2025年12月1日から、入管の審査運用が大きく変わりました。 一言で言えば、「特定の条件を満たせば、書類がほぼゼロになる」という衝撃的な変更です。
これまで中小企業が留学生を採用する際、最大のハードルだった「大量の会社資料」が、今回の変更で一掃されました。 しかし、簡単になったからこそ潜む「リスク」もあります。 本記事では、12月から始まった新ルールの詳細と、専門家視点で見る「実務の落とし穴」について解説します。
目次
何が変わった? これからは「申請書」だけで審査へ
2025年12月1日より、「留学」から「技術・人文知識・国際業務(技人国)」への変更申請において、以下の条件に当てはまる場合、審査書類が大企業並みに簡素化されました。
これまでは、会社の規模によってカテゴリー1〜4に分けられ、カテゴリー3・4(中小企業・新設会社)は多くの資料が必要でした。 しかし今後は、「日本の大学を卒業している」などの条件を満たせば、会社の規模に関わらず、提出書類が極限まで省略されます。
実質、「申請書1枚出すだけ」に近い感覚で申請が可能になります。
どれくらい簡単になった?(新旧比較)
具体的にどれくらい書類が減ったのか、比較してみましょう。
【今まで(中小企業の場合)】
- 申請書
- 労働条件通知書(雇用契約書)
- 卒業証明書
- 履歴書
- 登記事項証明書(謄本)
- 会社のパンフレット・HP写し
- 直近の決算文書(貸借対照表・損益計算書)
- 理由書(任意だが実質必須)
【2025年12月1日から】
- 申請書
※原則これのみ。卒業証明書等の確認資料は必要ですが、会社側の立証資料はごっそり不要になります
企業側が用意する「決算書」や「謄本」が不要になるため、採用スピードは劇的に上がります。
誰が「書類ゼロ」の対象?
今回の運用変更で特筆すべき点は、その対象範囲の広さです。「日本の大学卒業者」だけでなく、以下のパターンも簡素化の対象になります。
① 日本の大学を卒業した人
= 企業規模を問わず「書類省略」
日本の大学(短大・大学院含む)を卒業していれば、就職先が中小企業でも新設会社でも、提出書類は大幅に省略されます。
② 世界大学ランキング上位300位以内の大学を卒業した人
= 企業規模を問わず「書類省略」
海外の大学であっても、指定のランキング(THE、QS、上海など)に入っている大学なら、日本の大学卒と同様の優遇措置を受けられます。
③ 過去にその会社で「更新許可」を受けた人がいる場合
= 次回以降の採用も「手続き簡素化」
すでに社内に「技人国」の外国人が在籍しており、その会社で1回でも「期間更新許可」を受けた実績があれば、会社としての信用があるとみなされ、新たな留学生を採用する際も書類が省略されます。
【注意】派遣会社の場合は要注意
「日本の大学を出ていれば無条件でOK」かというと、一つだけ例外があります。 それが「派遣形態」の場合です。
- 日本の大学卒業 + 一般企業(正社員) =書類省略
- 日本の大学卒業 + 大手派遣会社(カテゴリー1・2) = 書類省略
- 日本の大学卒業 + 中小派遣会社 = 【対象外(通常通りの資料が必要)】
派遣会社に雇用され、現場へ派遣される働き方の場合、派遣元の会社規模が小さいと、今回の「書類省略」ルールは使えない可能性が高いため注意が必要です。
簡単になったからこそ「嘘」は命取り
「申請書だけでいいなら、適当に書いてもバレないのでは?」 そう思う方もいるかもしれません。しかし、ここに最大の落とし穴があります。
申請書類が減ったということは、入管は「性善説」で一旦許可を出す運用に切り替えたとも言えます。しかし、それは「チェックしない」という意味ではありません。
- 事後調査(実態調査)の強化
- 次回更新時の厳格な審査
これらが今後、徹底される可能性が高いです(そうでなければ制度が崩壊するため)。 もし申請書の内容と実態(業務内容や給与など)が違っていた場合、「虚偽申請」として摘発され、ビザ取り消しや不法就労助長罪に問われるリスクがあります。
「書類を出さなくていい」からこそ、「実態が正しいか」を自社で厳しく管理する責任が、これまで以上に企業に求められます。
まとめ
2025年12月の運用変更により、日本の大卒留学生や、実績ある企業の採用ハードルは驚くほど下がりました。
- 申請書ベースの超簡易申請が可能に
- 日本の大学卒なら、企業規模問わず対象
- 海外ランク校卒や、更新実績のある企業も対象
しかし、簡単になった裏には「企業の自己責任」が重くなったという側面もあります。 「とりあえず許可が出たからOK」ではなく、3年後、5年後も問題なく雇用し続けるために、正しい知識で運用することが大切です。
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