外国人材の受け入れを検討している企業の中には、「特定技能」の在留資格認定にかかる審査期間が想定以上に長く、不安を感じている担当者も少なくありません。法務省の最新データによると、2023年から2025年にかけて、特定技能1号の審査期間は月ごとに変動があるものの、おおむね60日前後で推移しており、長期化の傾向が続いています。
本記事では、制度の概要や過去の推移、審査が長引く背景、他の在留資格との比較、そして企業側でできる対策までを解説します。
目次
特定技能制度の概要
特定技能は、深刻な人手不足を補うために2019年に創設された在留資格です。「特定技能1号」では、16の特定産業分野において、一定の技能・日本語能力を有する外国人材を最大5年間受け入れることができます。
企業が外国人を受け入れるには、出入国在留管理庁(入管)に対して在留資格認定証明書交付申請を行う必要があります。この申請には、支援計画の整備、雇用契約の適正性の確認、提出書類の正確さなどが求められ、入管による審査には一定の時間がかかります。
最新データで見る審査期間の推移
法務省が公表した月別データによると、特定技能1号の審査期間は以下のように推移しています。
特定技能1号の平均処理日数(抜粋)
月 | 平均日数 |
---|---|
2023年1Q | 70.7日 |
2023年4Q | 64.2日 |
2024年1Q | 72.8日(ピーク) |
2024年12月 | 55.1日(最短) |
2025年5月 | 63.5日 |
2025年7月 | 65日 |

一時的に短縮傾向が見られる月もありますが、全体としては60〜70日の範囲で高止まりしている状態です。
他の在留資格と比べても、特定技能は比較的長く、例えば技能実習1号イは20〜30日、技術・人文知識・国際業務は月により50〜88日と変動していますが、2025年7月時点では55.1日と、特定技能1号よりもやや短くなっています。
審査が長期化している理由
特定技能の審査期間が長期化している背景には、以下のような要因が考えられます。
- 申請件数の増加:特定技能制度の利用が進む中で、入管への申請数が急増。
- 書類の不備・支援体制の不足:申請書類に不備があると、追加資料の提出や差し戻しが発生。
- 入管の体制不足:特に地方入管では人手不足や処理能力の限界により、審査が滞るケースも。
2024年末には一時的に審査期間が短縮されましたが、2025年には再び長期化傾向が見られるなど、安定しない状況が続いています。
他在留資格との比較から見るポイント
他の在留資格と比較すると、特定技能の審査期間は以下の通りです(2025年7月時点):
在留資格 | 平均審査期間(日) |
---|---|
特定技能1号 | 65日 |
技能実習1号イ | 25.8日 |
技能実習1号ロ | 17.2日 |
特定活動(例:インターン) | 26.9日 |
技術・人文知識・国際業務 | 55.1日 |
このように、技能実習1号イやロと比べて、特定技能の審査は約2〜3倍の時間を要していることが分かります。とくに初めて制度を使う企業や、支援体制が不十分な場合は、さらに時間がかかる傾向があります。
企業がとるべき対策とは?
審査期間の長期化に備えて、企業としてできる対策は以下の通りです。
- 早めの準備とスケジューリング
⇒ 最低でも3ヶ月前から動き始める - 書類不備の防止
⇒ 提出前に複数人でのダブルチェックを行う
※書類作成の時間もある程度余裕をもちましょう - 支援計画の充実化
⇒ 生活支援や業務内容の具体化が重要 - 専門家の活用
⇒ 登録支援機関や行政書士のサポート、アドバイスを受けることで、差し戻しリスクを軽減 - 進捗管理の徹底
⇒ 入管からの問い合わせや指摘に迅速対応できる体制を整える
まとめ
特定技能の在留資格認定証明書交付申請における審査期間は、制度の浸透とともに申請が増加したこともあり、依然として60日前後の処理期間がかかる状況が続いています。他の在留資格と比べても、特定技能は審査に時間を要するため、企業としては早期の準備と正確な申請対応がますます重要です。
最新の法務省データによれば、特定技能1号は他の主要在留資格と比べて、依然として処理期間が長い傾向にあります。採用スケジュールへの影響を最小限にするには、社内の体制整備と外部支援の活用を組み合わせ、計画的に進めていくことが成功の鍵となります。
また、特定技能の対象分野は拡大傾向にあり、働きぶりの好評からみても、特定技能の需要はさらに増えると予想されます。今以上に審査業務への負荷を高くなることから、審査期間がさらに長期化する可能性は否定できません。
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参考サイト
在留審査処理期間 | 出入国在留管理庁