厚生労働省は令和7年1月、「外国人技能実習生又は特定技能外国人を使用する事業場に対する監督指導・送検等の状況(令和6年)」 を公表しました。令和6年は全国 5,750 事業場に対し監督指導が行われ、そのうち 4,395 事業場(76.4%)で労働基準法違反が確認されています。
特に特定技能で多い宿泊・外食・製造・建設の分野では、安全配慮義務違反、割増賃金の未払い、健康診断後の意見聴取義務違反など、現場運用に直結する課題が多数指摘されました。
本記事では、厚労省資料に基づき、受入れ企業に対して行われた監督指導の実態と主な違反内容、業種ごとの傾向、企業が今すぐ改善すべき点をわかりやすく解説します。
目次
特定技能制度における監督指導とは
特定技能外国人を受け入れる企業は、労働基準法や労働安全衛生法の遵守が求められます。
監督指導とは、行政が企業の労働環境を確認し、外国人材が適切な条件で働けているか、安全衛生の措置が確実に実施されているかをチェックするためのものです。
監督指導は以下の目的で実施されます。
- 違法な長時間労働・割増賃金未払いを防止
- 安全配慮義務の徹底(事故防止・危険作業の教育)
- 労働条件通知書と実際の労働条件の整合性を確認
- 外国人への説明不足による不利益防止
つまり、今回の監督指導の中心は「登録支援機関」ではなく、外国人を雇用している企業の労働環境が焦点となっています。
令和6年度に実施された監督指導の概要
厚生労働省によると、令和6年は 5,750事業場で監督指導が行われ、
4,395事業場(76.4%)で労働基準関係法令の違反が確認されました。
7割超という高い違反率は、特定技能を受け入れる企業の労務管理に依然として課題が多いことを示しています。
監督指導は 立入調査・呼出監督・書面監督 などの方法で実施され、労働時間、賃金、安全衛生、休憩の取り扱いなど、日常の業務運用が適切かどうかが重点的に確認されます。安全配慮や割増賃金の支払い状況が重要なチェックポイント となります。
また、労働災害の増加や長時間労働の問題を背景に、宿泊・外食・製造・建設などの分野では指導が強化されました。違反の悪質性が高い事業所については 7件が送検されており、行政が外国人労働者の保護を一層重視していることがわかります。
主な違反内容
特定技能を含む外国人を使用する事業場で特に多かった違反は以下のとおりです。
■ 1位:安全基準違反(24.0%)
- 危険作業の教育不足
- 保護具(手袋・保護帽)の未支給
- 操作手順の不備
- 安全措置の未実施
製造業・建設業で特に多く、命に関わる違反である点が特徴です。
■ 2位:割増賃金の未払い(17.2%)
- 残業代の未払い
- 深夜割増の不払い
- 休日労働の割増未払い
- 不適切な固定残業代制度
労働量が多い業界 × 外国人労働者という構造が影響しています。
■ 3位:健康診断後の意見聴取義務違反(16.7%)
- 健康診断を受けさせていない
- 受けさせても結果を説明していない
- 医師の意見聴取や必要措置を行っていない
これは外国人労働者の健康維持に重要な項目です。
■ その他の主な違反
- 労働条件明示違反(15.4%)
- 賃金の不払いや賃金控除の不備(12.2%)
- 就業規則の未整備(11.1%)
- 労働時間・休憩の管理不備(10.3%)
業種別に見る監督指導の傾向
令和6年の監督指導では、特定技能の多い主要業種での違反率が高い傾向にありました。
以下は、厚労省の資料から抽出した業種別の違反率です。
- 食料品製造業:75.0%
- 社会福祉施設:76.1%
- 工業製品製造業:76.6%
- 農・畜産:78.7%
- 建設業:81.1%(最も高い)
業種を問わず共通しているのは、「人手不足による業務の属人化」や「外国人への説明不足」 がトラブルの背景にある点です。
とくに特定技能は現場に即戦力として入るため、作業手順・危険ポイント・労働時間管理について、日本人と同じ基準で徹底した運用が求められます。
このように、違反率の差には業種ごとの作業特性だけでなく、
外国人材を迎える体制の成熟度 も影響していることが読み取れます。
受入企業が今すぐ見直すべきポイント
監督指導を踏まえ、企業が見直すべきポイントは以下の通りです。
安全衛生教育の徹底
- 危険作業マニュアルを整備
- 母語またはやさしい日本語で説明
- 事故発生時の対応ルールを事前共有
- 保護具の支給・使用の徹底
労働時間と割増賃金の適正管理
- タイムカード・アプリによる記録
- 深夜・休日・時間外の割増を適法に支払い
- 36協定の締結・届出
- シフトの実態との整合性チェック
労働条件説明の徹底と書面管理
- 労働条件変更は書面で説明
- 説明は母語/やさしい日本語
- 在留資格の活動内容との整合性チェック
監督指導に備えた記録整備
- 安全教育の記録
- 労働時間管理、給与計算のデータ
- 外国人との面談記録
- トラブル事例の共有と改善ルールの策定
まとめ
令和6年の監督指導では、「外国人を受け入れている事業所」の労働環境に焦点が当てられ、安全配慮義務違反・割増賃金未払い・労働時間管理の不足が特に多く指摘されました。
特定技能制度の適正運用には、書面だけでなく現場での具体的な支援と管理が欠かせません。安全教育・労働時間・賃金計算・説明義務など、外国人が安心して働ける環境づくりが、企業のリスク軽減と人材定着につながります。
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