特定技能制度で外国人材を受け入れる企業にとって、「どの登録支援機関に任せるか」は非常に重要なテーマです。
登録支援機関は、特定技能外国人の生活・就労・相談対応など、企業が行うべき支援業務を代行するパートナーであり、その支援の質は定着にも直結します。
一方で、登録支援機関と一口にいっても、人材会社系・企業子会社系・技能実習の監理団体系・送り出し機関系 など、運営母体によって得意分野や強みが異なります。どれか一つが優れているというよりも、「自社の目的や体制に合ったタイプを選ぶこと」が重要です。
本記事では、登録支援機関の4つのタイプとそれぞれの特徴を整理しつつ、企業が選定する際の考え方をわかりやすく解説します。
目次
登録支援機関とは?特定技能で求められる役割を整理
登録支援機関は、特定技能外国人を受け入れる企業に代わって、法律で定められた10項目の支援 を行う機関です。
具体的には、入国前のガイダンス、住宅確保の補助、市役所等の手続き同行、相談苦情対応、日本語学習の支援、転職時の支援などなど、外国人が日本で安心して働き生活できるようサポートします。
※登録支援機関については以下記事をチェック※
本来、これらの支援は企業(受入れ機関)自らが行うことも可能ですが、
- 言語対応(母国語での説明・相談)が難しい
- 生活支援のノウハウがない
- 人事・現場のリソースが不足している
といった理由から、登録支援機関に委託する企業が多いのが実情です。
また、登録支援機関といっても運営母体はさまざまで、主に以下の4つのタイプに分けられます。
- 人材紹介・派遣会社が運営する「人材会社系」
- 受入れ分野の企業が設立した「企業子会社系」
- 技能実習の監理団体が運営する「監理団体系」
- 海外送り出し機関が日本法人として運営する「送り出し機関系」
といったタイプに分けられます。
この違いを理解することで、「自社にとって合う・合わない」が見えやすくなります。
タイプ① 人材会社系の特徴と強み
人材紹介会社や派遣会社を母体とする登録支援機関です。
「採用(人材紹介)」と「支援」をワンストップで提供できるのが最大の特徴です。。
■主な強み
- 特定技能人材の募集・人選・マッチング力が高い。
- 採用活動とセットで支援契約を結ぶことで、入社までの流れがスムーズ。
- 特定技能以外(技人国・アルバイト・技能実習など)も含めた、幅広い人材提案ができる。
- 企業の人材課題(人手不足・定着・配置)を理解したうえで支援計画を組める。
■向いている企業
- 外国人採用が初めてで、「採用」から「支援」まで窓口を一本化したい企業。
- 特定技能だけでなく、他の在留資格との組み合わせも検討している企業。
- 全国に拠点があったり、職種が多岐にわたったりする企業。
■注意点
- 幅広く対応できる反面、特定の現場(例:建設の特殊な現場など)への専門知識は、子会社系に劣る場合がある。
総じて、人材会社系は 「総合型」「入口から出口までサポートしてほしい企業向け」 のタイプと言えます。
タイプ② 受入れ分野の企業子会社系の特徴
建設会社、製造メーカー、宿泊チェーン、介護法人など、特定技能の受入れ分野に属する企業が設立した子会社 が自社グループや同業他社のために設立した登録支援機関です。
■主な強み
- 同じ業界の企業として、現場業務や職種の中身を深く理解している。
- 業界特有の安全対策・勤務シフト・教育方法などに詳しい。
- 「この職種ならこう支援すると定着しやすい」といった、実践的なノウハウを持っている。
- 自社グループ内での受入れ実績を活かした支援ができる
■向いている企業
- 自社と近い業種・業務に特化した支援を希望する企業。
- 建設・製造・介護など、専門用語や現場ルールが多い職場環境の企業。
- 「同じ業界の目線で相談に乗ってほしい」と感じている企業。
■注意点
- 自社分野以外には対応していない(または経験が少ない)場合が多い。
- 採用(人材紹介)機能は持っていない場合があり、その場合は別途人材会社と契約する必要がある。
業界に特化した専門性を重視したい企業 に向いているタイプと言えます。
タイプ③ 技能実習の監理団体から派生した機関の特徴
技能実習制度の「監理団体(協同組合など)」が、特定技能にも対応するために登録を受けたケースです。 長年、実習生の受入れ・生活支援を行ってきた経験から、外国人支援や母国語対応のノウハウが豊富なのが特徴です。
■主な強み
- 技能実習生の支援を通じて、生活サポート・トラブル対応(病気・喧嘩・失踪等)の経験値が高い。
- 母国語スタッフ(ベトナム語・中国語・インドネシア語など)が豊富に在籍している。
- 地方の中小企業や、製造・建設現場の実情をよく理解している。
- 技能実習から特定技能への切り替え(移行)の手続きに強い。
■制度上のポイント
技監理団体(協同組合)そのものが登録支援機関として登録している場合と、グループ会社として別法人を設立している場合があります。 どちらの場合も、技能実習のノウハウがベースになっています。
■向いている企業
- 現在、技能実習生を受け入れており、同じ組合に特定技能も依頼したい企業。
- 技能実習生からの「特定技能へのステップアップ」をスムーズに進めたい企業。
- 生活面やメンタル面のサポート(手厚いケア)を重視したい企業。
■注意点
- あくまで「支援」がメインであり、新規の「人材紹介」機能は持っていない(または弱い)場合がある。
- 運用方針が技能実習(管理重視)に近く、特定技能(自立重視)の自由度と摩擦が起きるケースも稀にある。
生活面やメンタル面のサポートを重視したい企業にとって、心強いタイプです。
タイプ④ 送り出し機関が運営する支援機関の特徴
ベトナム・フィリピン・インドネシアなどの送り出し機関が、日本で設立した法人として登録支援機関になっているケースもあります。
■主な強み
- 母国語でのコミュニケーション能力が非常に高い(生活相談・家族との連絡など)。
- 自国の文化・慣習・宗教的背景を細かく理解している。
- 現地(母国)とのパイプが太く、新規採用時にも連携がスムーズ。
- 渡航前(現地)から日本到着後まで一貫した情報共有が可能。
■制度上のポイント
海外の企業はそのままでは登録支援機関になれないため、「日本法人」を設立して登録を受けています。
■向いている企業
- 特定の国籍(例:ベトナム人だけ、インドネシア人だけ)に絞って採用したい企業
- 母国語での深い相談対応や、母国の家族との橋渡しを重視したい企業。
■注意点
- 日本の労働法制や社会保険制度など、「日本の国内実務」に詳しくない担当者もいる場合がある。
- 支援内容や報告書の質にバラつきが出やすいため、契約前にサポート体制の確認が必要。
母国語支援や現地ネットワークを重視したい企業 にとって、有力な選択肢です。
まとめ
登録支援機関は、制度上はすべて同じ「登録支援機関」ですが、運営母体によって得意領域が異なります。
- 人材会社系:採用から定着までトータルに相談したい・窓口を一本化したい企業向け
- 企業子会社系:自社と同じ業界の専門性・現場理解を重視したい企業向け
- 監理団体系:技能実習からの移行や、手厚い生活支援・トラブル対応を重視したい企業向け
- 送り出し機関系:特定の国の言語対応や、現地とのパイプを重視したい企業向け
このほか、ビザ手続きの専門家である「行政書士事務所」が運営するタイプもあります
どれか一つが正解というわけではありません。「自社がどこに困っているのか」「何を一番重視したいのか」を明確にしたうえで、パートナーを選ぶことが大切です。
Link Asia では、人材サービスを母体とした登録支援機関として、採用と支援をワンストップで提供しています。「どのタイプの支援機関が自社に合うかわからない」といった段階からでも構いませんので、ぜひお気軽にお問い合わせください。















