近年では、少子高齢化が進み労働力人口の減少が続く中で、外国人材の雇用は企業にとって重要な選択肢となっています。
特に、造船業や船用工業分野では特定技能を持つ外国人労働者の需要が増えており、労働力の確保に向けた取り組みが急務となっています。
特定技能制度を利用して外国人材を採用することが、今後ますます一般的になるでしょう。
本記事では、特定技能制度における建設業の分野の仕事内容、求められるスキルや資格、外国人材を採用する際の流れや注意点について詳しく解説します。
特定技能制度とは?
特定技能制度は、2019年に日本政府が導入した新しい外国人労働者の受け入れ制度です。
この制度は、特定の分野において高度な技能を有する外国人を日本に呼び寄せ、労働力不足を補うことを目的としています。
特定技能は、以下の2つのカテゴリに分かれています。
より高度な技能を持つ外国人を対象としたビザ。定住が可能で家族の帯同も認められますが、対象となる職種は限られています。
造船・舶用工業分野では、特定技能2号に移行するには、日本海事協会が実施する試験に合格すること、および監督者の実務経験が2年以上必要となります。
また特定技能2号に移行できる職種は「溶接」のみとなっています。
主な仕事内容は?
特定技能1号に関して、造船・船用工業分野の業務区分は、従来の6業務から2021年の改正により3業務に再編され新たな業務も追加されました。
以下のように3つの業務区分に統合されています。
〈造船・船用工業における3つの業務区分〉
1.造船
2.舶用機械
3.舶用電気電子機器
なお、上述の主たる業務とあわせて行う場合に限り、日本人が通常従事することとなる関連業務(資材の運搬、清掃等)に附随的に従事することは認められています。
【主な業務内容】
造船分野では、船舶の製造を担当します。具体的には、以下のような作業が含まれます。
・船体の組立作業
→船舶の骨組みや構造体の組み立てを行います。鋼板や鉄骨などの材料を切断し、溶接して船体を形作ります。
・溶接作業
→船体部分や構造部品の接合部分を溶接する作業です。特に、船舶の強度が求められるため、高い溶接技術が必要とされます。
・塗装作業
→船体の防錆や美観を保つために、塗装作業が行われます。塗装は通常、特別な防食塗料を使用し、海水にさらされる船舶に耐久性を持たせます。
・部品の取り付け
→船体を組み立てた後、エンジンや機器の取り付け、設置が行われます。これには、予め作られた部品を船舶に合わせて組み立てていく作業が含まれます。
【主な業務内容】
舶用機械分野では、船舶に搭載するエンジンや機器、配管などを組み立て、調整する作業を担当します。具体的には、以下の作業があります。
・エンジンの組み立て
→船舶の動力源となるエンジンを組み立て、試運転を行い、動作確認をします。エンジンは大型の機械で、精密な技術が要求されます。
・機械部品の取り付け
→船舶に必要な様々な機械部品(例えば、冷却装置や燃料装置)の設置や取り付けを行います。
・メンテナンスと修理
→舶用機器の故障修理やメンテナンス業務も重要な業務です。船舶の運航中に不具合が発生した場合の対応として、迅速な修理作業が求められます。
・機器の調整
→エンジンや冷却装置、油圧機器など、船舶に搭載される各種機器の調整を行い、最適なパフォーマンスを発揮できるようにします。
【主な業務内容】
舶用電気電子機器分野では、船舶に必要な電気設備や電子機器の設置、調整、保守を担当します。主な作業は以下の通りです。
・電気機器の取り付け
→船舶に搭載する電気機器(例:発電機、照明設備、制御機器など)を設置します。これには、電線の配線や、各機器が正しく作動するための調整作業が含まれます。
・電子機器の設置
→船舶の航行に必要な電子機器(例:レーダー、GPS、通信機器)の取り付けを行います。これらの機器は船舶の運航をサポートする重要な役割を果たします。
・配線作業
→電気機器や電子機器の配線を行い、適切な電圧や流れを確保します。配線作業は精密で、船舶全体の電気システムに影響を及ぼすため、高い注意力が求められます。
機器の保守・点検: 電気・電子機器が正常に動作し続けるよう、定期的な点検やメンテナンスが行われます。また、故障した機器を迅速に修理・交換する作業も含まれます。
関連業務にあたる具体的な業務例は、以下のとおりです。
- 読図作業
- 作業工程管理
- 検査(外観、寸法、材質、強度、非破壊、耐圧気密等)、
- 機器・装置・工具の保守管理
- 機器・装置・運搬機の運転
- 資材の材料管理・配置
- 部品・製品の養生
- 足場の組み立て・解体
- 廃材処理
- 梱包・出荷
- 資材・部品・製品の運搬
- 入出渠
- 清掃
造船・船用工業の求められるスキルと資格
造船・船用工業における特定技能1号の外国人労働者には、業務を遂行するために必要なスキルや資格が求められます。
これらは、専門的な作業を安全かつ効率的に行い建設現場の品質や安全性を確保するために重要です。造船・船用工業で求められる主なスキルと資格について詳しく説明します。
日本語能力
造船・船用工業においては、業務に関する指示や注意点を理解しコミュニケーションを取ることが重要です。
特に指示や報告を正確に理解し現場での円滑なコミュニケーションを行うため、日本語の基本的な理解と会話能力が求められます。
日本語能力試験(JLPT)N4以上が必要となる場合もあります。
専門的なスキル
溶接技術: 造船業においては、溶接技術が非常に重要です。特に、船体の組み立てや鋼材の接合には溶接が不可欠です。溶接の精度や品質管理のスキルが求められます。
配管技術: 船舶内部の配管システムは、燃料や冷却水など重要な機能を支えています。これらの配管を適切に設置するためには、配管設置の技術や寸法計測のスキルが必要です。
機械加工技術: 船舶のエンジンや各部品の組み立てには、機械加工や部品の精密な取り付け作業が要求されます。旋盤やフライス盤などの機械操作スキルも重要な要素です。
塗装技術: 船舶の耐久性を高めるために、防錆塗装や美観を重視した塗装作業が求められます。塗装技術は、作業環境に合わせて適切な塗料を選び確実に施工することが求められます。
電気配線技術: 船舶の電気系統や照明・通信機器の設置に関する知識も必要です。電気回路の理解や配線作業のスキルが求められます。
必要な資格
溶接技術者資格: 溶接作業に従事するためには、溶接技術者資格が必要です。特に、船舶に使用される鋼材の溶接では、特定の技術基準を満たすことが求められるため、資格を有することが望ましいです。
配管工事施工管理技士: 船舶内部の配管作業を行うためには、配管工事施工管理技士の資格が役立ちます。この資格は、配管工事に関する知識と技術を証明するものです。
船舶電気技術者資格: 電気系統の設置や保守を行うためには、船舶電気技術者としての資格が求められます。これにより、電気設備の設置・修理・点検が適切に行えるようになります。
塗装技能士: 船舶の塗装には、塗装技能士の資格があると有利です。塗装作業の品質を保ち、耐久性を確保するために必要な技術が求められます。
溶接技能者: 溶接技能者としての資格を取得していることも重要です。特に船舶に使われる構造物は強度が求められるため、高度な溶接技術が必要となります。
外国人材の受け入れにおける必要なこと
外国人材を造船・船用工業分野で採用する際には、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。
特定技能ビザの取得と手続き
外国人労働者を受け入れるためには、まずは適切なビザの取得が不可欠です。造船・船用工業分野では、特定技能1号ビザ(造船・船用工業分野に関する業務)を取得することになります。
企業は、外国人労働者がビザを取得するために必要な手続きをサポートしなければなりません。
【具体的な手続き】
雇用契約の確認
→企業は外国人労働者と正式な雇用契約を締結し、その契約内容に基づき、ビザ申請に必要な書類を整えます。
技能試験と日本語能力
→特定技能1号ビザを取得するには、業務に関連する技能試験の合格や、一定レベルの日本語能力が求められることがあります。これらの試験をクリアするためのサポートも必要です。
入国管理局への申請
→必要書類を整えた上で、企業は入国管理局に申請を行います。ビザ取得の手続きがスムーズに進むようにサポートする体制が必要です。
安全管理と労働環境の整備
造船・船用工業分野の業務は、危険を伴う作業も多いため、安全管理は最優先事項です。特に外国人労働者は、安全規定や作業手順を十分に理解するためのサポートが必要です。
【必要な安全管理体制】
安全教育
→外国人労働者には、危険を避けるための安全教育を徹底することが重要です。これは、日本語での理解を含む安全講習や、視覚的に分かりやすいマニュアル、イラスト付きの案内などを活用することが有効です。
現場の環境整備
→作業現場では、外国人労働者がスムーズに作業できるように、多言語対応の標識や案内板を設置することが求められます。また、作業環境の整理整頓や設備の整備も必要です。
労働環境の改善
→労働時間や休暇、賃金、福利厚生に関して、外国人労働者に対して適切な労働条件を提供し、働きやすい環境を整えることが重要です。
日本語能力のサポート
外国人労働者が造船・船用工業分野で効果的に働くためには、日本語能力が欠かせません。特に、現場での指示や安全に関する情報、書類の理解が重要となります。
【日本語教育の必要性】
現場での指示や連携
→日本語が不十分だと、現場での指示を理解できなかったり、同僚や上司とのコミュニケーションに支障をきたす可能性があります。外国人労働者には、業務に必要な日本語能力を高めるためのサポートが必要です。
安全教育の理解
→造船業務や機械作業には高い安全基準が求められます。作業員が安全マニュアルや注意書きを理解し、適切に行動するために、日本語能力の向上が必要です。
文化的な配慮と生活支援
外国人労働者が日本で安心して働けるように、文化的な配慮や生活支援を行うことも大切です。言語の壁や文化の違いが生じることもありますが、これらを解消するための体制が求められます。
【生活支援】
住居の提供
→企業は外国人労働者に住居を提供する場合や、住居探しのサポートをする場合があります。特に、外国人労働者が日本での生活に慣れるためには、住環境を整えることが重要です。
コミュニケーション支援
→日本語が不自由な労働者には、日常的なコミュニケーションや生活面でのサポートが必要です。例えば、生活に役立つ情報を提供したり、生活相談を受け付ける窓口を設置することが考えられます。
文化的なサポート
→日本の文化や習慣を理解するための支援があると、外国人労働者がよりスムーズに社会に溶け込むことができます。
外国人材採用の流れ
外国人材を造船・船用工業で採用する際の流れを、採用担当者としてしっかり把握しておくことが重要です。
採用計画の策定
まず最初に、自社の造船・船用工業に必要なスキルや人員数を把握し、どのような外国人材が必要かを明確にします。
具体的には、必要な技能や資格をもとにどの国からどの程度の技能を持った外国人材を採用するかを検討します。
求人広告の掲載
外国人材を対象に求人を行う際には、特定技能造船・船用工業の求人広告を適切な媒体に掲載します。
求人情報には、仕事内容や求められるスキル・日本語能力の要件・待遇などを明確に記載することが大切です。
面接と選考
応募者が集まったら、面接を行います。面接では、造船・船用工業に必要な基本的な技術やコミュニケーション能力・日本語能力を確認します。
場合によっては、実技試験や技能試験を実施することもあります。
就労ビザの取得
選考を通過した候補者には、就労ビザを取得する必要があります。
特定技能1号ビザを取得するためには、所定の手続きを踏み必要な書類を提出します。
ビザの取得には一定の時間がかかるため、早めに手続きを始めることが重要です。
入社後の研修とフォローアップ
外国人材が入社した後は、業務に必要な研修を実施し適切な指導を行います。
特に日本の職場文化や安全衛生については、入社前後にしっかりと教育を行うことが求められます。
まとめ
造船・船用工業分野における特定技能1号の外国人材の雇用は、労働力不足を解消し企業の生産性向上に貢献する重要な手段となります。
しかし、外国人労働者を受け入れるためには、適切なスキルや資格の確認・安全管理の徹底、そして円滑なコミュニケーションが不可欠です。
企業としては、多言語対応の安全教育や専門技術の指導を行い外国人労働者が安心して働ける環境を整えることが求められます。
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