深刻な人手不足が続くビルクリーニング業界では、外国人材の活用がますます重要になっています。2019年に創設された「特定技能制度」により、一定の日本語力と業務スキルを持つ外国人の受け入れが可能になり、特に技能実習経験者の多いベトナム人材に注目が集まっています。
さらに2023年には、これまで一部分野に限られていた「特定技能2号」が、ビルクリーニング分野にも拡大。在留期間の上限がなくなることで、長期的な雇用も現実味を帯びてきました。
本記事では、ベトナム人の特定技能人材の特徴や受け入れの流れ、成功事例、採用時の注意点まで、最新の情報をもとに詳しく解説します。
目次
なぜ今、ビルクリーニング業界でベトナム人材が注目されているのか?
日本では、高齢化の進行により国内人材の確保が難しくなっており、厚生労働省の資料によると、清掃業の有効求人倍率は全国平均を上回る水準で推移しています 。このような背景から、即戦力となる外国人材の受け入れが加速しており、その中でもベトナム人の特定技能人材が注目されています。

出典:出入国在留管理庁(資料一部加工)
ベトナム人材が選ばれる理由は大きく3つあります。
まず1つ目は、「若くて意欲的な労働力」であること。ベトナムの平均年齢は約33.2歳(2024年時点)と日本よりも若く、多くの応募者が20代前半~30代前半の働き盛りです 。特定技能制度を通じて来日するベトナム人は、来日前から日本語や専門技能の学習を積極的に行っており、高い就労意欲を持っています。
2つ目の理由は、「技能実習から特定技能へのスムーズな移行」です。ビルクリーニング分野は2019年に特定技能制度の対象となった比較的新しい業種ですが、ベトナム人技能実習生がすでに多く就労している実績があります。技能実習修了者は試験が免除され、スムーズに特定技能へ移行できるため、企業にとっても採用までのハードルが低くなっています。
最後に、ベトナムは日本との二国間協定を締結しており、国としても労働者派遣に前向きです。登録支援機関や送り出し機関との連携体制が整備されているため、制度的な安定性も高く、安心して採用活動を進めることができます 。
このように、人材の質・制度面・移行のしやすさという3つの観点から、ベトナム人の特定技能人材は、ビルクリーニング業界の“即戦力”として期待が高まっているのです。
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ビルクリーニング分野の採用条件
ビルクリーニング分野で特定技能1号の在留資格を取得するためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
- 技能試験の合格
公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会が実施する「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」に合格することが求められます。この試験は「学科試験」と「実技試験」の2部構成です。合格基準は各試験で60%以上の得点となっており、2024年10月~11月に実施された国内試験では合格率が84.9%と比較的高めです。 - 日本語能力の証明
日本語能力試験(JLPT)N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)に合格することが必要です。これにより、日常会話や業務上の基本的な日本語理解力があることを証明します。
なお、ビルクリーニング分野で技能実習2号を良好に修了した外国人については、上記の技能試験および日本語試験が免除され、特定技能1号への移行が可能です。
試験は日本国内だけでなく、ベトナムを含む海外でも実施されており、受験機会が広がっています。これにより、ベトナム人材の採用を検討する企業にとって、特定技能制度を活用した人材確保が現実的な選択肢となっています。
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雇用手続き・必要書類一覧
ビルクリーニング分野で特定技能人材を採用する際、企業は以下のステップと必要書類を把握し、適切に対応することが求められます。
1. 採用計画の立案と人材募集
まず、採用計画を立て、信頼できる人材紹介会社や送り出し機関を通じて候補者を募集します。面接を実施し、適切な人材を選定します。
2. 雇用契約の締結
採用が決定したら、労働条件を明記した雇用契約を締結します。契約内容は、候補者が理解できる言語で説明し、双方の合意を得ることが重要です。
3. 事前ガイダンスの実施
入国前に、業務内容や生活情報などを含む事前ガイダンスを対面またはオンラインで実施します。これは法務省の定める義務であり、書面やメールのみでの対応は認められていません。
4. 在留資格認定証明書の申請
必要書類を準備し、出入国在留管理庁に在留資格認定証明書の交付申請を行います。主な必要書類は以下の通りです。
- 申請書
- 技能試験および日本語試験の合格証明書
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
- 支援計画書
- 企業の登記事項証明書
- 納税証明書
申請から許可までには通常1〜3ヶ月を要します。
5. 必要な登録と協議会への加入
企業は、以下の登録と加入が必要です。
- 「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」の登録
- 「ビルクリーニング分野特定技能協議会」への加入(受け入れから4ヶ月以内)
これらは、制度の適正な運用と関係機関との連携を図るために義務付けられています。
6. 支援体制の整備
特定技能外国人に対して、以下の支援を提供する体制を整える必要があります。
- 住居の確保
- 生活オリエンテーションの実施
- 公的手続きへの同行
- 日本語学習の機会提供
- 相談・苦情対応
これらの支援は、企業が自社で行うか、登録支援機関に委託することが可能です。
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成功事例と現場の実態
日本のビルクリーニング業界では、少子高齢化と労働環境の厳しさが重なり、人手不足が慢性化しています。このような背景から、特定技能制度を活用した外国人材の採用が進められており、ベトナム人材の活躍が注目されています。
例えば、あるビルメンテナンス企業では、ベトナム人社員2名が特定技能2号評価試験に合格し、即戦力として活躍されています。下記記事では「両名とも来日して2年以内に独学で日本語能力試験最上位N1を合格している勉強家で、現場においても真面目に業務に取り組んできた結果です。」と述べられています。
引用:株式会社キョーエーメック
一方で、厚生労働省の調査によると、多くのビルクリーニング企業では、外国人材に対して明確なキャリアパスを提示できていないのが実態です。そのため、外国人材の定着やスキルアップを図るためには、企業側の体制整備が求められています。
このような成功事例や課題を踏まえ、ベトナム人特定技能人材の採用を検討する企業は、単なる労働力としてではなく、将来のリーダー候補としての育成を視野に入れた採用戦略を構築することが重要です。
採用する際の注意点と法的留意事項
ビルクリーニング分野でベトナム人の特定技能人材を採用する際、企業は以下の法的要件と実務上の注意点を理解し、適切に対応することが求められます。
1. 雇用形態と労働時間の確保
特定技能制度では、直接雇用かつフルタイム勤務が原則とされています。具体的には、週5日以上、年間217日以上、週30時間以上の勤務が必要です。しかし、ビルクリーニング業務は早朝や深夜の短時間勤務が多く、フルタイムの労働時間を確保するのが難しい場合があります。このため、複数の現場を掛け持ちさせるなどの工夫が必要となります。
2. 同等以上の報酬と待遇
特定技能外国人には、日本人と同等以上の報酬を支払うことが義務付けられています。これは、基本給だけでなく、時間外手当、深夜手当、休日手当なども含まれます。また、社会保険への加入や有給休暇の付与など、労働条件全般において日本人と同等の待遇を提供する必要があります。
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3. 支援体制の整備
企業は、特定技能外国人に対して、生活支援や相談対応などの支援体制を整備する義務があります。これには、住居の確保、生活オリエンテーションの実施、公的手続きへの同行、日本語学習の機会提供、相談・苦情対応などが含まれます。これらの支援は、企業が自社で行うか、登録支援機関に委託することが可能です。
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4. 協議会への加入義務
2024年6月15日以降、ビルクリーニング分野で特定技能外国人を初めて受け入れる企業は、在留申請前に「ビルクリーニング分野特定技能協議会」への加入が義務付けられています。加入審査には1か月程度を要するため、早めの手続きが推奨されます。
5. 労働条件の明示と契約内容の遵守
雇用契約書や労働条件通知書は、外国人労働者が理解できる言語で作成し、内容を十分に説明することが求められます。また、契約内容を遵守し、労働条件の変更がある場合は、適切な手続きを経て変更を行う必要があります。
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これらの法的要件と注意点を遵守することで、ベトナム人特定技能人材の円滑な採用と定着が可能となります。
まとめ
ベトナム人の特定技能人材は、ビルクリーニング業界の深刻な人手不足を補う有力な戦力です。試験制度や在留資格の要件も整備されており、現場では責任ある立場で活躍する例も見られます。ただし、採用にはフルタイム勤務や日本人と同等以上の待遇、支援体制の整備、協議会加入など法的な要件を満たす必要があります。
これらを理解し、受け入れ体制を整えることで、ベトナム人材の定着と戦力化が実現します。今後の持続的な人材確保に向け、制度を正しく活用することが鍵です。
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