特定技能外国人を採用するとき、「労働条件通知書は日本人と同じように必要?」「特定技能の雇用条件書を作れば、労働条件通知書は必要ない?」と迷う企業担当者もいるのではないでしょうか。
特定技能外国人にも日本の労働関係法令が適用されるため、労働契約を締結する際には、労働基準法に基づいて賃金や労働時間などの労働条件を明示する必要があります。
一方、特定技能制度では、出入国在留管理庁が参考様式として「雇用条件書」を用意しています。労働条件通知書と記載項目が重なる部分もありますが、制度上の位置付けは同じではありません。
この記事では、特定技能外国人の労働条件通知書をテーマに、労働条件として明示する内容や雇用条件書との違い、作成・変更時に企業が注意したいポイントを解説します。
特定技能外国人にも労働条件の明示が必要
特定技能外国人を雇用する場合も、労働基準法をはじめとする日本の労働関係法令が適用されます。
労働基準法第15条では、使用者が労働契約を締結する際に、賃金や労働時間など一定の労働条件を労働者へ明示することを義務付けています。外国人だから口頭で簡単に説明すればよいというわけではありません。
一般的には労働条件通知書などを用いて明示します。一定の事項については書面の交付が原則ですが、労働者が希望した場合には、要件を満たすFAXや電子メール等による明示も認められています。
また、2024年4月から労働条件明示のルールが改正され、すべての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時には、就業場所・従事する業務の「変更の範囲」についても明示が必要となりました。
特定技能外国人を採用する場合も、まずは一人の労働者として、最新のルールに沿って労働条件を適切に明示することが基本です。
労働条件通知書には何を記載する?
労働条件の明示では、本人が「どこで、どのような条件で働くのか」を具体的に確認できるようにする必要があります。
契約期間や就業場所、従事する業務、始業・終業時刻、休憩、休日・休暇、賃金、退職に関する事項などが代表的です。有期労働契約の場合には、契約更新に関する事項や更新上限の有無・内容など、契約形態に応じて必要となる項目にも注意しましょう。
特定技能外国人の場合は、これらに加えて、記載した仕事内容と在留資格「特定技能」で認められている業務との整合性も重要です。
例えば、書類には特定技能の対象業務を記載しているにもかかわらず、実際には対象範囲から外れた仕事を中心に担当させるといった運用は避けなければなりません。
労働条件通知書は採用時に形式的に作成するものではなく、実際の雇用条件を正確に反映させることが大切です。
労働条件通知書と特定技能の「雇用条件書」は何が違う?
特定技能外国人の採用で混同しやすいのが、「労働条件通知書」と「雇用条件書」です。
労働条件通知書は、労働基準法に基づく労働条件の明示に一般的に使用される書面です。
一方、特定技能の「雇用条件書」は、出入国在留管理庁が参考様式第1-6号として用意している特定技能手続き用の書類です(入管庁では参考様式第1-5号「特定技能雇用契約書」とセットで作成します)。
雇用条件書にも、雇用契約期間、就業場所、業務内容、労働時間、休日、休暇、賃金、退職など、労働条件通知書と重なる項目が多くあります。
入管庁の「雇用条件書」は、労働基準法で義務付けられている明示事項をカバーする形式になっているため、実務上は「雇用条件書」を交付することで「労働条件通知書」を兼ねる運用が可能です。
ただし注意したいのは、一般的な社内フォーマットの「労働条件通知書」だけを作成して済ませてしまったり、特定技能特有の記載項目や母国語併記などを漏らしてしまう点です。「自社の労働条件通知書があるから入管の様式は不要」と判断せず、特定技能制度の要件(参考様式)を満たした形で適切に取り交わすことが重要です。
特定技能ならではの労働条件で注意するポイント
特定技能外国人の労働条件を設定するときは、一般的な労働条件の明示に加えて、特定技能制度で定められた雇用契約の基準にも注意が必要です。
代表的なのが報酬額です。特定技能外国人の報酬額は、同等の業務に従事する日本人労働者の報酬額と同等以上であることが求められます。外国人であることを理由に低い報酬を設定することは認められません。
また、所定労働時間についても、特定技能外国人の所定労働時間が、受入れ企業で雇用される通常の労働者の所定労働時間と同等であることが求められています。
さらに、特定技能の雇用条件書については、外国人本人が十分に理解できる言語で作成し、本人が内容を十分に理解したうえで署名することが求められています。
単に書類に署名をもらうのではなく、賃金や勤務時間、休日、仕事内容などを本人が理解した状態で雇用を開始できるようにすることが重要です。
労働条件通知書を作成・変更するときの注意点
労働条件通知書を作成するときは、労働基準法上の明示事項だけでなく、特定技能の雇用条件書や実際の雇用契約との間に矛盾がないか確認しましょう。
例えば、労働条件通知書と特定技能の申請関係書類で、勤務地や業務内容、賃金などが異なっていれば、内容の確認や修正が必要になります。
採用後に就業場所や業務内容、賃金などを変更する場合にも注意が必要です。特定技能外国人の雇用契約内容(賃金・業務内容・就業場所など)に変更が生じた場合、変更が発生した日から14日以内に地方出入国在留管理局へ「特定技能雇用契約変更届出」を提出する義務があります。
特に業務内容を変更する場合は、変更後の仕事がその外国人に認められている特定技能の業務範囲に含まれているかも必ず確認しなければなりません。 「本人が了承しているから変更してよい」と考えるのではなく、労働関係法令と特定技能制度の両面から確認し、労働条件通知書・雇用条件書・実際の勤務条件を常に一致させておくことが大切です。
まとめ
特定技能外国人にも日本の労働関係法令が適用されるため、採用時には労働基準法に基づいて労働条件を適切に明示する必要があります。
そのうえで、特定技能では入管庁の「雇用条件書」など、在留資格の申請に関係する書類についても確認が必要です。
大切なのは、労働条件通知書と雇用条件書を単純に同じ書類として扱わず、それぞれの制度上の位置付けを理解することです。必要な明示事項を満たしているか確認し、書類の内容と実際の労働条件を一致させましょう。
Link Asiaでは、特定技能外国人の採用や雇用条件、在留資格に関する手続きについてもご相談いただけます。特定技能外国人の雇用に不安がある場合は、お気軽にご相談ください。














