特定技能外国人の労災保険は加入必須?企業が知るべき義務と注意点

特定技能外国人を雇用するうえで、必ず確認しておきたいのが 「労災保険(労働者災害補償保険)」の扱い です。
労災保険は、すべての労働者が対象となる国の制度であり、特定技能外国人も例外なく適用されます。

特定技能は現場作業や体を使う職種が多いため、労災発生リスクが比較的高い傾向があります。労災への理解が不十分だと、事故時に企業側の対応が遅れたり、補償トラブルが発生する可能性もあります。

この記事では、「特定技能 × 労災保険」をテーマに、
基本・補償内容・よくあるトラブル・手続き・企業が注意すべき点 をわかりやすく整理して解説します。

特定技能と労災保険の基本関係

労災保険は、労働者が 業務中または通勤中に負ったケガ・病気・障害・死亡 を補償する国の保険制度で、企業が全額負担する仕組みになっています。
国籍は関係なく、労働者であればすべて加入対象となります。

特定技能1号・2号の外国人は、企業と雇用契約を結んで働く「労働者」に該当するため、当然ながら 労災保険の対象 です。

● 労災保険のポイント

  • 加入は“義務”であり、企業側の責任
  • 保険料は企業が100%負担(外国人本人の負担なし)
  • 非正規・パートタイム・短期契約でも対象
  • 雇用保険と異なり、労働時間での線引きはなし(週20時間の基準は関係ない)

特定技能は体力を伴う業種(外食・宿泊・製造・建設・農業など)が多いため、日本人以上に労災が発生しやすい場合もあります。

労災保険の適用範囲と補償内容

労災保険は、業務災害と通勤災害の両方を補償します。


【1】業務災害

仕事中に起きたケガ・疾病・障害・死亡が対象。
厨房での切創、フォークリフト作業中の事故、転倒、火傷など、特定技能の現場では起こりやすい事故が多く含まれます。

【2】通勤災害

自宅と職場の往復中の事故が対象。
自転車事故・電車での転倒・自動車事故などが典型例です。


【補償内容の一例】

  • 療養補償給付
    (治療費は自己負担ゼロ)
  • 休業補償給付
    ※給料の約60%相当を補填。さらに国の特別支給金(20%)が加わり、合計で約8割相当が支給されます
  • 障害補償給付
  • 遺族補償給付
  • 介護補償給付

特定技能外国人も日本人と全く同じ補償が受けられます。

特定技能でトラブルが多い労災ケース

特定技能特有の現場環境や働き方により、労災トラブルが起きるケースがあります。

① 日本語が十分に理解できず、危険作業の指示を誤解

→ 保護具を使わないまま作業してしまい事故につながるケース。

② 無理なシフト調整による疲労・過労

外食・宿泊・製造などは繁忙期の負荷が大きく、疲労による転倒・切創・過労事故が発生しやすい。

③ 通勤経路の申告漏れ

日本語での説明不足により、本人が「どこまでが通勤か」を理解できず、申告漏れのため補償手続きが遅れるケースがある。(ただし合理的な経路であれば支給対象)

④ 労災隠し

一部企業では外国人の不安や誤解を利用し、「自費で治療して」と言われる事例も。
→ 労災隠しは重大な法令違反。

⑤ 就業ルール(就業規則)を理解できていない

日本語のみのルール説明では理解が十分でない場合があり、事故防止につながらない。


※これらは制度上の問題ではなく、企業側の説明不足・教育不足が原因となりやすい点が特徴です。

労災発生時の企業が行う手続き

労災が発生した場合、企業は以下の流れで迅速に対応する必要があります。

【1】医療機関へ連れていく

「労災指定医療機関」であれば、労災と伝えるだけでOKですが、指定外医療機関は労災保険証明書(5号様式)を提出することで、本人の治療費負担はゼロ。

【2】労働基準監督署へ必要書類を提出

事故内容を記入し、労基署へ届け出る。
外国人本人が記入できない場合は企業側でサポートする。

【3】休業が発生したら休業補償の申請

休業日数に応じ、給付手続きを行う。

【4】再発防止のため、職場環境や手順を見直す

外国人材の特性に合わせた説明や教育が重要。


注意点

  • 労災なのに労災として扱わず、自費や健康保険で処理させるのは違法になりうる
  • 労災隠しは最も重い違反の一つ
  • 在留資格への影響はない(長期休業により雇用維持ができない場合は影響の可能性あり)

企業が知っておくべき労災防止と法令順守ポイント

労災リスクを減らすには、特定技能の特性を踏まえた体制づくりが不可欠です。

① やさしい日本語・多言語資料での安全教育

言語の壁が最大のリスク。
写真・動画・実地練習の組み合わせが効果的。

② 適切な保護具の支給と使用徹底

購入だけでなく “着用確認” が重要。

③ 通勤経路の説明・申請サポート

本人任せにせず、企業側で確認する。特に自転車通勤での事故は重大災害になりやすいため、交通安全教育も忘れずに

④ 無理なシフト・長時間労働を避ける

特に外食・製造業は繁忙期の負担が大きいため、事故につながりやすい。

⑤ 事故発生時の手続きを事前に共有

手順を説明しておくことで、外国人本人が不安を抱えずに報告できる。

まとめ

特定技能外国人を雇用する場合、労災保険は 例外なく適用される必須の制度 です。
業務中・通勤中の事故はすべて補償対象となり、補償内容は日本人と同じです。

一方で、特定技能は危険作業を伴う業種が多く、
日本語の理解度や文化の違いから 労災トラブルが起きやすい という特徴があります。

安全教育・就業ルールの説明・適切な保護具の使用・通勤経路の確認など、
企業側の体制整備が労災防止の鍵となります。

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渡邉 圭史
人材ビジネス会社の一員として外国人雇用の推進に取り組んでいます。特定技能や技能実習制度、外国人労働者の受け入れについて、実務や日々の学びを通じて経験を積んでいます。このブログでは、外国人雇用に関する知識や最新情報、実際の現場で感じたことを分かりやすくお届けします。ぜひ気軽に読んでいただければと思います!