外国人が日本で会社を設立したり、企業の経営に携わったりするためには、「経営・管理」という在留資格を取得する必要があります。この資格は、日本国内で事業の経営または管理に従事する外国人を対象としており、単なる投資や名義上の経営では認められません。
そして2025年(令和7年)10月、出入国在留管理庁による制度改正が実施され、審査基準が大きく変わりました。常勤職員の雇用義務、資本金3,000万円以上、日本語能力の要件など、実体のある経営を重視する仕組みに移行しています。
本記事では、その改正内容を含め、「経営・管理」ビザの基本と最新動向をわかりやすく解説します。
目次
在留資格「経営・管理」とは?制度の概要
「経営・管理」とは、外国人が日本国内で事業を経営し、またはその事業を統括・管理する活動を行うための在留資格です。
「日本において貿易その他の事業の経営を行い、またはその事業の管理に従事する活動」
(出入国管理及び難民認定法 別表第一より)
つまり、経営者として会社を動かす、あるいは経営管理職として事業運営を担う人が対象です。
他の在留資格(例:技術・人文知識・国際業務)とは異なり、経営そのものに関与する立場である必要があります。
主な対象者は次のとおりです。
- 日本で会社を設立し、代表取締役や役員として経営を行う人
- 海外企業が日本に支店を設立し、責任者として派遣される人
- 既存企業の経営部門で組織運営に携わる人
許可を受けるための主な条件
在留資格「経営・管理」を取得するには、法務省が定める条件を満たす必要があります。
主な基準は次の3つです。
① 日本国内に実体のある事務所を設けていること
事業を行うための拠点が必要です。バーチャルオフィスや自宅住所のみでは原則として認められません。
② 事業の規模が一定以上であること
「常勤職員を2名以上雇用」または「事業投資額が500万円以上」が目安です。
事業の継続性と安定性を確認するための要件で、形式的な会社設立を防ぐ目的があります。
③ 安定的・継続的な経営体制を有していること
事業計画や資金の出所が明確で、継続して事業を運営できることが求められます。
特に新規設立の場合は、事業計画書の実現性や資金の信頼性が重視されます。
改正①:常勤職員の雇用が義務化
「経営・管理」ビザで許可される活動は、経営判断や組織運営に関する業務に限られます。
たとえば以下のような活動が対象や営業所の責任者として全体を統括す理的な業務を担うした場合、経営・管理ビザではなく、他の在留資格(たとえば技術・人文知識・国際業務)に該当します。2025年(令和7年)10月に出入国在留管理庁が公表した改正により、「経営・管理」ビザの審査では常勤職員の雇用が新たに義務化されました。
申請者が経営する会社・事業所には、1人以上の常勤職員を雇用していることが条件となります。
対象となるのは、日本人、特別永住者、永住者、日本人・永住者の配偶者、または定住者です。
一方、他の在留資格(例:技術・人文知識・国際業務)で在留している外国人は、この常勤職員には含まれません。
この改正の目的は、「一人経営」や「登記だけの会社」など形式的な経営の排除です。
実際に雇用を行い、組織として継続的に運営している企業のみが、在留資格「経営・管理」の対象となります。
改正②:資本金・経歴・日本語力の要件が強化
今回の改正では、経営者としての信頼性と実務力を確保するため、複数の要件が明確に強化されました。
資本金の基準を3,000万円以上に引き上げ
法人の場合は「払込済資本金」、個人事業主の場合は「事業運営に必要な総投資額(事務所・人件費・設備費など)」が対象です。
資金的基盤が不十分な事業を防ぎ、安定的に運営できる体制を確認する目的があります。
経営経験・学歴要件の明確化
申請者は、経営または関連分野における修士・博士・専門職学位を取得しているか、
または3年以上の経営・管理経験を有する必要があります。
この経験には、在留資格「特定活動(起業準備)」期間も含まれます。
日本語能力の新設
申請者または常勤職員のいずれかが、日本語教育の参照枠B2レベル以上(JLPT N2相当)の日本語力を持つことが求められます。
- 日本語能力試験(JLPT)N2以上
- BJTビジネス日本語テスト400点以上
- 日本国内の大学・高校卒業者
が目安とされます。
さらに、経営者本人が日本に居住し、日常的に経営活動を行っているかどうかも確認されます。
海外を拠点とする“名義上の経営”は、今後の審査で厳しく判断されるでしょう。
改正③:事業計画書の専門家確認が義務化
改正では、申請時に提出する事業計画書の信頼性確認が新たに義務づけられました。
今後は、申請者自身が作成した事業計画をそのまま提出するのではなく、経営に関する専門知識を持つ第三者が内容を確認する仕組みが導入されます。
確認を行う専門家として認められているのは、
- 中小企業診断士
- 公認会計士
- 税理士
のいずれかです。
これらの専門家が、計画の具体性・合理性・実現可能性を評価したうえで、確認を受けた計画書をもとに申請を行います。この制度により、虚偽や実現性の低い事業計画での申請が防止され、信頼性の高い申請手続きが確立されることになります。
なお、弁護士や行政書士以外が官公署に提出する申請書類を報酬を得て作成する行為は、行政書士法違反となるおそれがあります。計画書の作成支援を依頼する際は、資格を持つ専門家に相談することが重要です。
まとめ
2025年(令和7年)の改正で、「経営・管理」ビザはより実体のある経営を重視する資格に変わりました。
常勤職員の雇用義務、3,000万円以上の資本金、経営経験・日本語力の確認、そして専門家による事業計画書の評価。これらの条件がそろって初めて、安定した経営者としての在留が認められます。
形式的な登記や短期的な活動ではなく、「日本で経営し、雇用を生み、継続的に社会と関わる姿勢」が重視される時代です。誠実な経営を行う外国人にとっては、信頼を得て長く日本で事業を続けるチャンスが広がります。
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