新制度「育成就労制度」とは?受入れ企業が知っておくべき基礎知識

2027年4月から新たに始まる「育成就労制度」は、これまで外国人材の受入れを担ってきた技能実習制度に代わる仕組みとして注目されています。制度の目的は、人手不足が深刻な分野において、外国人材が安心して働きながら技能を身につけ、キャリアを形成できるようにすることです。企業にとっては、労働力確保だけでなく、外国人社員の定着や育成につながる制度となる一方、新たな義務や責任を理解して対応する必要があります。本記事では、育成就労制度の概要や技能実習との違い、企業に求められる準備事項を解説します。

育成就労制度創設の背景と目的

育成就労制度は、従来の技能実習制度に代わる外国人材受入れの新しい枠組みとして創設されました。背景には、技能実習制度が「人材育成」という名目でありながら、実際には人手不足対策として利用されていたことや、労働環境の不備、制度上の不透明さなどが指摘されていた点があります。これらの課題を解消し、外国人材が適切な労働環境で技能を習得できるようにするために、制度改革が進められました。育成就労制度では「育成」という言葉の通り、外国人材を一時的な労働力としてではなく、将来的に特定技能人材へとステップアップできる仕組みが整えられています。つまり、企業にとっては単なる労働力確保だけでなく、長期的に戦力化できる人材を育てるチャンスであり、外国人本人にとっては持続的なキャリア形成を実現できる制度です。

制度の基本概要と対象分野

育成就労制度は、一定の技能や知識を身につけることを目的とした在留資格に基づく就労制度です。在留期間は基本的に3年間とされ、その後、要件を満たせば特定技能制度へ移行できる仕組みになっています。対象分野は、介護、農業、建設、製造業、外食など、人手不足が特に深刻な16分野が中心となります。また、企業が受入れる際には、法令遵守、外国人労働者への適正な処遇、日本人と同等以上の報酬を保障することが義務づけられます。さらに、外国人材の生活支援や教育も制度の柱とされており、制度を遵守しながら、日本語教育や生活相談など幅広いサポートを提供することが求められます。制度の狙いは、単なる労働力確保ではなく、持続的に日本社会で活躍できる外国人材を育てることにあります。

技能実習との違いと移行のポイント

育成就労制度は技能実習制度を引き継ぎつつ、大きな改革が行われています。主な違いと移行のポイントを整理すると以下のとおりです。

  • 目的の違い
    • 技能実習:途上国への技能移転が名目
    • 育成就労:外国人材の育成と日本でのキャリア形成が目的
  • キャリアの連続性
    • 技能実習:特定技能への移行は限定的
    • 育成就労:特定技能へのスムーズな移行を制度的に設計
  • 受入れ企業の姿勢
    • 技能実習:短期的な労働力補充の色合いが強い(実態として)
    • 育成就労:長期的な戦力化を前提とした受入れ
  • 注意点
    • 契約、支援体制、報告義務が従来より厳格化
    • 技能実習と同じ感覚で運用すると不備が生じる可能性あり

受入れ企業に求められる義務と責任

育成就労制度の下で外国人材を受け入れる企業には、法令遵守に加えて、さまざまな義務と責任が課せられます。まず、雇用契約においては、日本人労働者と同等以上の報酬を支払うことが必須です。また、労働条件を明確に提示し、社会保険や税務手続きも適正に行う必要があります。さらに、外国人材が安心して生活できるように、住居の確保、日本語教育の提供、日常生活や地域との関わりを支援することも求められます。これらの支援は、「単独型育成就労」または「監理型育成就労」によって対応する企業が異なります。重要なのは、外国人材が安心して定着できる環境を整えることであり、それが結果的に企業の人材不足解消や戦力強化につながります。支援を怠った場合には行政指導や受入れ停止のリスクもあるため、制度の理解と実行が欠かせません。

制度導入による企業へのメリットと課題

育成就労制度を導入する企業には、多くのメリットがある一方で、解決すべき課題も存在します。

  • メリット
    • 人材不足の解消につながる
    • 特定技能人材へと成長する外国人を育成可能
    • 生活支援を通じて社員の満足度・定着率が向上
    • 多文化共生やダイバーシティ経営の推進に貢献
  • 課題
    • 日本語教育や生活支援など追加的なコストが発生
    • 支援体制をどう整えるかが実務上の課題
    • 登録支援機関との連携方法を明確化する必要あり

企業は制度の趣旨を理解したうえで、支援体制を計画的に構築することが、メリット最大化と課題最小化のカギとなります。

まとめ

育成就労制度は、従来の技能実習制度に代わり、外国人材の「育成」と「定着」を重視した新しい仕組みです。制度の目的は、人手不足を補うだけでなく、外国人が日本で安定して働きながら成長できる環境を整えることにあります。企業にとっては、単なる労働力確保ではなく、長期的な人材育成の観点で制度を活用することが重要です。そのためには、適正な雇用契約、生活支援、日本語教育の提供といった義務をしっかり果たす必要があります。制度を正しく理解し、適切に対応できれば、企業にとっても外国人材にとっても大きなメリットをもたらす制度となるでしょう。

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渡邉 圭史
人材ビジネス会社の一員として外国人雇用の推進に取り組んでいます。特定技能や技能実習制度、外国人労働者の受け入れについて、実務や日々の学びを通じて経験を積んでいます。このブログでは、外国人雇用に関する知識や最新情報、実際の現場で感じたことを分かりやすくお届けします。ぜひ気軽に読んでいただければと思います!