日本では特定技能制度を活用した外国人労働者の受け入れが進んでおり、林業は、森林の育成・保護・伐採・加工などを通じて木材を生産し、環境保全や地域経済の発展に寄与する重要な産業です。
しかし、近年では後継者不足や高齢化が進み、労働力の確保が大きな課題となっています。
特定技能制度を利用して外国人材を採用することが、さまざまな分野での発展を支えるための重要な取り組みです。
本記事では、特定技能制度における林業分野の仕事内容、求められるスキルや資格、外国人材を採用する際の流れ等詳しく解説します。
特定技能制度とは?
特定技能制度は、2019年に日本政府が導入した新しい外国人労働者の受け入れ制度です。
この制度は、特定の分野において高度な技能を有する外国人を日本に呼び寄せ、労働力不足を補うことを目的としています。
特定技能は、以下の2つのカテゴリに分かれています。
熟練した技能を必要とする業務に従事する外国人向けの在留資格で、3年、1年又は6か月ごとの更新。(更新回数に制限なし)また、配偶者や子の家族帯同は基本的に認められています。
ただし、林業は特定技能1号のみが対象となります。
特定技能制度についてより詳しい内容については下記の記事をご覧ください。
主な仕事内容は?
林業分野では、林業技能測定試験により技能を確認した育林、素材生産等の作業を特定技能外国人の主たる業務としています。
主たる業務のほか、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(林内で行う林産物の製造・加工等)に特定技能外国人が付随的に従事することは差し支えありません。
【主たる業務】=林業技能測定試験の合格により確認された技能を要する業務
○育林
○素材生産
○林業用種苗の育成(育苗)
○原木生産を含む製炭作業
特定技能における林業分野の主たる業務について、さらに詳しく説明します。
これらの業務は、林業技能測定試験を通じて確認された技能を要する業務であり、具体的には以下のような作業が含まれます。
育林は、森林を健全に育てるための作業です。具体的な内容としては、次のような作業があります。
・間伐(かんばつ)
→森林内の過密に成長した木を選んで切り落とす作業です。これにより、残された木に十分な光と水分が供給され、成長が促進されます。また、間伐を行うことで森林の生物多様性が保たれ、病害虫の予防にも繋がります。
・下刈り(したがり)
→木々の周りに生える雑草や低木を刈り取る作業です。これにより、若木が生育しやすくなり、光合成を最大化することができます。また、下刈りは新たに植樹する際にも重要な作業です。
・植栽(しょくさい)
→適切な場所に苗木を植える作業です。植栽には、種類や樹齢に応じた適切な時期に行う必要があり、専門的な知識と技術が求められます。
育林の作業は、森林の将来的な健康を保つために非常に重要です。適切な管理を行うことで、持続可能な森林資源の確保に繋がります。
素材生産は、木材や木材資源を生産する作業であり、主に伐採や集材が関わります。
・伐採(ばっさい)
→木材を生産するために、成長した木を適切な方法で切り倒す作業です。伐採には、どの木を伐るべきかという選定作業が重要で、間伐や生産目的に応じた伐採計画を立てる必要があります。
・集材(しゅうざい)
→伐採した木を集めて運搬する作業です。集材の方法としては、手作業によるものから、機械を使ったものまでさまざまな方法があります。作業中は安全に十分配慮する必要があります。
素材生産は、木材の質や量に大きな影響を与えるため、精度と計画性が求められます。適切な素材生産は、業界全体の木材供給において重要な役割を果たします。
林業用種苗の育成は、森林を再生し育てるために重要な作業です。具体的な内容は次の通りです。
・種子の採取
→木の実や種子を収穫し、翌年の植樹のために保管します。この作業は、木の種類や育成環境を考慮して行う必要があります。
・種苗の育成
→収穫した種子を適切な環境で育て、苗木を育てる作業です。これには、温度、湿度、土壌の管理が必要で、外部環境による影響を最小限に抑えるために精密な管理が求められます。
・育苗施設の管理
→高品質な苗木を育てるためには、育苗施設の管理が不可欠です。温室や苗床の環境設定(温度、湿度、日光)を最適化することが求められます。
育苗は将来の森林に大きな影響を与える作業であり、次世代の森を育てるために欠かせない重要な部分です。
製炭作業は、原木を炭として加工する作業を含みます。炭の生産は、日本の伝統的な産業であり、次のような業務があります。
・製炭
→伐採した木を炭に加工する作業です。製炭には、木材を高温で加熱して炭化させる「炭窯」を使った方法や、現代的な炭化炉を用いる方法があります。これにより、木材は炭に変わり、焼き物や炭火焼き料理、さらには燃料として使用されます。
・炭材の選定と準備
→製炭に適した木材を選定し、サイズに合わせて切り出す作業も含まれます。木の種類や成分が炭の品質に影響を与えるため、適切な木材選びが重要です。
製炭は、木材の利用価値を最大化し、環境に優しいエネルギー源としても重要な役割を果たしています。
また、関連業務は下記の業務になります。
【関連業務(例)】=主たる業務に従事する日本人が通常従事することとなる業務
○特定技能所属機関が生産した林産物を原料又は材料の一部として使用して林内で行う製造又は加工の作業
○特定技能所属機関による林産物の生産に伴う副産物(樹皮、つる等)を原料又は材料の一部として使用して行う製造又は加工の作業
○機器・装置・工具等の保守管理
○資材の管理・運搬
○特定技能所属機関が業務で使用する事業所等の清掃作業
○その他特定技能所属機関で林業の業務に従事する日本人が通常従事している作業 等
林業の求められるスキルと資格
林業分野で特定技能1号として働くためには、主に以下のような要件があります。
資格
【特定技能1号】
技能水準→「林業技能測定試験」
日本語能力→「国際交流基金日本語基礎テスト」又は「日本語能力試験(N4以上)」
林業に従事するためには、以下のスキルが求められます。
スキル
基本的な知識→森林の生態や育成方法、木材の特性などの理解。
安全管理能力→高所作業や重機の操作に伴う安全対策の知識。
体力と持久力→屋外での肉体労働が多いため、一定の体力が必要。
コミュニケーション能力→チームでの作業が多いため、円滑なコミュニケーションが重要。
また、以下の資格があると業務に有利です。
推奨資格
チェーンソー作業者特別教育→チェーンソーを安全に使用するための基本的な教育。
車両系建設機械運転技能者→フォークリフトやバックホーなどの重機を操作するための資格。
伐木等業務特別教育→伐採作業に必要な知識と技術を習得するための教育。
外国人材の受け入れにおける必要なことや注意点
林業分野の特定技能外国人を受け入れようとする場合、以下の点に注意が必要です。
特定技能所属機関(いわゆる受入れ機関)に関して、全分野に共通する要件に加え、林業分野独自の上乗せの要件を課しています。
主な独自の上乗せ要件に、林業特定技能協議会への加入や労働安全衛生に関する要件が求められています。
【林業分野上乗せ要件】
林業特定技能協議会への加入
・農林水産省や協議会への必要な協力を行うことが必要
・在留資格の諸申請の前に、協議会構成員となっておく必要
労働安全衛生に関する要件(協議会加入要件)
・育林、素材生産の場合(以下2つのうちいずれか)
「林業労働力の確保の促進に関する法律」に基づく認定事業主であること
「森林経営管理法」に基づき都道府県知事が公表した民間事業者であること
・種苗生産、薪炭の場合
「農林水産業・食品産業の作業安全のための規範(個別規範:林業)事業者向けチェックシート」による取組状況を協議会へ提出
また、その他にも下記の点についても確認してしっかりと準備しておきましょう。
確認ポイント
文化の違い→労働習慣や価値観の違いから、職場の調和を保つための配慮が求められます。
法的手続き→在留資格の取得や更新、労働条件の整備など、法的な手続きを適切に行う必要があります。
安全教育→日本の労働安全基準や作業手順を十分に理解させるための教育が重要です。
外国人材採用の流れ
外国人材を林業で採用する際の流れを、採用担当者としてしっかり把握しておくことが重要です。
採用計画の策定
まず最初に、自社の林業に必要なスキルや人員数を把握し、どのような外国人材が必要かを明確にします。
具体的には、必要な技能や資格をもとにどの国からどの程度の技能を持った外国人材を採用するかを検討します。
求人募集
外国人材を対象に求人を行う際には、特定技林業分野の求人広告を適切な媒体に掲載します。または、外国人材の求職者情報を保持している職業紹介事業者などに依頼することもお勧めです。
求人情報には、仕事内容や求められるスキル・日本語能力の要件・待遇などを明確に記載することが大切です。
面接と選考
応募者が集まったら、面接を行います。面接では、業務に必要な基本的な技術やコミュニケーション能力・日本語能力を確認します。
場合によっては、実技試験や技能試験を実施することもあります。
就労ビザの取得
選考を通過した候補者には、就労ビザを取得する必要があります。
特定技能1号ビザを取得するためには、所定の手続きを踏み必要な書類を提出します。
ビザの取得には一定の時間がかかるため、早めに手続きを始めることが重要です。
入社後の研修とフォローアップ
外国人材が入社した後は、業務に必要な研修を実施し適切な指導を行います。
特に日本の職場文化や安全衛生については、入社前後にしっかりと教育を行うことが求められます。
まとめ
林業分野は、特定技能制度を通じて外国人労働者の受け入れが進んでいます。
適切なスキルと資格を持つ人材を確保することで、森林の健全な育成や木材生産の効率化が期待されます。
しかし、外国人労働者を雇用する際には、言語や文化の違い、安全教育、法的手続きなど、さまざまな配慮が必要です。
これらの点に留意し、適切なサポート体制を整えることで、外国人労働者の活躍を促進し、林業の発展に寄与できるでしょう。
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相当程度の知識又は経験や技能を必要とする業務に従事する外国人向けの在留資格で、在留期間は通算5年までで、配偶者や子の家族帯同は基本的に認められていません。