特定技能制度に基づき外国人材を受け入れる企業には、「定期的な相談支援の実施」と「その記録である相談記録書の作成」が法令上の義務として課されています。
特に、制度に沿った相談記録書の整備は、外国人が安心して働き続けられる環境づくりの根幹ともいえる存在です。
記録書をきちんと作成していない場合、受け入れ停止や指導対象になる可能性もあり、企業のリスクマネジメントとしても重要です。
本記事では、相談記録書の役割や基本様式、記載項目、作成の流れ、そして実務で使えるチェックポイントを網羅的に解説します。特定技能人材の受け入れを適正に行うため、ぜひ最後までご覧ください。
特定技能制度における相談支援とは
特定技能制度とは、日本国内で人手不足が深刻な16分野において、一定の技能と日本語能力を有する外国人材の就労を認める制度です。
外国人材が新しい職場・生活環境にスムーズに適応するためには、企業側の「相談支援」が不可欠とされており、これは法的義務でもあります。
具体的には、月1回以上の定期的な面談(対面またはオンライン)を通じて、外国人が抱える仕事上・生活上の悩みや不安を聞き取り、必要な対応を講じることが求められます。
この支援を「やったかどうか」を証明するために、必ず作成しなければならないのが「相談記録書」です。
相談支援は、企業自らが行う場合と、登録支援機関へ外部委託する場合があります。しかし、委託していても最終的な責任は受け入れ企業側にあります。
支援の実施状況や記録管理がずさんであれば、企業の信用にもかかわるため、相談記録書の作成・保管は重要な企業実務といえるでしょう。
相談記録書の基本様式と必要項目
相談記録書には法令で定められた具体的な書式はありませんが、出入国在留管理庁では参考様式を提供しています。この様式を基に記録書を整備することで、監査時の対応もスムーズになります。
■相談記録書フォーマット

■記載例

参考様式に含まれる主な記載項目は以下のとおりです。
- 実施日・時間、支援対象者の基本情報
- 実施方法(対面、オンラインなど)
- 相談の内容(仕事の悩み、住居、健康、人間関係、生活習慣など)
- 対応の内容・助言・紹介した外部機関など
- 対応者の氏名と所属部署
- 次回相談への引き継ぎ事項
また、支援を行ったことを本人に理解してもらうために、記録書の説明と同意も重要です。言語の壁を考慮し、やさしい日本語や母語での対応を心がけましょう。
義務違反が招くリスクと行政対応
相談支援や記録書の作成を怠ると、出入国在留管理庁による審査・監査で「適正な支援体制が整っていない」と見なされ、様々なリスクが発生します。
具体的には以下のような行政対応が取られる可能性があります。
- 指導・是正勧告の対象となる
- 技能実習から特定技能への移行が認められない
- 登録支援機関としての認定取消(委託している場合)
- 新たな外国人の受け入れが停止される
こうした行政処分は、企業の信頼を損なうだけでなく、慢性的な人材不足の解消にも深刻な影響を及ぼします。加えて、外国人材にとっても支援を受けられないことで、離職や精神的なストレスの原因にもなります。
逆に、記録書を通じてしっかりと支援が行われていることを示せれば、行政からの信頼も得られやすく、更新手続きもスムーズに進みます。書類の整備は義務を果たすだけでなく、企業のリスク回避・信頼構築のためにも不可欠です。
相談記録書作成の流れ
相談記録書の作成は、都度の対応で済ませるのではなく、ルーチンとして社内で運用体制を整えておくことが重要です。以下に、相談支援から記録作成・管理までの一連の流れを紹介します。
月初に相談予定を設定する(特定技能の従業員とスケジュール調整)
前回相談の内容・対応履歴を確認する
相談時はテンプレートに沿ってヒアリング(生活・仕事の両面)
相談内容・対応内容を正確に記録する
記録内容を外国人本人と共有し、誤解がないように確認
WORDまたはPDFで記録書を保存(紙管理でもOK)
※保存期間は原則3年間以上が推奨です。
必要に応じて社内共有・上司確認を行い、対応改善へ活用
相談記録書は「義務を果たすための証拠資料」であると同時に、「外国人が安心して働ける環境づくり」の第一歩でもあります。その意味でも、記録の質と支援の質を両立させる社内運用体制が求められます。
外国人が安心できる相談体制の構築法
相談記録書の整備だけでなく、その前提となる「相談しやすい環境づくり」も非常に重要です。単なる形式的な面談では、外国人は本音を話してくれません。以下のような視点を持つことで、実効性のある支援体制が構築できます。
また、相談を受けた後の対応が不十分だと、信頼を失う原因になります。相談内容に応じて、労働相談窓口や医療機関、カウンセラーなど外部の専門機関と連携する体制を整えておくことも重要です。
企業にとって、外国人材が定着するかどうかは「働きやすさ」や「相談しやすさ」に大きく左右されます。相談支援を義務から“信頼構築のツール”へと昇華させることが、これからの企業経営に求められる姿勢です。
まとめ
特定技能制度における「相談記録書」の作成は、単なる書類業務ではなく、外国人材が職場で安心して働き続けるための支援体制の要です。法律上の義務であることはもちろん、記録書を通じて支援の質を見える化することで、企業の信頼性や人材定着率の向上にもつながります。
今回ご紹介した相談記録書の様式は、出入国在留管理庁の公式サイトからダウンロードできます。記載例もあるため、初めて作成する企業担当者でも安心して取り組めます。また、社内体制としてもチェックリストを活用し、相談の実施から記録・保存までをルーチン化することが鍵です。
特定技能の受け入れを継続的・安定的に進めていくためにも、制度への理解と実務対応力を高め、外国人にとって「安心して働ける企業」であり続けましょう。
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■多言語での対応準備:通訳アプリや翻訳サービスの導入、外国語話者の配置
■文化的配慮:母国の生活習慣や宗教的背景を尊重した対応
■相談場所の工夫:落ち着いて話せる個室や、同国出身者の同席
■匿名相談の導入:声に出せない悩みを拾うための匿名アンケート導入
■支援内容の社内共有:対応履歴をチームで共有し、継続的な支援を可能にする