2024年9月30日付の制度改正により、特定技能の在留期間が実質的に最長6年まで延長されることになりました。
これまでは「特定技能1号」で最長5年が上限とされていましたが、
新制度では、2号移行試験において合格基準の8割以上の得点を得た場合に限り、再受験や準備のために最長1年間の在留が認められるようになります。
この見直しにより、一定の技能水準に達していながら惜しくも不合格となった人材にも再挑戦の機会が与えられ、企業にとっても雇用継続や育成投資の効果が高まります。
この記事では、最新改正の概要と仕組み、そして実務への影響をわかりやすく解説します。
目次
特定技能制度6年ルールとは?改正の概要
特定技能制度は、深刻な人手不足分野において外国人が働ける仕組みとして2019年に創設されました。
従来は「特定技能1号」で最長5年の在留期間が上限とされていましたが、
2024年9月30日付の制度見直しにより、2号試験に不合格であっても合格基準の8割以上の得点を得た場合に限り、1年間の在留延長が可能となりました。
この変更により、在留期間は「1号での5年+再受験準備の1年」で実質最大6年の在留が実現します。
出入国在留管理庁が公表した「特定技能制度の見直し概要(令和6年)」によると、この改正は「外国人材の安定的な就労と定着を促すこと」を目的としており、技能実習から特定技能への移行促進とも連動しています。
特定技能1号と2号の違いを整理
改正を理解するには、まず「1号」と「2号」の違いを押さえる必要があります。
区分 | 在留期間 | 更新 | 家族帯同 | 主な要件 |
---|---|---|---|---|
特定技能1号 | 最長5年 | 1年・6か月単位で更新 | 不可 | 技能実習修了または技能評価試験合格 |
特定技能2号 | 無期限 | 制限なし | 可 | 技能評価試験・日本語試験合格 |
改正後(2024年9月30日~) | 1号最長5年+試験8割得点で1年延長 | 実質最長6年 | 不可(1号期間中) | 再受験・再雇用を前提とした延長可 |
これまで「2号試験に合格できなければ帰国」が原則でしたが、
改正後は2号試験で合格ラインの8割以上を得点した場合にのみ、再受験を前提に最長1年間の在留延長が認められるようになります。
これにより、外国人本人のキャリアが途切れず、
企業側も雇用継続の判断や再教育の機会を確保しやすくなりました。
2号試験に不合格でも1年在留可能に
今回の改正の中核は、「2号試験に不合格でも即帰国とならない」点です。
出入国在留管理庁の資料「特定技能外国人受入れに関する運用要領」の一部改正について(令和7年9月30日)」によると、
「特定技能1号から2号への移行試験に不合格の場合、再受験や準備を目的として1年間の在留を可能とする」
と明記されています。
これにより、従来の「不合格=即帰国」という制度的制約が緩和されました。
改正後は、試験に落ちても再受験までの準備期間を日本で過ごすことができるようになります。ただし、延長の対象となるのはあくまで試験で合格基準の8割以上を得点した者のみです。
8割未満の得点者は延長の対象外であり、従来どおり在留期間満了後に帰国することになります。
そして、この1年間の在留延長は自動ではなく、次の条件を満たす必要があります。
- 再受験の意思を明確にしていること
- 雇用契約が継続していること
- 登録支援機関などによる支援体制が維持されていること
- 1〜5年目:特定技能1号として在留・就労
- 5年目終了時:特定技能2号試験を受験
- 不合格の場合:再受験準備のため1年間の在留延長(計6年)
- 合格時:特定技能2号へ移行(在留上限なし)
このように、特定技能1号の在留期間に1年間の猶予期間が追加され、制度としての柔軟性が高まりました。企業と外国人双方にとって、再挑戦のチャンスが確保される形です。
6年間働くための条件と注意点
「最長6年」の在留を実現するためには、いくつかの前提条件があります。
- 試験で合格基準の8割以上の得点を取得していること
- 再受験の意思を明確にしていること(次回試験申込・計画等)
- 雇用契約が継続していること
- 登録支援機関による支援体制が維持されていること
このうち、特に重要なのは「雇用契約の継続性」です。
途中で契約が途切れた場合、原則として在留延長は認められません。
また、6年間の在留が可能であっても、
在留資格は「1号」扱いのままであり、家族帯同などの2号特典は適用されません。
制度上の位置づけはあくまで「試験再受験のための猶予期間」である点に注意が必要です。
「量」から「質」へ。制度と企業が問われる次のステージ
特定技能制度は、数の拡大段階を終え、質の向上を重視する局面に入っています。
政府は特定技能2号の対象分野を大幅に拡大し、
建設や造船に加え、製造業全般や宿泊業なども対象とする方針を示しています。
これにより、特定技能外国人は無期限の在留や家族帯同が可能となり、
日本でのキャリア形成と生活基盤の両立が現実的になりました。
制度は単なる労働力確保の枠組みから、共生を前提とした人材育成制度へと転換しています。
今後、企業に求められるのは、採用数の拡大ではなく受け入れ体制の質的強化です。
教育・生活支援・キャリア支援を一体的に行う仕組みを整え、
外国人材が長く安心して働ける環境をつくることが重要です。
制度の成熟度は、受け入れ企業の運用姿勢によって左右されます。
6年間という期間を、単なる延長ではなく「育成のチャンス」と捉えられるかが問われています。
まとめ
特定技能制度は、改正により実質最長6年間の在留が可能になりました。ただし延長が認められるのは、2号試験で合格基準の8割以上の得点を得た人材に限られます。
この見直しは、外国人材が安定的に働きながら成長できる環境を整えるための大きな一歩です。
企業にとっても、長期雇用を前提とした教育投資や定着支援がしやすくなります。
制度が定着していく中で、今後は「雇用」だけでなく「育成・共生」を重視する姿勢が求められます。外国人材のキャリアを支援することが、企業の信頼と成長にも直結する時代です。
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