外国人雇用で使える助成金まとめ|企業が知っておきたい活用ポイント

外国人雇用を進める企業にとって、「採用コスト」「教育体制」「定着支援」は大きな課題です。
こうした負担を軽減するために活用できるのが各種の雇用関連助成金制度です。

助成金というと「外国人は対象外なのでは?」と誤解されることがありますが、
実際には、特定技能や技術・人文知識・国際業務などの在留資格を持つ外国人も対象となる制度が多数存在します。
本記事では、外国人雇用で活用できる主要な助成金の概要と、
申請時の注意点、企業が得られる効果についてわかりやすく解説します。

外国人雇用における助成金制度の基本

助成金とは、厚生労働省や地方自治体が雇用・人材育成・職場定着を目的として交付する支援金のことです。
返済の必要がなく、適正な条件を満たしていれば中小企業でも活用できます。

外国人雇用においても、日本人と同じ「雇用保険被保険者」であれば基本的に対象となります。
つまり、在留資格が「就労可能」であり、労働契約を締結している外国人労働者であれば、特定技能・技人国(技術・人文知識・国際業務)・永住者なども対象に含まれます。

ただし、在留資格「技能実習」は教育目的の制度のため、助成金対象外となるケースがほとんどです。
特定技能や一般雇用と区別して考えることが重要です。

外国人雇用で活用できる主な助成金の種類

外国人を雇用する企業が活用しやすい助成金は、主に「人材確保」「教育訓練」「職場定着支援」に関連するものです。

主な助成金例(2025年時点)

助成金名対象となる取組内容支給額・内容(目安)
人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)労働環境改善・外国人受入体制整備最大100万円程度
特定求職者雇用開発助成金雇用保険加入の外国人を新規雇用した場合1人あたり最大60万円
キャリアアップ助成金有期雇用から無期・正社員化への転換支援最大72万円
人材開発支援助成金社員研修・OJT・日本語教育などを実施費用の最大75%を助成

これらの制度は、外国人雇用そのものを直接支援するものではなく、「雇用するすべての労働者を対象とした制度」の中に外国人も含まれるという仕組みです。

地方自治体でも独自の支援があります。
たとえば愛知県・大阪府などでは、「外国人材受入促進助成」など地域独自の補助金が整備されています。

助成金の対象となる企業要件と注意点

助成金を受けるためには、企業が一定の条件を満たしている必要があります。
代表的な要件は以下のとおりです。

  • 雇用保険適用事業所であること
  • 対象となる外国人労働者を雇用保険に加入させていること
  • 労働保険料・社会保険料を適正に納付していること
  • 過去に不正受給・未納・重大な法令違反がないこと

特に注意したいのは、助成金は「後払い(事後支給)」であるという点です。
計画書の提出や研修の実施など、事前準備を行わないと申請できない制度もあります。

また、外国人の場合は在留資格・雇用契約書の内容・社会保険加入の有無など、
法令遵守状況が審査で厳しくチェックされます。

助成金申請の流れと必要書類

助成金の申請は、原則として「事前計画の提出 → 実施 → 実績報告 → 支給申請」という流れで行われます。
制度によって提出先や様式は異なりますが、基本的な手順は次のとおりです。

申請の流れ(一般的なケース)

  1. 対象となる助成金を確認
     まずは厚生労働省が公表している公式ページで、外国人雇用に関する助成金制度を確認しましょう。

  厚生労働省「外国人の雇用に関する助成金」

 このページでは、外国人労働者の雇用促進・教育訓練・職場環境整備を目的とした
 以下のような助成制度が紹介されています。

 - 人材確保等支援助成金:外国人を含む労働者の働きやすい職場環境を整備した企業を支援
 - キャリアアップ助成金:有期雇用から無期・正社員へ転換する取組に対して支給
 - 人材開発支援助成金:日本語教育や業務スキルの研修実施に対して支援
 - 職場定着支援助成金:離職率低下・定着支援のための制度導入を支援

 これらの制度は、外国人だけを対象にしたものではなく、「雇用保険に加入しているすべての労働者」を対象としています。
 つまり、在留資格が「就労可能」であり、雇用契約に基づく勤務を行っていれば、
 外国人でも日本人と同様に申請対象となります。

  1. 事前計画書の提出(必要な場合)
     キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金などでは、実施前に「計画届」の提出が必要   です。計画書を提出せずに取組を始めてしまうと支給対象外になるため注意が必要です。
  2. 実施・雇用・業務内容の遂行
     たとえば、特定技能(外食分野)で受け入れている場合、
     雇用契約で定めた業務内容が外食業務に関連している必要
    があります。
     助成金の目的に沿った職務内容・就労環境であることが確認される点に注意しましょう。
  3. 実績報告書の提出
     計画どおりの雇用や職場改善が実施されたことを証明するため、
     雇用契約書、出勤簿、給与台帳、写真や研修記録などの証拠資料を添付します。
  4. 審査・支給決定通知の受領
     書類審査を経て支給決定通知が発行されます。
     支給までには通常1〜3か月程度かかります。

提出書類の一例

  • 事業計画書・雇用契約書
  • 在留カードの写し
  • 雇用保険被保険者資格取得届
  • 給与明細・勤務実績表
  • 職場改善・教育訓練を行った場合の実施記録

助成金の審査では「法令遵守」「雇用契約の整合性」「社会保険加入状況」などが厳しく確認されます。特に外国人雇用では、在留資格の活動内容と助成金の目的が一致しているかが重要です。

事例紹介:愛知県の「外国人材受入促進助成金」

愛知県では、企業の外国人受入体制整備を支援する「外国人材受入促進助成金」が実施されていました(※令和7年度の受付は終了)。この制度では、外国人材の生活支援体制や日本語教育環境の整備、文化理解研修の実施費用などに対して助成が行われました。

詳細: 愛知県「外国人材受入促進助成金」

このように、国の助成金とあわせて、地方自治体でも外国人雇用を後押しする支援制度が整備されています。企業は所在地の自治体サイトも確認し、自社に最適な制度を活用するとよいでしょう。

助成金活用がもたらす外国人定着への効果

助成金を効果的に活用することで、外国人雇用は単なる「人手確保」から「組織の成長戦略」へと変わります。

たとえば、人材開発支援助成金を使って日本語研修や安全教育を実施すれば、
職場内での意思疎通が円滑になり、離職率の低下につながります。
また、キャリアアップ助成金を活用して正社員化を進めれば、外国人材のモチベーション向上と長期定着を同時に実現できます。

さらに、助成金を活用した教育投資は「人材育成コストの可視化」にも効果的です。
助成対象経費を整理することで、研修・教育にかかる実費を把握でき、
企業としての人材育成PDCA(計画→実行→評価→改善)を確立するきっかけにもなります。

まとめ

外国人雇用における助成金制度は、「対象外」と思われがちですが、実際には多くの制度が日本人と同じ条件で活用可能です。大切なのは、制度の趣旨を理解し、雇用保険・社会保険の適正加入など基本的な法令遵守を徹底することです。

助成金を「制度を活かす経営施策」として取り入れれば、外国人材の定着や育成、ひいては企業全体の安定した人材戦略につながります。

Link Asiaでは、特定技能や技人国など在留資格ごとに、どの助成金をどのように活用できるかを企業様に合わせてご提案しています。

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渡邉 圭史
人材ビジネス会社の一員として外国人雇用の推進に取り組んでいます。特定技能や技能実習制度、外国人労働者の受け入れについて、実務や日々の学びを通じて経験を積んでいます。このブログでは、外国人雇用に関する知識や最新情報、実際の現場で感じたことを分かりやすくお届けします。ぜひ気軽に読んでいただければと思います!