日本で暮らす外国人は年々増加しており、企業にとっても外国人材は欠かせない存在となっています。一方で、外国人材が日本でどのようなことに困り、どのような支援を求めているのかを正しく理解できている企業は多くありません。
こうした状況を把握するため、出入国在留管理庁は毎年「在留外国人に対する基礎調査」を実施しています。調査では、日本語学習や情報収集、医療・保険制度、災害対応、相談体制など、外国人が日本で生活するうえで感じている課題や要望がまとめられています。
今回は、令和7年度に公表された調査結果をもとに、企業が知っておきたいポイントを解説します。
目次
在留外国人に対する基礎調査とは?
「在留外国人に対する基礎調査」は、外国人との共生社会の実現に向けて、在留外国人の生活実態やニーズを把握するために出入国在留管理庁が実施している調査です。
令和7年度調査では、全国の在留外国人を対象に実施され、8,874人から回答が寄せられました。調査内容は、
- 日本語学習
- 情報収集
- 医療・保険制度
- 災害時の対応
- 相談体制
- 年金制度
- 子育て
など多岐にわたります。
外国人材を受け入れる企業にとっては、「外国人が何に困っているのか」を知ることができる貴重な資料といえるでしょう。
日本語学習への意欲は高いが、学習環境には課題も
調査によると、「現在日本語を学んでいる」と回答した人は37.3%、「現在は学んでいないが過去に学んでいた」が49.6%となっており、約87%の外国人が日本語学習経験を持っています。
この結果から分かるのは、多くの外国人が日本語を学ぶ必要性を理解し、実際に学習へ取り組んでいるということです。
一方で、日本語学習に関する課題も多く挙げられています。
主な困りごとは、
- 日本語教室や語学学校の受講料が高い
- 無料の日本語教室が近くにない
- 都合のよい時間帯に利用できる教室がない
- 日本語を学べる場所やサービスの情報が少ない
- 学んだ日本語を活かす機会がない
などでした。
企業側では、「日本語ができないから仕方ない」と考えるのではなく、職場で日本語を学び、使う機会をつくることも重要です。
特に特定技能外国人の場合、日本語能力は業務理解や定着率にも大きく影響します。職場内でのコミュニケーション支援や、やさしい日本語の活用などが今後ますます重要になるでしょう。

出展:出入国在留管理庁「令和7年度 在留外国人に対する基礎調査-調査の概要-」
情報収集や相談体制への不安が依然として大きい
調査では、外国人が生活情報をどのように入手しているかについても調査されています。
近年はSNSやインターネットを通じて情報を収集する人が増えている一方で、
- どこから正しい情報を得ればよいか分からない
- 行政制度の情報が見つけにくい
- 災害時の情報収集に不安がある
- 相談先が分からない
といった課題も多く挙げられています。
特に災害に関する項目では、
- 信頼できる情報源が分からなかった
- 避難場所が分からなかった
- 多言語での情報提供が不足していた
- 相談できる場所が分からなかった
という回答が見られました。
また、相談に関する自由記述では、
- 多言語で相談できる窓口が欲しい
- 税金や保険制度について相談したい
- 在留資格手続きが複雑で分かりにくい
といった意見も寄せられています。
外国人材にとって、日本語がある程度理解できても、日本独特の制度や行政手続きは非常に複雑です。
そのため、企業や登録支援機関が「情報を提供して終わり」ではなく、「理解できるまでサポートする」ことが重要になっています。
医療・保険・年金制度の理解不足が大きな課題
今回の調査で特に目立ったのが、医療・保険・年金制度に関する不安です。
自由記述では、
- 日本の税金や保険制度を分かりやすく説明してほしい
- 医療や保険について気軽に相談できる窓口が欲しい
- 医療機関で言葉が通じず困った
- 多言語対応の資料や医療通訳が必要
といった声が数多く寄せられています。
また年金については、
「来日後に制度説明を受けなかったため、数年後に未納分をまとめて請求された」
という実体験も紹介されています。
日本人にとっても社会保険や年金制度は複雑ですが、外国人材にとってはさらに理解が難しい制度です。
企業側が十分な説明を行わなかった結果、
- 社会保険への誤解
- 保険料への不満
- 年金制度への不信感
につながるケースもあります。
採用時や入社後のオリエンテーションにおいて、保険や年金制度を丁寧に説明することは、外国人材の安心感や定着率向上にもつながるでしょう。

出展:出入国在留管理庁「令和7年度 在留外国人に対する基礎調査-調査の概要-」
調査結果から見える企業と登録支援機関の役割
今回の調査から見えてくるのは、外国人材が求めているのは単なる「翻訳」だけではないということです。
本当に必要とされているのは、
- 日本語学習のサポート
- 制度理解の支援
- 情報提供
- 相談体制の整備
- 職場でのコミュニケーション支援
です。
例えば、
- 雇用契約書
- 就業規則
- 社会保険関係書類
- 安全衛生マニュアル
- 社内ルール
などを翻訳するだけではなく、その内容を理解できるよう説明することも重要です。
また、外国人材だけではなく、日本人社員側への理解促進も欠かせません。
文化や価値観の違い、宗教上の配慮、日本語能力の個人差などを職場全体で理解することで、トラブル防止や定着率向上につながります。
今後は外国人本人への支援だけでなく、「受け入れる職場側への支援」も重要なテーマになっていくでしょう。
まとめ
入管庁が公表した「令和7年度 在留外国人に対する基礎調査」では、日本語学習、情報収集、相談体制、医療・保険制度の理解など、外国人材が日本で生活するうえで抱えるさまざまな課題が明らかになりました。
特に今回の調査からは、「制度が存在すること」と「制度を理解して利用できること」は別問題であることが見えてきます。
企業に求められるのは、採用後の就労管理だけではありません。
外国人材が安心して働き続けられるよう、
- 日本語学習の支援
- 社会保険や年金制度の説明
- 多言語での情報提供
- 相談体制の整備
- 職場内の理解促進
といった取り組みも重要になります。
Link Asiaでは、登録支援機関として特定技能外国人への支援だけでなく、雇用契約書や社内資料の翻訳、生活制度の説明サポート、日本人社員向けの異文化理解研修なども行っています。
外国人材の採用後の定着や職場づくりに課題を感じている企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。















