少子高齢化が進む中、即戦力となる外国人材の活用は、企業の人材確保戦略においてますます重要性を増しています。
特定技能制度は、一定の技能と日本語能力を有する外国人の雇用を可能にする在留資格であり、「国内採用」と「国外採用」の2つのルートが存在します。
ただし、それぞれの手続きには大きな違いがあり、申請の流れや費用、必要な期間、そして採用後の対応も異なります。
この記事では、特定技能人材の採用を検討している企業の人事・採用ご担当者様向けに、国内採用と国外採用の手続きの違いをわかりやすく解説します。
自社にとってどちらが適しているか、判断材料としてぜひお役立てください。
特定技能制度の基本と背景
特定技能制度は、2019年に導入された外国人向けの新たな在留資格制度です。
これは、深刻な人手不足が続く特定の産業分野において、一定の技能と日本語能力を有する外国人を受け入れるために設けられました。
企業は、これらの分野に該当し、かつ即戦力人材を必要としている場合に特定技能制度を活用できます。
特定技能で受入が可能な分野については以下記事をご確認ください。
採用ルートは「国内採用」と「国外採用」に大別されます。
国内採用は、すでに日本に在留している外国人を対象とし、比較的手続きがシンプルです。
一方、国外採用は、海外在住者をゼロから招聘する形で、手続きは複雑ですが広範な人材プールから選定できます。
両者の違いを理解した上で、採用戦略を立てることが大切です。
国内採用のコストと所要期間
国内採用は、すでに日本に在留している外国人を対象とするため、採用までのスピードが速く、コストも抑えられる傾向があります。
たとえば、技能実習を修了し、特定技能へ移行を希望する人材であれば、日本の労働環境に慣れており、一定の技術と日本語スキルをすでに身に付けています。
主な費用は以下のとおりです。
- 在留資格変更申請手数料:4,000円
- 健康診断費用(企業側負担の場合):5,000〜10,000円
- 行政書士などの代行費用(任意):5万円〜15万円程度
採用までの期間は、書類が整っていれば1〜2か月程度が一般的です。特に、技能実習からの移行であれば、在留資格変更の審査もスムーズに進む傾向があります。
ただし、国内にいる候補者は数が限られているため、「必要な業種にマッチする人材が見つからない」というケースもあります。そのため、以下のようなポイントに注意が必要です。
- 必要な技能・言語レベルが合致するか
- 勤務地に移動可能かどうか
- 採用後の在留資格更新や定着支援体制が整っているか
スピード感を重視するなら、国内採用は非常に有効な選択肢となります。
国外採用のコストと所要期間
国外採用は、海外に住む外国人材を新たに日本へ呼び寄せる形となり、より多くの手続きとコストを伴います。
候補者の多くは、現地で特定技能評価試験や日本語教育を受けた人材や、過去に技能実習を経験した者などが対象です。これにより、採用時点である程度の技能・語学レベルを持っていることが期待されます。
国外採用にかかる主な手続きと費用は以下のとおりです。
- 特定技能評価試験および日本語試験の実施・証明取得
- 現地での面接および選考(オンライン対応も可)
- 在留資格認定証明書の取得・ビザ申請(約2~3か月)
- 渡航費用、生活支援費、登録支援機関の利用料
- 仲介機関への手数料(30万〜60万円程度/1人)
さらに、特定技能外国人を国外から採用する場合、国によっては政府認定の送出し機関を経由する必要があります。これはフィリピン、ベトナム、インドネシアなどの国で義務化されており、手続きの透明性確保やトラブル防止が目的です。
採用までの期間は3〜6か月程度を見込むのが一般的ですが、書類の不備や試験合格待ちなどで、さらに時間がかかることもあります。時間的な余裕と体制の整備が重要です。
採用後のフォローと違い
採用後の対応にも、国内と国外で大きな違いがあります。
国内採用者は、すでに日本での生活に慣れているため、以下のようなメリットがあります。
- 日本語でのコミュニケーションに慣れている
- 公共交通や生活習慣に理解がある
- 職場の文化に比較的スムーズに適応できる
一方で、国外採用者は、日本での生活が初めてのケースも多く、企業には生活支援・定着支援が求められます。登録支援機関と連携し、以下のようなフォローが必要です。
- 住居の手配(国内採用であっても転居を伴う場合は必要)
- 生活オリエンテーションの実施
- 日本語学習機会の提供
- 行政手続き(住民登録、年金・保険)のサポート
- 定期的な面談と相談対応
国外採用者の場合、就労開始から半年間は「義務的支援対象期間」となり、支援体制の有無が監査対象にもなります。定着率を高めるには、受け入れ企業側の意識と体制づくりがカギを握ります。
採用方法の選定基準とまとめ
国内採用と国外採用、それぞれの手法にはメリット・デメリットがあるため、自社の状況や採用目的を踏まえて判断する必要があります。以下に、選定時のポイントを整理します。
例えば、短期間で即戦力が必要な場合は、国内採用が適しています。一方で、中長期的に質の高い人材を育成・確保したい場合は、国外採用も視野に入れるべきです。
また、受け入れ体制が整っていない場合は、登録支援機関のサポートを積極的に活用することも検討しましょう。採用方法を誤ると、早期離職やトラブルの原因になるため、最初の設計が非常に重要です。
まとめ
特定技能人材の採用において、「国内採用」と「国外採用」では、準備すべき項目、かかる費用、所要期間、採用後の支援内容まで大きな違いがあります。国内採用はスピーディかつ低コストな一方で、対象者が限られるという課題があります。一方、国外採用は手間や費用がかかる反面、より幅広い人材プールから選定可能です。
自社のリソース状況や採用目的を踏まえて、適切な採用ルートを選ぶことが、外国人材活用の成功の鍵です。制度への理解を深め、支援機関と連携しながら、持続可能な採用戦略を構築しましょう。
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