在留資格の中でも「特定活動」は、内容が分かりにくい資格としてよく挙げられます。
「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」のように、活動内容が明確に定義されている資格とは異なり、特定活動は 個別の事情や政策目的に応じて柔軟に設けられる在留資格 です。
そのため、「特定活動なら何でもできるのか」「就労は可能なのか」「企業が受け入れてよい資格なのか」といった疑問を持つ方も少なくありません。
本記事では、特定活動の基本的な考え方から、就労可否の判断ポイント、企業が採用時に注意すべき点までを整理して解説します。
目次
特定活動とはどのような在留資格か
特定活動とは、出入国管理及び難民認定法に基づき、法務大臣が個別に活動内容を指定する在留資格です。
他の在留資格のように「この資格ならこの仕事」と一律に決められているわけではなく、一人ひとり、または一定の類型ごとに活動内容が定められる点が最大の特徴です。
制度上、特定活動は次のような目的で設けられています。
- 既存の在留資格に当てはまらない活動を認めるため
- 政策的に必要と判断された外国人の受入れを可能にするため
- 一定期間に限り、日本での活動を認めるため
このため、同じ「特定活動」という名称でも、
就労可能なもの/就労不可のもの/条件付きで就労できるもの が混在しています。
特定活動が使われる主なケース
特定活動は、非常に多くの場面で使われています。代表的な例として、次のようなケースがあります。
- 特定活動46号(日本の大学卒業者が幅広い業務に従事する場合)
- 卒業後の就職活動、または内定待機期間
- 卒業後のインターンシップ
- ワーキングホリデー
- EPA候補者や特定分野の受入れに関する活動
- 外交・国際行事に関する活動
- 出国準備(在留資格の変更・更新が不許可になった後の準備期間)
これらはすべて「特定活動」に分類されますが、活動内容・在留期間・就労の可否はそれぞれ異なります。
つまり、「特定活動だから〇〇ができる」と一括りに判断することはできず、個別指定の内容を必ず確認する必要がある資格 といえます。
特定活動で就労はできるのか
特定活動で就労できるかどうかは、個別に指定されている活動内容によって決まります。これを確認するために不可欠なのが、パスポートに添付されている「指定書」です。
在留カードには「就労不可」や「指定書記載のとおり」としか書かれていないことが多く、詳細な条件は分かりません。必ず、ご本人のパスポートにホッチキス留めされている「指定書」という紙を確認してください。
指定書には、次のような情報が記載されています。
- 就労可/不可の別
- 就労できる場合の業務内容
- 就労時間や条件(制限付きの場合)
たとえば、
- 就職活動中の特定活動 → 原則就労不可(資格外活動許可が必要)
- ワーキングホリデー → 就労可能(ただし主目的は「滞在・観光」)
- インターン型特定活動 → 指定された範囲内でのみ就労可
- 出国準備の特定活動 → 原則就労不可
企業が特定活動の外国人を受け入れる場合は、「特定活動=働ける」という誤解を避け、必ず「パスポートの指定書」を目視確認することが重要です。
企業が特定活動を受け入れる際の注意点
特定活動の受入れにおいて、企業側が特に注意すべき点は次のとおりです。
1. 在留期間と更新の可能性
特定活動で特に注意したいのは、在留期間が比較的短く設定されるケースが多い点です。多くの場合、3か月・6か月・1年といった期間で付与され、更新も自動的に認められるとは限りません。
企業側としては、以下の点を整理しておく必要があります。
- 契約期間と在留期間が整合しているか
- 在留期限後の在留資格変更や更新を想定しているか
- 万が一、更新や変更が認められなかった場合の対応
2. 「長期就労向け」と「一時的滞在」の見極め
特定活動には、大きく分けて2つのタイプがあります。
A:一時的な活動(つなぎ) 就職活動、インターン、ワーキングホリデーなど。これらはあくまで次の段階への「つなぎ」や「一時滞在」が目的であるため、将来的に「技術・人文知識・国際業務」などへの変更が必要になるケースが大半です。
B:長期就労を前提とした活動(例外) 近年注目されている「特定活動46号(日本の大学卒業者)」などは、フルタイムでの長期就労を前提としています。この場合は、一般的な就労ビザと同じように長期的なキャリア形成が可能です。
「特定活動だから長く働けない」と一概に判断せず、その方が持っている特定活動がどのタイプなのかを見極めることが重要です。
特定活動は「つなぎ」や「例外」を支える資格
近年は、留学生の就職支援や高度人材の受入れ促進など、外国人材を円滑に日本社会へつなげるための制度設計 が重視されています。その中で特定活動は、制度の隙間を埋める役割として活用されてきました。
一方で、制度が柔軟であるがゆえに、「本来は別の在留資格で行うべき活動を、特定活動で続けてしまう」といった運用が問題視されることがあるケースもあります。
特定活動は、制度の柔軟性が高い一方で、企業側が制度の趣旨を正しく理解していないと、運用を誤りやすい在留資格でもあります。
たとえば、「就労可能」と書かれているからといって、他の就労系在留資格と同じ感覚で配置や業務を任せてしまうと、結果的に在留資格と実態が合わず、更新や変更時に問題となることがあります。
そのため、特定活動での雇用では、
- 許可された活動内容(指定書)を定期的に確認する
- 業務内容に変更が生じた場合は早めに専門家へ相談する
- 在留期限が近づく前に次の資格への移行を検討する
といった計画的な管理が欠かせません。
特定活動は「便利な資格」ではありますが、正しく使ってこそ、企業と外国人双方にとってメリットのある制度となります。
まとめ
特定活動とは、法務大臣が個別に活動内容を指定する、柔軟性の高い在留資格です。就労可否や活動範囲はケースごとに異なり、一律の判断はできません。
企業が特定活動の外国人を受け入れる際には、在留カードだけでなく必ずパスポートにある「指定書」の内容を確認し、業務内容が適合しているかを慎重に判断することが重要です。
制度を正しく理解することで、
不法就労リスクを避けつつ、円滑な外国人雇用につなげることができます。
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参考サイト















