特定技能で必要な健康診断とは?実施義務と注意点を解説

特定技能人材を受け入れる企業にとって、「健康診断」は見落とされがちな管理項目です。
しかし、健康診断は単なる福利厚生ではなく、企業の法的義務でもあります。
雇用前の採用時、入国後の受入れ時、そして定期的な健康診断など、
実施すべきタイミングと範囲を正しく理解しておくことが重要です。

この記事では、特定技能制度における健康診断の位置づけや実施義務、
技能実習との違い、現場での注意点をわかりやすく解説します。
企業が遵守すべきポイントを押さえ、外国人材が安心して働ける環境づくりにつなげましょう。

特定技能における健康診断の位置づけとは

特定技能制度における健康診断は、労働安全衛生法に基づいて義務づけられています。
この法律は、日本人・外国人を問わず、すべての労働者に対して適用されます。
したがって、特定技能人材を雇用する企業も同様に、健康診断を実施しなければなりません。

特定技能では、外国人が「労働者」として雇用契約を結ぶため、健康診断の扱いは技能実習制度よりも厳格です。企業は以下の目的で健康診断を行う必要があります。

  • 労働者が安全に働ける健康状態かを確認するため
  • 健康異常の早期発見・治療を促すため
  • 職場内感染症などのリスクを防止するため

健康診断の結果は、労働契約や就業可否の判断材料となるほか、
在留資格の更新手続きにおいても参考情報となる場合があります。

雇用前・入国後・定期健診の実施タイミングと義務範囲

健康診断の実施義務は、企業がどの段階で外国人を雇用するかによって異なります。特定技能では、雇用前・入国後・定期健診の3つのタイミングが重要です。

雇用前(採用時)

採用前の健康診断は「義務」ではありませんが、受け入れ企業として雇用条件に適した健康状態を確認することが望まれます。
とくに食品製造業や介護分野など、健康状態が業務に直結する業種では、採用前の健康診断を実施するケースが増えています。

入国後(受入れ時)

在留資格「特定技能」で入国した外国人を雇用する際には、雇入れ時健康診断(労働安全衛生法第43条)を原則として実施する必要があります。
ただし、例外として以下のようなケースでは、既存の健康診断結果を活用することも認められます。

  • 出国前に母国で受診した健康診断結果を使用できる場合があります。
    厚生労働省が定める必須項目(胸部X線、血圧、尿検査など)がすべて含まれていれば、
    日本国内で再度受診する必要はありません。
  • 国内転職や技能実習からの切り替えの場合
    前職で受けた健康診断の直近1年以内の結果を活用することも可能です。

ただし、どちらの場合も診断項目が不足している場合には、
不足分のみを日本国内で追加入力する必要があります。

このように、すでに実施済みの健康診断結果を適切に確認・活用することで、
外国人本人の負担を軽減しつつ、法令遵守を維持することができます。

定期健康診断

雇用後は年1回の定期健康診断が義務です(労働安全衛生法第66条)。
派遣や短期雇用であっても、労働期間が一定以上継続する場合には実施対象となります。
実施時期や内容は日本人従業員と同様で構いませんが、外国人本人が理解できるように多言語での説明医療機関の選定が必要です。

技能実習制度との違いを整理

技能実習制度では、健康診断は「教育管理の一環」として実施されることが多く、実習生の安全配慮が主な目的です。
一方、特定技能では、外国人が労働契約に基づいて就労するため、労働安全衛生法上の健康診断義務が直接適用されます。

制度名健康診断の目的実施主体主な実施タイミング
技能実習実習生の健康管理・教育目的監理団体・実習実施者入国時・定期的
特定技能労働者の安全確保・法的義務雇用主(企業)雇入れ時・年1回

また、特定技能では結果の保管義務も企業に発生します。
健康診断結果は事業所で5年間保存し、異常があった場合には産業医や医療機関と連携して対応する必要があります。

健康診断実施時の注意点とよくあるトラブル

健康診断は「やっただけ」では不十分です。
特定技能の受入れ企業でよく見られるトラブルには、以下のようなものがあります。

  • 実施時期の遅れ:入社後すぐに診断を行わず、行政指導を受けた
  • 検査結果の放置:異常所見があってもフォローを怠った
  • 本人への説明不足:検査内容を日本語でしか説明していない
  • 費用負担の誤り:本人に全額負担させたケース

企業が健康診断を行う目的は、外国人の健康を守ることと職場の安全確保です。
費用は原則として企業が負担し、本人負担とする場合は労働契約書に明記する必要があります。
また、結果は本人にも必ず説明し、再検査や休養が必要な場合は就業調整を行いましょう。

健康診断結果の保管・活用と再検査対応

健康診断結果は、単に保存するだけでなく、職場の安全衛生管理に活かすことが求められます。

  • 結果の写しを本人にも交付(希望があれば翻訳対応)
  • 産業医・医療機関と連携して再検査を実施
  • 労働時間・配置転換などの就業措置を検討
  • 結果は5年間保存(労働安全衛生法第51条)

また、結果の内容は「個人情報」として扱う必要があります。
他の従業員や管理担当者以外に閲覧させないよう注意し、クラウド管理や紙保管の場合もセキュリティを確保しましょう。

まとめ

特定技能制度における健康診断は、労働安全衛生法に基づく企業の義務です。
採用時から定期的な診断まで、正しいタイミングで実施し、結果の説明・再検査・記録保管を徹底することで、外国人材が安心して働ける職場環境を実現できます。

健康管理は定着支援の第一歩でもあります。
単に制度対応として行うのではなく、「企業として健康と安全を守る姿勢」を示すことが、信頼される外国人雇用の鍵になります。

Man to Man株式会社の海外人材雇用サービス「Link Asia」 では、特定技能・技能実習・育成就労など、在留資格に応じた外国人雇用支援サービスを提供しています。登録支援機関・職業紹介事業者として、労務管理などの受入れ後のサポートにも対応。
制度の理解から実務の運用まで、企業の負担を軽減しながら、外国人材が安心して働ける環境づくりをお手伝いします。

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渡邉 圭史
人材ビジネス会社の一員として外国人雇用の推進に取り組んでいます。特定技能や技能実習制度、外国人労働者の受け入れについて、実務や日々の学びを通じて経験を積んでいます。このブログでは、外国人雇用に関する知識や最新情報、実際の現場で感じたことを分かりやすくお届けします。ぜひ気軽に読んでいただければと思います!