特定技能で広がる「やさしい日本語」とは?現場での活用法を解説

特定技能で働く外国人が増えるなか、「やさしい日本語」という言葉を耳にする機会が増えています。
これは、難しい表現や曖昧な言い回しを避け、外国人にも伝わりやすく工夫された日本語のことです。特定技能の受け入れ現場では、作業指示や安全管理、日常会話の場面で特に重要になります。

この記事では、やさしい日本語の基本と、特定技能の現場でどのように活用できるのかを解説します。また、外国人の定着や日本語教育との関係にも触れ、企業として取り入れる際のポイントを紹介します。

やさしい日本語とは?外国人と共に働くための共通言語

「やさしい日本語」とは、日本語を母語としない人にも理解しやすいように、
文法や表現を簡単にした日本語のことです。
もともとは災害時に外国人へ情報を伝えるために生まれましたが、
近年では、多文化共生社会のコミュニケーションツールとして企業や行政でも広がっています。

たとえば、

  • 「確認しておいてください」→「もう一度見てください」
  • 「移動していただけますか?」→「ここへ行ってください」
    というように、短く・直接的に言い換えることで、
    誤解を防ぎ、理解を助けることができます。

やさしい日本語は、単なる「やわらかい言葉」ではなく、
相手の理解力を尊重して伝えるための工夫なのです。

なぜ特定技能で「やさしい日本語」が重要なのか

特定技能の在留資格では、外国人が「特定技能評価試験」などで日本語力を証明しますが、そのレベルはおおむね日本語能力試験(JLPT)N4程度とされています。日常会話はできても、職場で使う専門用語や曖昧な指示は理解しにくい場合があります。

たとえば、

  • 「あとでやっておいて」
  • 「適当にまとめて」
    といった日本人同士なら通じる表現でも、外国人にとっては意味があいまいで、誤解を生むことがあります。

やさしい日本語を使うことで、

  • 作業ミスや安全事故の防止
  • 指示・報告のスムーズ化
  • ストレスや不安の軽減
    につながり、結果として職場の定着率の向上にも効果を発揮します。

職場でよくある課題と「やさしい日本語」の工夫例

特定技能の受け入れ現場では、言葉の壁が原因で小さな誤解やトラブルが起きることがあります。
特に、日本人が無意識に使っている敬語・曖昧な表現・専門用語は、外国人には難しい場合が多いです。

たとえば、「~しておいてください」や「なるべく早めに」という表現は、
文法的には正しくても、いつ・どのように行動すればよいかが伝わりづらいという特徴があります。
外国人から見れば「時間の指定がない」「具体的な行動がわからない」といった混乱を招きます。

現場では、次のような言い換えを意識するだけで、理解度が格段に上がります。

シーン日本人の表現やさしい日本語の例伝わりやすくするポイント
作業指示「確認しておいてください」「もう一度見てください」動作を明確にする
安全指導「気を付けて作業してください」「危ないです。ゆっくりしてください」危険の理由も添える
報告・連絡「進捗どう?」「今どこまで終わりましたか?」質問を具体的にする
会話・依頼「なるべく早めに」「10時までにお願いします」時間を具体的に伝える
注意・指導「それはちょっと違うね」「ここが違います。もう一度やってください」あいまいな否定を避ける

言葉だけでなく、「見て伝える」「聞いて確認する」ことも重要です。
たとえば、図や写真を使った説明書を用意したり、実際に手本を見せたりすることで、
理解のスピードと正確さが格段に向上します。

また、「はい」「大丈夫です」という返事が返ってきたとしても、本当に理解しているとは限りません。
文化的な背景から、「わからない」と言えない外国人も多くいます。
指示のあとに「やり方をもう一度見せてください」と頼むなど、理解を確認する“聞き返し文化”を社内で習慣づけることが大切です。

さらに、職場全体で「伝わる言葉」を意識するために、

  • 日報やチェックリストを日本語+英語・母語併記にする
  • やさしい日本語で書かれたマニュアルを共有する
  • 外国人社員に「わかりにくい日本語」をフィードバックしてもらう
    といった仕組みを作るのも効果的です。

やさしい日本語は、一方的に“教える”ものではなく、双方向の理解をつくる道具です。
日本人が伝え方を工夫し、外国人が学びながら働くことで、「わかる」「伝わる」「協力できる」環境が生まれます。

日本語教育との連携で外国人の定着を支える

やさしい日本語は、外国人にとって「聞き取りやすい日本語」であるだけでなく、学びやすい日本語でもあります。
職場でやさしい日本語を使うことで、外国人が日本語に触れる機会が増え、
自然に語彙力や理解力を伸ばすことができます。

特定技能の支援項目には、企業や登録支援機関による日本語教育の提供が含まれています。
たとえば、

  • オンライン学習や教材の紹介
  • 外部講師による社内レッスン
  • 学習時間の確保・補助制度の導入
    など、企業ができる取り組みは多様です。

やさしい日本語の導入と教育支援をセットで行うことで、「教える」と「使う」が循環し、外国人社員の成長と定着につながります。

企業が取り入れるときのポイントと始め方

まずは、現場で「伝え方を変える意識」を共有することが第一歩です。
難しい敬語や抽象的な表現を避け、短く・具体的に話すことを社員全体で意識しましょう。

また、「やさしい日本語」を社内文化として根づかせるために、

  • 社内で“やさしい言葉”を使うルールを設ける
  • 朝礼やミーティングでの言い換え練習を取り入れる
  • 登録支援機関や日本語教育の専門家に相談する
    といったステップが有効です。

やさしい日本語は、外国人社員のためだけではありません。
高齢社員や新人教育など、誰にとっても伝わりやすくなるという効果があります。
「伝わる日本語」を意識することは、組織全体のコミュニケーション力向上にもつながります。

まとめ

「やさしい日本語」は、外国人材のための特別な言葉ではなく、
誰もが気持ちよく働ける職場をつくる“共通言語”です。
特定技能の受け入れをきっかけに、企業が伝え方を見直すことは、
ミスの防止や定着促進だけでなく、チーム全体の信頼づくりにもつながります。
まずは、「難しい言葉をやさしく言い換える」ことから始めてみましょう。
小さな工夫の積み重ねが、外国人と日本人が共に成長できる職場をつくります。

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渡邉 圭史
人材ビジネス会社の一員として外国人雇用の推進に取り組んでいます。特定技能や技能実習制度、外国人労働者の受け入れについて、実務や日々の学びを通じて経験を積んでいます。このブログでは、外国人雇用に関する知識や最新情報、実際の現場で感じたことを分かりやすくお届けします。ぜひ気軽に読んでいただければと思います!