企業が知っておきたい特定技能の住居基準と提供義務

外国人材を受け入れる企業にとって、住まいの確保は雇用管理の大切な一部です。
特に「特定技能」制度では、外国人が安心して生活できる環境を整えることが企業の義務とされています。

2025年時点で、特定技能における宿舎・社宅の面積基準は1人あたり7.5㎡以上と定められています。
これは技能実習制度の4.5㎡以上よりも広く、より人間的で快適な生活を前提とした基準です。
この記事では、特定技能制度での住居に関するルールをわかりやすく整理し、
技能実習との違い、最新の制度改正、そして企業が注意すべき管理のポイントを解説します。

特定技能制度における住居の取り扱いとは

特定技能制度では、外国人が日本で安定して働けるように、企業や登録支援機関に生活支援の提供義務が課されています。その中でも「住居の確保支援」は最も重要な項目のひとつです。

受入れ企業は、外国人が入国後すぐに生活できるよう、住居(社宅・宿舎・賃貸住宅など)を確保するか、または入居に関する手続を支援する必要があります。

住居の形態は社宅・アパート・寮など多様ですが、どの形であっても「適切な居住環境」であることが求められます。とくに面積・設備・プライバシーの確保は、技能実習制度よりも明確な基準が設けられています。

社宅・宿舎の面積基準と提供義務(7.5㎡ルール)

特定技能の外国人を受け入れる企業は、生活支援の一環として住居の確保または入居支援を行うことが義務づけられています。
これは出入国在留管理庁の「特定技能制度運用要領」に明記されており、
住まいの提供は単なる福利厚生ではなく、制度上の支援義務とされています。

基準となる居室面積は「1人あたり7.5㎡以上」

特定技能の住居では、1人あたりの居住スペースを7.5㎡以上確保する必要があります。
この面積は、寝起きするための「居室部分」だけを指し、廊下・キッチン・トイレなどの共用部は含まれません。

入居人数必要な居室面積備考
1人部屋7.5㎡以上約4.5畳の広さ
2人部屋15㎡以上各人が7.5㎡を確保
3人部屋22.5㎡以上各人に十分な生活空間を確保

単に部屋を用意するだけでなく、冷暖房や換気設備の整備、清潔な寝具の用意、プライバシーの確保など「生活の質」も審査対象です。
技能実習宿舎(4.5㎡基準)をそのまま転用すると基準違反になる可能性があるため、企業は必ず面積・設備の両面で確認しておく必要があります。

技能実習制度との主な違い(4.5㎡との比較)

技能実習制度における住居基準は、1人あたり4.5㎡以上と定められています。
この差は、「特定技能=労働者としての在留資格」であることが背景です。

制度名面積基準居住の位置づけ支援の義務
技能実習1人あたり4.5㎡以上研修期間中の宿泊施設監理団体による手配・確認
特定技能1人あたり7.5㎡以上労働契約に基づく住居企業・登録支援機関が支援義務

特定技能は「労働者」としての在留資格のため、
人間らしい生活基準・プライバシーの尊重が強く求められます。
技能実習のように「教育・訓練」を前提とする制度とは異なり、労働者としての待遇(賃金・住環境)がより厳格に定められている点が特徴です。

令和6年9月27日の運用改正で明確になった「住居支援の義務」

2024年(令和6年)9月27日に出入国在留管理庁が公表した最新の「特定技能制度運用要領」では、企業・登録支援機関が行う住居支援の内容と方法がより具体的に示されました。

これまで「住居を確保すること」とされていた定義が、今回の改正で以下のように細分化され、実務上の対応が明確化されています。

  • 外国人の入国前に住居を確保しておくことが原則
  • 入居契約のサポート、家賃・光熱費の説明を行うこと
  • 不当な控除や相場を超える家賃設定を禁止
  • 住居環境(換気・採光・防災・清潔さ)も確認対象

この改正により、形式的に「部屋を用意する」だけでは不十分となり、
「安全・快適に暮らせる住まいを確保する」ことが求められるようになりました。

さらに、登録支援機関の支援実施状況については、入管による立入調査の対象に加わりました。不十分な支援が確認された場合、行政指導や認定取り消しの可能性もあります。

したがって、企業は支援計画書を作成する段階で、「入居確保・契約支援・生活説明」まで一貫して行える体制を整える必要があります。

実際の社宅管理で注意すべきポイント

企業が特定技能人材に社宅を提供する場合、「面積・設備・費用」以外にも、次のような点に注意が必要です。

① 入居契約の名義
可能であれば、外国人本人名義または企業と本人の連名で契約することが望ましいです。

② 光熱費や共有スペースの管理
電気・ガス・水道料金をまとめて企業が支払う場合、実費を明確に計算し、給与控除する際は説明と本人同意が必要です。

③ プライバシーと安全性の確保
複数人での同居でも、個人スペース(7.5㎡/人)を確保する設計が必要です。
性別・宗教・文化に配慮した部屋割りを行うことで、トラブルを防ぎやすくなります。

④ 家賃・費用の透明性
支援計画書に明記した家賃・光熱費以外を徴収することはできません。
違反が発覚した場合、登録支援機関としての認定取り消しにつながるおそれもあります。

まとめ

特定技能制度における住居の扱いは、単なる生活支援の一部ではなく法的義務です。1人あたり7.5㎡の面積基準に加え、2024年9月の運用改正によって、企業や登録支援機関には「契約サポート」「家賃説明」「安全確保」などの責任が明確に課されました。

技能実習制度との違いを理解し、法令を守った住環境を整えることは、外国人材の定着と信頼構築に直結します。制度を“守る”だけでなく、活かす姿勢で取り組むことが、今後の外国人雇用成功の鍵となるでしょう。

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渡邉 圭史
人材ビジネス会社の一員として外国人雇用の推進に取り組んでいます。特定技能や技能実習制度、外国人労働者の受け入れについて、実務や日々の学びを通じて経験を積んでいます。このブログでは、外国人雇用に関する知識や最新情報、実際の現場で感じたことを分かりやすくお届けします。ぜひ気軽に読んでいただければと思います!