることがありますので、常に最新の情報を収集し続けることが必要です。これにより、変更された要件に迅速に対応することができます。

これらのポイントをしっかりと実行することで、特定技能ビザの申請成功率を大幅に向上させることが可能です。

特定技能ビザ取得後の生活とキャリア構築

特定技能ビザを取得した後の生活とキャリアの展望は、多くの外国人労働者にとって重要な関心事です。このセクションでは、日本での生活基盤の確立と長期的なキャリア計画について詳しく説明します。

日本での生活基盤の確立方法

日本での生活をスタートする際には、住居の確保、医療や社会保障へのアクセス、日常生活のノウハウ獲得が欠かせません。以下に、これらの重要なポイントを詳しく解説します。

  • 住居の確保:日本では賃貸物件が一般的ですが、契約前には物件の条件、家賃、管理費などを確認し、適切な住居を選ぶ必要があります。また、外国人が賃貸契約を結ぶ際には保証人が必要になることが多いため、事前に準備しておくことが重要です。
  • 医療システムへのアクセス:日本には国民健康保険制度があり、外国人労働者も加入することが可能です。健康保険に加入することで、医療費の自己負担を大幅に軽減できます。
  • 日常生活のノウハウ:日本での生活には、言語だけでなく、文化や慣習の理解も必要です。日本の日常生活について学ぶことで、生活の質を向上させることができます。

住居、医療、社会保障の利用ガイド

これらの生活基盤を確立するには、具体的なアクションプランが必要です。例えば、住居を探す際は不動産仲介業者を利用することが一般的です。また、医療制度については、入国後にすぐに地方自治体で健康保険に加入する手続きを行うことが勧められます。社会保障の利用についても、具体的な手続きを理解し、必要な書類を準備しておくことが重要です。

このような準備と知識があれば、日本での新生活をスムーズにスタートできるでしょう。

長期的なキャリア計画とビザの更新

特定技能ビザを持つ外国人労働者にとって、日本での長期的なキャリア展望は非常に重要です。このセクションでは、ビザの更新とキャリアアップのための戦略について説明します。

次のステップ:特定技能2号への移行とその条件

特定技能1号ビザから特定技能2号ビザへの移行は、より高度な技能と日本語能力を要求されますが、これに成功すれば、家族の同伴や無期限の在留が可能になるなど、多くのメリットがあります。

  • 技能と日本語の向上:特定技能2号に移行するには、所定の技能試験に合格し、更に高いレベルの日本語能力(通常はN2レベル以上)を証明する必要があります。これには、日常の業務の中で積極的にスキルアップを図るだけでなく、専門的な研修や日本語教育の受講が効果的です。
  • 長期的な雇用保証:2号ビザへの移行を考える場合、現在の雇用主との良好な関係を保ちながら、長期的な雇用契約を目指すことが重要です。これには、職場での評価を高め、不可欠な存在となることが求められます。

これらのステップを経て、特定技能2号ビザの取得を目指すことで、日本での更なるキャリアと生活の安定を図ることができます。特定技能ビザの更新や移行は、計画的に準備を進めることが大切です。

まとめ

この記事では、特定技能ビザの概要から申請手順、具体的な業種の条件、そして成功のための詳細なアプローチに至るまで、幅広く解説しました。また、ビザ取得後の生活基盤の確立方法と長期的なキャリア計画についても触れさせていただきました。

特定技能ビザは、外国人労働者が日本のさまざまな産業で活躍するための大きなチャンスです。適切な準備と理解をもって、ビザ申請に臨めば、日本での新たな生活とキャリアを実現することが可能です。

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小暮雄平
2011年名古屋入国管理局(現:名古屋出入国在留管理局)に入職。退去強制から在留審査までの入管業務を一通り経験。その後、協同組合へ転職し、外国人技能実習生の監査・訪問指導業務を経て、2020年からMan toMan株式会社。