近年、特定技能を持つ外国人労働者の受け入れが進んでおり、企業の人手不足解消に寄与しています。
しかし、特定技能外国人を雇用するにあたっては、雇用契約書の取り決めが非常に重要です。
適切な契約書を作成することで、企業と従業員双方の権利・義務を明確にし、トラブルを未然に防ぐことができます。
この記事では、特定技能外国人の雇用契約書に関する基本的な知識と、採用担当者が知っておくべきポイントを解説します。
【目次】
1、特定技能外国人の雇用契約書の重要性
2、特定技能雇用契約書と雇用条件書について
3、特定技能雇用契約書・雇用条件書の参考様式
4、特定技能雇用契約を締結する際の注意点
5、その他の注意点
6、よくある質問(FAQ)
7、まとめ
目次 [非表示]
特定技能外国人の雇用契約書の重要性
特定技能外国人を雇用する場合、雇用契約書は非常に重要な役割を果たします。
雇用する契約という点においては日本人を雇用するときと同じです。
ただし、特定技能の在留資格を有する外国人労働者は、日本人労働者と異なる法的規制が適用されるため、法令に基づき作成する必要があります。
また、特定技能雇用契約書は在留資格申請時に出入国在留管理庁へ写しを提出する必要があり
内容に不備がある場合は、在留許可が下りないケースもあるので注意しましょう。
雇用契約書が不適切な場合、労働者とのトラブルや法的問題を引き起こす可能性があります。
法的なトラブルを防ぐためにも、明確で適切な契約の記載が欠かせません。
特定技能雇用契約書と雇用条件書について
入管(出入国在留管理庁)の参考様式を見ると
・特定技能雇用契約書
・雇用条件書(別紙を含む)
二つのセットで提出する必要があります。
・特定技能雇用契約書
→受け入れ予定の特定技能外国人と受け入れ企業名をいれるだけで
その他の所はほぼ入管の参考様式をいじる必要はありません。
記載項目を記入したら、署名と押印をしましょう
・雇用条件書(別紙を含む)
→各社ごとに記載内容が細かく変わっていきます。
就業場所や労働時間、報酬金額など細かく明示する必要があります。
【記載ポイント】
★従事させる業務内容
特定技能で認められている各16産業分野に該当する業務に従事させることはもちろん、相当程度の知識もしくは経験を必要とする技能を要する業務であることが求められます。
そのため、該当する産業分野と関係ない業務に従事させることや一つの単純作業にのみに長期間、従事させることできません。
各分野における業務内容やそれ関する注意事項などについては、出入国在留管理庁のサイトに記載されているので、確認しましょう。
★所定労働時間
→雇用契約や就業規則で定められた労働時間であり休憩時間は含みません。
特定技能外国人の所定労働時間は受け入れ企業で働く、通常の日本人労働者の所定時間と同等であることが求められます。
ここでいう通常の労働者とは、フルタイムで雇用される労働者をさします。(アルバイトやパートは含められません)
フルタイムとは「労働日数が週5日以上、年間217日以上・労働時間が30時間以上」
また、複数の企業が同一の特定技能外国人を雇用はできません。
特定技能外国人はアルバイトや副業は認められていないと留意しておきましょう。
★報酬
特定技能外国人の報酬額は、同等の業務に従事する日本人労働者の報酬額と同等以上であることが求められます。
つまり、外国人である理由で不当に低くなってならない。また、賞与や手当も同様に支給する必要があります。
報酬以外でも、教育訓練の実施や福利厚生施設の利用待遇についても同様です。差別的な取り扱いは絶対にしてはいけません。
★有給休暇
当然、有休も付与されるので、本人から申し出があった場合は日本人同様に対応します。
特に、一時帰国の申し出があった場合は事業の適切な運営を妨げるなど、業務上やむを得ない場合を除いて有給休暇を取得出来るように配慮する必要があります。
もし、当該該当の外国人労働者が有給休暇をすべて取得済みであっても、一時帰国の希望があれば追加的な有給休暇や無給休暇を付与するなど配慮が求められます。
【派遣で受け入れる場合】
特定技能労働者を派遣労働者として雇用する場合は、別途項目を設けた上で記載する必要があります。
具体的な記載内容は、特定技能外国人の派遣先や派遣期間などを特定技能雇用契約に含めること。
ただし、現在においては、特定技能外国人を派遣形態で雇用出来る分野は農業分野および漁業分野のみです。
それ以外の分野は派遣形態での雇用は認められていませんので注意しましょう。
特定技能雇用契約書・雇用条件書の参考様式
雇用契約書と雇用条件相は出入国在留管理庁HPに参考様式として公表されておりいつでもダウンロード可能です。
特に、英語及びベトナム語などの10か国語に翻訳されておりますので、受け入れる予定の特定技能外国人の母国語のものをダウンロードし活用するようにしましょう。
必要事項を記載したら2部づつ印刷しそれぞれの
「特定技能雇用契約書」と「雇用条件書」
に押印・署名し1部は特定技能外国人に、もう1部は企業にて保管しましょう。
出入国管理庁へは写しを提出し、記載の雇用条件に問題はないかを審査されます。
修正事項が見受けられた場合は、入管から修正依頼が郵送されてくるので期日までに対応しましょう。
特定技能雇用契約を締結する際の注意点
1、母国語でしっかり説明し、しっかりと理解してもらう
いくら日本語が上手だったとしても、母国語でしっかりと条件書の内容を伝えましょう。
特定技能外国人は、基本的に一定の日本語能力を有していますが、難しい言い回しをつかってしまうと理解できない恐れがあります。
たとえ、日本語で懇切丁寧に説明したとしても、相手が理解できていなかった場合に入社後に「こんな雇用条件は説明受けていない」と不信感につながりすぐ転職や退職してしまう可能性があります。
そのため、雇用条件書に母国語を併記するのはもちろん、口頭でもしっかりと母国語で説明しておいた方が、後々のトラブルを防げると言えるでしょう。
2、トラブルになりがちな項目を重点的に説明しておく
トラブルになりやすい項目
・有給休暇、一時帰国
・就業場所
・昇給、賞与の有無
特に外国人雇用が初めての企業は重点的に説明しておくとよいでしょう。
・有給休暇・一時帰国
一般的な日本人感覚だと、有休に関してはそこまで細かく気にされる方は少ないかもしれません。
しかし、外国人労働者にとっては有給がいかにスムーズに取得できるかは重要度が高くなってきます。
なかでも、中華圏の出身者は年末年始が1月~2月とずれ込むため(旧正月)この時期に1~2週間の一時帰国を希望される方がよくいます。
こういった、文化的な習慣の違いがあるため事前に
・長期で帰国する予定や考えがあるか?
・その場合に自社だと最長何日程度であれば帰国の許可が出せるのか?
などを事前に認識を、すり合わせておいた方がよいでしょう。
すり合わせがないと、旧正月期間に1か月の長期休暇を取得したいなどという申し出を受け、そこの調整に外国人・企業 双方でストレスを抱えるケースが意外とあります。
また、有給の取得申し出のタイミングについても、しっかりと伝えておきましょう。
よくあるケースが、有給取得予定日の3日~1日前という直前での申し出があったりします。
稀に、有休を申請したら必ず取得できると勘違いをなされている方もいるので時期変更権が会社側にも、認められている点を踏まえて最低何日前までに有休を申し出をしてほしいなど
大枠の方針ほ伝えておいた方がいいでしょう。
・就業場所
飲食店事業者様や複数の事業所を構えている介護グループでは、従業員の転勤が発生するケースも多いのではないのでしょうか?
日本人であれば会社の辞令として転勤を命じられた場合は素直に応じるのが多いかもしれませんが
多くの特定技能外国人の場合は転機に対するイメージはネガティブである場合を大半が占めています。
引っ越しに伴う新しい住居の確保に、外国人だと時間がかかる点と退去転入の費用が発生する点から敬遠されるケースが多いのが実態です。
そのため、会社からの転勤が発生する可能性がゼロではない場合、必ず事前に説明しておきましょう。
また、可能であれば転勤先の住居確保を手伝う、転勤時の費用は一部企業が負担するなどの対応をご検討しておきましょう。
・昇給賞与の有無
最後に一番問題になりやすいのが、やはり昇給賞与についての部分です。
会社経営上、従業員の昇給や賞与は従業員個々人のパフォーマンス評価が重要であり評価制度は各会社で異なる点はもちろん前提として業績次第によっては
そもそも賞与原資を確保できないというのはあり得ることですが、特定技能外国人のなかには
「日本企業は半年~1年ごとに定期昇給する」 「頑張ったら賞与がもらえる」と考えている場合もあります。
さらに、友人同士で給与額や賞与の有無を具体的にどうのくらいもらえたのかを共有する方が多く、友人は入社6か月目で●●円昇給したのにどうして自分は昇給しないのですか?
と、疑問をいだく場合もあります。
そのため、独自の評価制度を運用されている場合は。昇給基準を明確に伝えるとともに業績に応じて賞与の有無に関しては、変動があると理解してもらうことが大切です。
3、分野別の基準に適合する事
特定技能制度では、分野別に独自の基準が設けられているケースがあります。
特に建設業では
・報酬形態は月給のみ(時給、日給はNG)
・元技能実習生を特定技能として雇用する場合技能実習時以上の報酬額にする
・派遣形態での受け入れNG
など、分野別の基準を事前に確認したうえで雇用条件書を作成するようにしましょう。
4、事前ガイダンスの実施
面接や契約書締結時に面談等を通じて雇用条件の案内をすると思いますが 再度、特定技能1号の在留資格申請を実施する前に事前ガイダンスを実施し改めて雇用条件書の内容を伝える必要があります。
事前ガイダンスは義務的支援の一つになっており、実施を怠っていると発覚した場合、受け入れ停止処分になる可能性があるので、しっかりと実施するようにしましょう。
その他の注意点
1、定期報告での届け出
特定技能外国人は、入社後も半年ごとに定期面談を実施することが義務づけられています。面談結果については報告書に取りまとめて入管に提出することになります。
この報告書を提出する際に、添付書類として対象期中における特定技能外国人の賃金台帳と比較対象となる日本人社員の賃金台帳を合わせて提出します。
上記書類を閲覧することで特定技能外国人に
・雇用条件書通りに報酬が支払われているか
・差別的な取り扱いがなされていないか
をしっかりと確認されるという点はご留意ください。
2、変更事項が発生した際の対応(随時提出)
また、一度入管に提出した雇用条件の内容に変更事項が発生したり新たに特定技能外国人と雇用契約を締結・契約が終了する場合は
都度、「随時届出」という届け出を実施しなければなりません。
具体例としては、昇給や転勤先、住宅手当などを新たに新設する場合などが該当してきます。
こういった場合、変更事項発生日より14日以内に管轄の出入国在留管理局へ「随時届出」を実施する必要があります。
届出書の内容や様式については、入管HPを参照ください。
3、特定技能雇用契約の保管義務
特定技能外国人の受け入れ企業は、仮に特定技能外国人が退職等の契約が終了したとしても契約終了日から一年以上は、契約書を保管しておく必要があります。
厳密には、「活動の内容にかかる文書」(特定技能雇用契約書や特定技能外国人の名簿など)と
「1号特定技能外国人支援の状況に係る文書」(支援実施体制に関する管理簿や支援の委託契約に関する管理簿など)
などの、複数の文書を保管しておく義務があります。
仮に、登録支援機関に支援を委託していても、受け入れ企業としてさきの書類を作成し保管しておく必要があるので
特定技能外国人が退職したからといって、すぐに特定技能雇用契約書等を処分するのは控えましょう。
よくある質問(FAQ)
まとめ
特定技能外国人を雇用する際の雇用契約書は、法的なトラブルを避けるために非常に重要です。
また、契約書には労働基準法や在留資格に基づいた取り決めをしっかりと盛り込み、労働者との信頼関係を築くことが求められます。
そうすることで、特定技能制度の活用により、労働力の確保や生産性の向上など企業にとって大きなメリットを生むでしょう。
採用担当者は、法令を遵守した雇用契約書を作成し、円滑な労務管理を行うよう心掛けましょう。
当社の人材紹介サービスを活用することで、採用から業務の安定運営・外国人スタッフの定着までトータルでサポートいたします。外国人雇用で不明なことや判断に迷うようなケースがあれば、ぜひご相談ください。
日本語と外国人労働者の母国語の両方で作成することが推奨されています。理解を深めるため、両言語で記載することが望ましいです。