技人国ビザでの不法就労とは?企業が注意すべきポイントを解説

外国人材を採用する際に多く利用される「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国)ビザ。
専門性の高い業務に従事できる一方で、業務内容が在留資格の範囲を超えると「不法就労」とみなされるおそれがあります。
本人に違反の意図がなくても、企業側の雇用管理体制が不十分だと「不法就労助長罪」に問われるケースもあります。

この記事では、技人国ビザでの不法就労の定義、典型的な違反事例、そして企業が取るべき防止策までをわかりやすく解説します。

技人国ビザとは?在留資格の基本

「技術・人文知識・国際業務」(以下、技人国)は、外国人が日本の企業や団体で専門知識やスキルを活かして働くための在留資格です。

主な対象職種には次のようなものがあります。

  • 技術系(システムエンジニア、製造技術者など)
  • 人文知識系(経理、企画、マーケティングなど)
  • 国際業務系(通訳、翻訳、貿易業務など)

この在留資格の特徴は、「許可された職務内容の範囲で就労できる」という点です。
裏を返せば、許可範囲外の業務に従事すると資格外活動にあたり、不法就労となる可能性があるということです。

不法就労とは何を指すのか

出入国管理及び難民認定法(入管法)では、不法就労を次のように定義しています。

「在留資格を有しない者、またはその資格の範囲外の活動によって報酬を受けて就労すること」

つまり、在留資格の有無や内容に関係なく、許可されていない業務を行った時点で不法就労に該当する可能性があります。

以下は、不法就労に該当する主なケースです。

  • 在留期限が切れたまま就労を継続している
  • 許可された職種以外の業務に従事している
  • 「留学」「家族滞在」など就労を目的としない在留資格で働く
  • 資格外活動許可を得ずに副業やアルバイトを行う

技人国ビザの場合も、職務内容が在留資格の範囲を逸脱していれば「資格外活動」とみなされ、
そのまま就労を続けると不法就労扱いになる可能性があります。

技人国ビザで不法就労になるケース例

技人国ビザで不法就労に該当しやすいのは、主に次のようなケースです。

業務内容が在留資格に合致していない

採用時の職務内容が「翻訳・通訳」だったにもかかわらず、実際の勤務内容が「接客」「販売」「軽作業」などの場合、資格外活動に該当する可能性があります。

就労先を変更したのに入管へ届出していない

技人国で転職・出向・出張など勤務先が変わる場合、「契約機関に関する届出」を出入国在留管理庁へ提出しなければなりません。
届出を怠ると、結果的に「在留資格に基づかない就労」と判断されるリスクがあります。

副業・派遣・他社業務への従事

在留資格は原則として1つの企業との雇用契約を前提としているため、他社での副業や派遣業務は資格外活動許可が必要です。
許可を得ずに行うと、たとえ短時間でも不法就労になります。

契約内容と実務が異なる

採用書類上では「エンジニア」となっていても、実際は「清掃」や「梱包作業」を中心に行っているケースは要注意です。形式的に技人国ビザを利用し、実態が単純労働であれば、在留資格の不正利用と判断されます。

企業側が注意すべきポイントと罰則

外国人が不法就労を行った場合、雇用した企業にも「不法就労助長罪(入管法第73条の2)」が適用される可能性があります。

主な罰則

  • 3年以下の懲役または300万円以下の罰金
  • 悪質な場合は企業名の公表や行政処分

このため、企業は採用段階から在留資格や職務内容の確認を徹底する必要があります。

採用・雇用時に確認すべき事項

  • 在留カードの在留資格・在留期間・就労制限の有無
  • 雇用契約書と職務内容が一致しているか
  • 転職・兼業・出向の有無
  • 契約更新時に在留資格も更新されているか

雇用管理が不十分なまま不法就労が発覚した場合、企業も「確認を怠った」として処罰対象となる可能性があります。そして、不法就労助長罪が適応された場合、不法就労していた従業員だけでなく、在留資格範囲内で就労している他の外国人従業員の雇用も出来なくなる可能性があります。

適正雇用のために企業ができること

不法就労を防ぐためには、制度理解と以下のような実務上の防止策が欠かせません。

  1. 就労資格証明書の取得
     業務内容が資格範囲内か入管に確認できる証明書。転職時や職務変更時に活用可能。
  2. 在留カードの定期確認
     有効期限や資格内容を定期的にチェックし、更新記録を管理。
  3. 業務内容の明確化と記録
     職務記述書(ジョブディスクリプション)を作成しておく。
  4. 業務変更時の入管届出
     転籍や配置転換があれば必ず契約機関変更届を提出。
  5. 専門家への相談体制
     行政書士や登録支援機関に確認を依頼し、曖昧なケースを防ぐ。

まとめ

技人国ビザは、専門的な知識やスキルを前提とした在留資格であり、許可された職務範囲を超えると不法就労に該当する可能性があります。
本人に悪意がなくても、企業側の管理不足が原因で違反になるケースは少なくありません。

不法就労を防ぐためには、採用前・雇用中・契約変更時のそれぞれで在留資格と職務内容の整合性を確認する体制を整えることが重要です。
制度を正しく理解し、外国人材が安心して働ける環境を整えることが、結果的に企業の信頼とコンプライアンス強化につながります。

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渡邉 圭史
人材ビジネス会社の一員として外国人雇用の推進に取り組んでいます。特定技能や技能実習制度、外国人労働者の受け入れについて、実務や日々の学びを通じて経験を積んでいます。このブログでは、外国人雇用に関する知識や最新情報、実際の現場で感じたことを分かりやすくお届けします。ぜひ気軽に読んでいただければと思います!