特定技能で倉庫業はどう変わる?新設される受入れ基準と企業が押さえるべきポイント

これまで特定技能では対象外だった「倉庫業(物流倉庫分野)」について、新たに受入れが可能となる方向で制度整備が進んでいます。現在はパブリックコメントが実施されており、2026年6月の公布・施行が予定されています。

人手不足が深刻な物流業界にとっては大きな転機となる一方で、受入れには分野特有の厳しい条件も設けられています。

本記事では、今回の制度案の概要と背景、受入れ可能な企業の条件、注意点についてわかりやすく解説します。

特定技能「倉庫業」が新設される背景

今回の制度改正は、特定技能制度において物流倉庫分野が新たに追加されることを受けたものです。

背景には、以下のような課題があります。

  • EC市場の拡大による物流需要の増加
  • 倉庫内作業の慢性的な人手不足
  • 労働環境の改善・効率化の必要性

特に近年は、EC需要の拡大に伴い倉庫内業務が急増しており、ピッキング・仕分け・在庫管理などの現場では、慢性的な人材不足が続いています。また、繁閑差が大きい業務特性もあり、人員確保の難しさが課題となっていました。

これまで倉庫業は技能実習でも受入れができず、外国人材の活用が進んでいない分野でした。そのため、国内人材だけでは対応が難しくなっており、制度として新たに受入れ枠を設ける必要があったとされています。

今回の告示案は、こうした状況を踏まえ、分野特有の事情に応じた追加基準を設定するものです。

つまり、単に対象分野が増えただけではなく、物流業界に合わせた独自ルールが整備される点が大きな特徴です。

制度のポイント|派遣禁止と直接雇用が前提

今回の制度で特に重要なのが、派遣就労が認められていない点です。

告示案では、

特定技能外国人を「労働者派遣の対象とする契約は禁止」
と明確に規定されています。

これは、物流業界において多い「派遣・請負構造」とは大きく異なるルールです。

物流業界ではこれまで、派遣社員や請負業者を活用して柔軟に人員配置を行うケースが一般的でした。しかし今回の制度では、こうした運用が制限されるため、雇用形態の見直しが必要になる企業も多いと考えられます。

ポイント整理

  • 派遣契約は不可
  • 原則として直接雇用
  • 雇用責任の所在を明確化

ただし、完全に外注が不可というわけでなく、倉庫業者から委託を受けた請負業者については条件付きで認められています。

その場合でも、雇用継続を明確にする協定などが必要になります。

つまり、「誰が雇用責任を負うのか」が厳格に問われる制度であり、従来の運用のままでは対応できないケースも想定されます。

受入れできる企業の条件とは

特定技能外国人を受け入れるためには、企業側にも明確な要件が定められています。

主な対象となる事業者は以下の通りです。

  • 倉庫業者(倉庫業法第7条)
  • 倉庫業者から委託を受けた事業者
  • 一般貨物自動車運送事業者
  • 特定貨物自動車運送事業者

さらに、これに加えて以下の条件を満たす必要があります。

主な追加要件

  • 協議会の構成員であること
  • 行政の調査・指導に協力すること
  • 倉庫管理システムの導入・活用
  • 生産性向上への取り組み
  • 実務経験証明の発行

特に重要なのが、 協議会への加入が必須という点です。

これは他分野と同様ですが、物流分野でも新たに設置される予定であり、参加しなければ受入れはできません。

また、単なる労働力確保ではなく、

  • デジタル化(システム活用)
  • 労働安全
  • 生産性向上

といった要素も求められており、 “受け入れるための企業体制”が問われる制度となっています。

今後のスケジュールと企業の対応

現在はパブリックコメントの段階にあり、

  • 意見募集期間:2026年4月〜5月
  • 公布予定:2026年6月
  • 施行:公布日

とされています。

つまり、早ければ2026年中に受入れがスタートする可能性があります。

ここで重要なのは、制度開始後に準備するのでは遅いという点です。

企業としては、今の段階から以下の準備が求められます。

■準備しておくべきこと

  • 自社が対象事業者に該当するかの確認
  • 雇用形態(派遣ではないか)の見直し
  • 協議会参加の準備
  • 倉庫管理システムの整備
  • 受入れ体制(教育・安全管理)の構築

特に、既存の派遣モデルで運用している企業は、ビジネスモデル自体の見直しが必要になる可能性があります。

倉庫業界にとってのメリットと今後の展望

今回の制度は、倉庫業界にとって大きなチャンスでもあります。

期待されるメリット

  • 慢性的な人手不足の解消
  • 若年外国人材の確保
  • 業務の安定化

これまで外国人材の活用が難しかった分野であるため、導入初期は人材確保の競争が激しくなる可能性があります。

一方で、

  • 受入れ条件が厳しい
  • 管理体制が求められる
  • 教育コストが発生する

といった課題もあります。

そのため、早期に準備した企業ほど優位に立てる構造になると考えられます。

まとめ

特定技能「倉庫業」の新設は、物流業界にとって大きな転換点となります。

一方で、

  • 派遣禁止
  • 協議会加入必須
  • システム導入・生産性要件

など、受入れには明確なハードルも設けられています。

つまり、単なる人手不足対策ではなく、“体制が整っている企業だけが活用できる制度”です。

今後、制度が正式に施行されれば、早期に動いた企業から人材確保が進んでいくことが予想されます。

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渡邉 圭史
人材ビジネス会社の一員として外国人雇用の推進に取り組んでいます。特定技能や技能実習制度、外国人労働者の受け入れについて、実務や日々の学びを通じて経験を積んでいます。このブログでは、外国人雇用に関する知識や最新情報、実際の現場で感じたことを分かりやすくお届けします。ぜひ気軽に読んでいただければと思います!