外国人材を採用する際に必ず確認すべきなのが「在留資格」です。在留資格は、日本でどのような活動ができるかを明確に区分しており、働ける資格・働けない資格、働ける範囲に制限がある資格などがはっきり定められています。
しかし、在留資格は種類が多く、名称も複雑なため、初めて外国人雇用に携わる担当者が迷いやすい分野でもあります。 本記事では、外国人が日本で働ける在留資格の種類、業務範囲の制限がある資格、原則働けない資格、資格外活動によるアルバイトまで、実務で必要なポイントを整理して解説します。
目次
在留資格の基本分類|働けるかどうかの判断基準
日本の在留資格は大きく次の3分類に分かれます。
■① 活動内容に基づく「就労系資格」(=仕事の内容が厳密に決まっている)
例: 技術・人文知識・国際業務、介護、技能、特定技能1号・2号、高度専門職 など
特徴: 許可された業務内容の範囲内でのみ働ける(エンジニアは現場作業不可、など)。
■② 身分や地位に基づく資格(業種・職種の制限なし)
例: 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者
特徴: 日本人と同様にどんな仕事も可能(単純労働含む)。資格外活動許可は不要。
■③ 原則就労できない資格(資格外活動でのみアルバイト可)
例: 留学、家族滞在、文化活動、短期滞在
特徴: 本来は就労不可。資格外活動許可があれば週28時間以内で働ける。
在留カードの表面に在留資格が記載されており、「就労制限の有無」は裏面に記載されています。企業側は採用前にこの情報を必ず確認し、在留資格に適合した業務かどうか を判断する必要があります。
■ 在留カードの確認方法(※誤解の多いポイント)
企業が確認すべき項目は以下の3つです。
在留資格(表面) : どの種類のビザか
在留期限(表面) : 期限が切れていないか
就労制限の有無(表面): 中央の記載を確認
※裏面の確認について
裏面の「資格外活動許可欄」は、「就労不可」の人(留学生・家族滞在)を採用する場合に決定的に重要です。ここに許可スタンプがないと雇うことはできません。
就労が認められている在留資格(フルタイム可能)
外国人が日本でフルタイムで働くための代表的な就労系在留資格は以下のとおりです。
- 技術・人文知識・国際業務(技人国)
職種: 通訳、経理、総務、営業、マーケティング、ITエンジニアなど
ポイント: 専門性のある事務系・技術系業務が対象。単純作業・現場作業は不可。
- 特定技能1号
対象分野: 介護、ビルクリーニング、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、工業製品製造業、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業
ポイント:家族帯同不可(例外あり)、技能試験および日本語試験の合格が必須、在留期間は通算5年までです。
- 特定技能2号
熟練した技能を持つ外国人向けの資格で、現在は「介護」以外のすべての特定技能分野(15分野)に対象が拡大される方針が進んでいます。
ポイント:技能試験、日本語試験の合格が必須、在留期間の上限なし、家族帯同が可能です。
- 技能
職種: 外国料理の調理師、建築関係の職人、パイロット、スポーツ指導者など
ポイント: 「熟練した技能」を有する者が対象。「インド料理のコックはインド料理店のみ」といった制限があります。
- 介護(介護福祉士)
ポイント: 訪問介護を含む介護業務全般が可能。
対象: 日本の介護福祉士(国家資格)を取得した外国人
- 高度専門職
対象: ポイント制で認定された研究者、高度専門家、経営者
ポイント: 永住許可要件の緩和や親の帯同など、優遇措置が多い。
これらの資格は「働ける」ことが前提ですが、業務内容が在留資格の範囲に合っているか が非常に重要です。
審査では、実際の業務が申請内容と一致しているかが厳しく確認されます。
業務内容に制限がある就労資格
就労可能でも、業務範囲が狭く制限されているタイプ の在留資格もあります。
技能(料理・建築など)
「外国料理の調理」「建設機械オペレーター」など、特定の技能に限定。
例:調理師資格を持つネパール料理人 → ネパール料理店でのみ就労可
別ジャンルの飲食店で働くことは不可。
特定活動(特定活動46号・インターン等)
特定活動は種類が多く、「就労可/不可」がパスポートの指定書を見ないと分かりません。
- 特定活動46号(本邦大学卒業者): 日本の大学を卒業し高い日本語力があれば、日本語を使う現場業務を含む幅広い業務が可能。
- インターンシップ: 大学の単位に関連する場合など、条件付きで就労可。
介護
介護施設で勤務できますが、あくまで「介護」が主たる業務である必要があります。調理専任や清掃専任スタッフとして雇うことはできません。
このように、資格によって“できる仕事とできない仕事”が明確に区別されている ため、企業側は業務内容を誤らないように注意する必要があります。
原則働けない在留資格
次の在留資格は 原則就労不可 ですが、場合によっては資格外活動でアルバイトが可能です。
■ 留学
学業が主目的。
資格外活動許可を取得すれば 週28時間以内 でアルバイト可。
長期休暇は1日8時間まで可能(連続7日で28時間制限は維持)。
■ 家族滞在
扶養される家族のための在留資格。
資格外活動許可を取ればアルバイト可(週28時間以内)。
■ 文化活動/短期滞在
原則就労不可。
資格外活動許可も基本的には下りない。
これらの資格は「働いてよい資格」ではないため、企業は採用前に資格外活動許可の有無 を必ず確認する必要があります。
資格外活動で働けるケース(留学生・家族滞在)
資格外活動とは、在留資格本来の活動に支障のない範囲で、限られた時間だけ働くことを認める制度 です。
以下のルールは必ず押さえておきましょう。
■ 留学生・家族滞在が働ける条件
- 資格外活動許可があること: 在留カード裏面の下部に「許可」のスタンプがあるか確認。
- 週28時間以内: どの曜日から数えても1週間で28時間以内(残業含む)。
- 長期休暇の特例(留学生のみ): 学則で定めた夏休み等は、1日8時間以内(週40時間以内)まで拡大。
- 風俗営業等は禁止: パチンコ店、ゲームセンター、スナック等での勤務は、皿洗いや清掃でも不可。
資格外活動は「便利な制度」ですが、企業側の管理が不十分だと、不法就労助長罪の対象 になり得るため、掛け持ちの有無なども含めて採用時の確認が最重要となります。
まとめ
外国人の在留資格は、多くの種類があり、働ける資格・働けない資格、働ける範囲に制限がある資格などが明確に区別されています。企業が適切に外国人を雇用するためには、在留カードの確認だけでなく、業務内容との適合性、資格外活動の許可の有無など、細かい点まで理解する必要があります。
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