外国人を「技術・人文知識・国際業務(通称:技人国)」の在留資格で採用している企業では、転職に関する実務対応に不安を抱える場面が少なくありません。特に「この外国人が転職後も在留資格の範囲内で働けるのか?」という点は、企業にとって重要な確認ポイントです。
そうした場面で役立つのが「就労資格証明書」です。本記事では、技人国での転職における制度概要、就労資格証明書の役割、取得のメリット・注意点、企業が準備すべき書類などを、実務担当者向けに分かりやすく解説します。
技人国の転職ルールを押さえよう
「技術・人文知識・国際業務」は、高度な知識や専門性を活かした業務に従事する外国人を対象とした在留資格です。職種としては、ITエンジニア、経理、人事、通訳、マーケティング、貿易実務などが該当します。
この在留資格を持つ外国人は、転職が可能ですが、その際には「新たな勤務先での業務が現在の在留資格の範囲内かどうか」が重要になります。
たとえば、前職が「通訳」で新しい職場でも「通訳」業務に就く場合、同じ職種でも企業規模や業務量が大きく異なると、在留資格の要件に適合しない場合があります。
このようなケースで役立つのが「就労資格証明書」です。入管庁が審査し、転職先での就労が適法であることを証明する文書として、企業・本人双方の安心材料となります。
就労資格証明書とは何か
就労資格証明書とは、外国人が転職や配置転換などで新たな業務に従事する際などに、「その活動が在留資格の範囲内に該当するかどうか」を入管庁が審査・証明する文書です。
取得は義務ではありませんが、在留資格の適用範囲に不安がある場合には、証明書の取得が強く推奨されます。証明書に「活動に該当する」と明記されれば、転職先での業務が在留資格の範囲内であることが公式に確認された状態となります。
たとえば、通訳から経理への転職のように、在留資格上はどちらも対象であっても、本人の学歴や職歴が適合しない場合、審査に影響を与える可能性があります。
また、在留資格の更新時に、転職による変更があいまいなままだと、審査が長引いたり不許可となるケースもあるため、証明書の取得により手続きをスムーズに進められるという利点もあります。
転職の流れと作業フローの管理
技人国の在留資格を持つ外国人が転職する際の基本的な流れは次の通りです。
現職との退職調整と離職証明の取得
転職先での内定・雇用契約締結
業務内容の確認(在留資格の範囲に適合しているか)
就労資格証明書の交付申請(任意)
在留カードの情報更新、または在留資格変更・更新申請(必要に応じて)
証明書の申請には1〜3カ月程度を要するため、退職時期や次の在留期間更新のタイミングに合わせて、余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。
企業が転職を受け入れる際には、どの時点でどの書類が必要かを整理し、採用後すぐにトラブルが起こらないよう事前に体制を整えておきましょう。
企業が準備すべき書類と対応ポイント
外国人を技人国で中途採用する際、企業が準備すべき主な書類は以下の通りです。
- 雇用契約書(業務内容の詳細記載が必要)
- 会社概要資料(事業内容・規模など)
- 在留カード原本の確認(就労制限の有無)
- 就労資格証明書申請関連書類(必要に応じて)
特に注意が必要なのは、業務内容が「技人国」で認められる範囲内かを具体的に説明できる資料です。本人の学歴や職務経歴と一致しているかも審査対象になります。
また、企業が申請取次者として就労資格証明書を代理申請することも可能ですが、そのためには地方出入国在留管理局への届出が必要です。
加えて、就労資格証明書が任意であることを理解し、取得の強要を避けるなど、外国人本人への配慮も欠かせません。
採用後に起こりやすい課題と対処法
転職後に起こりやすい課題には、業務内容の認識違いや社内コミュニケーションの不全などがあります。とくに以下の点に注意しましょう。
①業務内容のずれによる不適合
実務が在留資格の要件を満たしていないと判断されると、在留期間の更新が困難になります。事前の業務確認と定期的な実態チェックが必要です。
②言語・文化的障壁
外国人社員が社内に溶け込めないことで、早期離職につながるリスクがあります。受け入れ部署への事前研修や、メンター制度の導入が効果的です。
③在留資格更新の準備不足
次回更新時にトラブルが起こらないよう、必要書類や期限をリスト化し、余裕を持った対応を心がけましょう。
安定的な就労継続には、採用時だけでなく、入社後のフォロー体制が極めて重要です
まとめ
技人国の在留資格で外国人材を採用する企業にとって、転職に伴う適切な対応は大きな課題です。なかでも就労資格証明書は、採用予定の業務が在留資格の範囲に該当するかを事前に明確化できる有効な手段です。
取得は任意ですが、業務内容や業務量に変化がある場合、また在留期間更新が近い場合には、取得によってリスクを減らせます。
企業側は、就労資格証明書の趣旨を正しく理解し、外国人に強制せず、必要に応じて活用する姿勢が求められます。
あわせて、採用後のフォロー体制や業務内容の実態管理も重要です。就労の適法性を保ち、長期的に活躍できる環境を整えることが、外国人材の雇用成功のカギとなります。
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