特定技能の在留外国人数が33万人を突破──制度5年で見えた成長と変化

2025年(令和7年)6月末時点で、特定技能の在留外国人数が33万6,196人に達しました(出入国在留管理庁速報値)。
制度開始から5年、外国人材の受け入れは着実に拡大しており、前年同期から約8万4,000人(+33.5%)の増加と、過去最大の伸びを記録しています。
特定技能2号の拡大や、技能実習制度からの移行促進など、制度運用の成熟期に入りつつあります。
本記事では、最新データに基づき、分野別・国籍別の推移とその背景、今後の展望をわかりやすく解説します。

全体推移:5年で33万人超、前年比33.5%増

2025年6月末時点で特定技能の在留外国人数は33万6,196人
制度開始直後の2019年末の1,621人からわずか5年で200倍超に増加しました。
特に2023年からの2年間で急増しており、制度の運用体制が整ったことを示しています。

上のグラフからもわかるように、制度発足当初は1万人規模に届かなかったものの、2021年以降は右肩上がりの増加を続けています。
特に2023〜2025年にかけては、半年ごとに5万人前後の増加というハイペース。

この急伸には、以下の要因が挙げられます。

  • 技能実習から特定技能への移行手続きの円滑化
  • 介護・製造業など、国内人材確保が困難な分野の需要増
  • 登録支援機関の増加による支援体制の強化
  • 特定技能2号拡大(9分野→16分野予定)による将来展望への期待

特定技能制度は、単なる外国人受け入れ制度ではなく、
「雇用・教育・定着」をセットで支える人材育成制度として定着しつつあります。

国籍別推移:ベトナム・インドネシアが全体の6割超

2025年6月末時点で、特定技能の在留外国人33万6,196人のうち、最も多いのはベトナム(14万8,486人・44.2%)です。

次いで、

  • インドネシア:6万9,537人(20.7%)
  • ミャンマー:3万5,640人(10.6%)
  • フィリピン:3万2,518人(9.7%)
  • 中国:2万204人(6.0%)
  • ネパール:9,381人(2.8%)
    が続きます。

この上位5カ国で全体の約9割を占めており、依然として東南アジアが中心です。
ベトナムの比率はやや低下したものの、インドネシアやミャンマーの伸びが顕著で、分散化の兆しも見られます。
出身国の多様化は、企業にとって「言語対応」「生活支援方法」の再設計を求める局面でもあります。

分野別推移:製造・介護・建設が主軸

分野別では、飲食料品製造業(84,892人・25.3%)が最も多く、
次いで介護(54,916人・16.3%)、工業製品製造業(51,473人・15.3%)、
建設(44,160人・13.1%)、外食業(36,281人・10.8%)が続きます。

上位7分野のうち、製造・介護・建設の3分野で全体の約45%を占めます。
特に介護は1年で約1.5倍に増加しており、特定技能2号の拡大対象にも含まれるなど、長期就労・キャリア形成の中心分野として注目されています。

一方で、外食業や農業も堅調に伸びており、季節要因や景気動向に左右されにくい“安定的な就労機会”を提供する産業へと変化しています。
今後は、製造・サービス両面での人材確保競争がさらに激しくなる見通しです。

地域別傾向:中部圏+都市部に集中

地域別では、愛知県(26,209人)が全国最多で、次いで東京都(約22,000人)、大阪府(約21,000人)が続きます。
他にも、埼玉・千葉・神奈川・福岡などの都市圏が上位を占め、製造業とサービス業の両方で外国人雇用が進む傾向が顕著です。

一方で、地方の農業・水産分野でも受け入れが広がりつつあり、地域による支援体制の差が課題として浮き彫りになっています。企業だけでなく、自治体・登録支援機関・教育機関が連携し、生活支援や地域共生の仕組みを整えることが重要です。

登録支援機関・企業の体制変化

登録支援機関の数は10,305件(令和7年6月末時点)に達し、前年同期比で約15%増となりました。
法人形態は、株式会社・合同会社が56.1%、中小企業協同組合が25.8%、行政書士事務所が6.5%を占めています。

登録支援機関の増加により、企業の支援体制が拡充され、外国人材の生活サポート・教育支援の質も徐々に改善傾向です。
特定技能制度の拡大に伴い、受け入れの「数」から「質」への転換が進みつつあります。

「量」から「質」へ。制度と企業が問われる次のステージ

特定技能制度は、受け入れ数の拡大段階を経て、質の向上を重視する局面に移行しています。
政府は2024年に「特定技能2号」の対象分野を大幅に拡大し、従来の建設・造船に加えて製造業全般や宿泊業なども含める方向で制度を再設計しています。

この見直しにより、特定技能外国人は無期限の在留や家族帯同が可能となり、
中長期的なキャリア形成を見据えた制度運用が始まりつつあります。
制度の目的も、単なる労働力確保から、外国人材が日本で生活し成長する共生制度へと転換しています。

今後、企業に求められるのは、採用数の拡大ではなく、受け入れ体制の質的強化です。教育・生活支援・キャリア支援を一体的に行う仕組みを構築し、外国人材の定着とスキル向上を両立させることが求められます。

特定技能制度の成熟度は、受け入れ企業の姿勢によって大きく左右されます。
今後の数年間は、制度を「持続可能な仕組み」として運用できるかが問われる時期になります。

まとめ

特定技能の在留外国人数は、制度開始から5年で33万人を突破。
制度は定着期に入り、国籍・分野ともに多様化が進んでいます。
特に製造・介護・建設の分野では、外国人材が不可欠な戦力として位置づけられつつあります。

一方で、数字の増加は制度の「広がり」を示すだけではありません。
日本企業がどのように外国人材を迎え入れ、共に成長していけるか。
制度の成熟に伴い、企業の姿勢がより問われる段階に入っています。

数字の先にあるのは、人と企業の関係です。
外国人材が長く働ける環境を整えることは、企業の持続的な競争力にも直結します。制度を理解し、現場で実践していくことが、これからの企業の強さを決めていきます。

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参考サイト

出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況」(令和7年6月末速報値)

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渡邉 圭史
人材ビジネス会社の一員として外国人雇用の推進に取り組んでいます。特定技能や技能実習制度、外国人労働者の受け入れについて、実務や日々の学びを通じて経験を積んでいます。このブログでは、外国人雇用に関する知識や最新情報、実際の現場で感じたことを分かりやすくお届けします。ぜひ気軽に読んでいただければと思います!