特定技能外国人の採用において、給与水準と同じくらい重要視されるのが住環境です。
とくに現場でよく聞かれるのが「家賃(寮費)が3万円を超えるかどうかで応募意欲が大きく変わる」という声です。
企業側から見ると「給与が十分なら問題ないのでは?」と感じることもありますが、
特定技能外国人の多くは母国への送金を前提に生活設計をしており、毎月の固定費に非常に敏感です。
本記事では、特定技能における「家賃3万円の壁」がなぜ重要なのか、
住環境が採用・定着に与える影響、企業が押さえておくべき実務ポイントを整理して解説します。
目次
特定技能における「家賃3万円の壁」とは何か
特定技能外国人の採用現場では、
家賃(寮費)の「本人負担額」が月3万円以下か、それを超えるか が一つの分岐点になることが多くあります。
これは法律上の上限や制度ルールではなく、
実際の応募・定着データから見えてきた“心理的なライン” です。
多くの特定技能外国人は、
- 毎月一定額を母国へ送金する
- 生活費をできるだけ抑えたい
- 日本での滞在を中長期で考えている
という前提で就労先を探しています。
そのため、
「家賃が3万円以下 → 生活が成り立つイメージが湧く」
「家賃が3万円超 → 想定より負担が重いと感じる」
という判断が起こりやすくなります。
■企業側に多い誤解
企業側でよく見られるのが、次のような認識です。
- 「給与が高ければ家賃は気にされない」
- 「寮があるだけで十分だろう」
- 「日本人基準なら安い家賃だ」
しかし、特定技能外国人にとって重要なのは
“日本人基準の安さ”ではなく“自分の生活設計に合うか” です。
給与が高くても、家賃・水光熱費・食費などの固定費が膨らめば、
送金額が減り、結果として「思っていた条件と違う」と感じてしまいます。
このズレが、内定辞退や早期離職につながるケースも少なくありません。
※なお、「家賃3万円」という金額は、制度上で定められているルールではありません。 物件自体の家賃ではなく、会社からの家賃補助などを差し引いた後の「実質的な本人負担額」として語られることが多い水準です。
家賃だけでなく「総住居コスト」で判断されている
応募者が見ているのは、家賃だけではありません。
実際には、次のような総住居コストで判断されています。
- 家賃(寮費)
- 水道光熱費が含まれるかどうか
- インターネット代の有無
- 家具・家電付きかどうか
たとえば、
- 家賃2万5,000円+水光熱費込み
- 家賃2万円+水光熱費別で毎月1万5,000円
では、後者のほうが結果的に負担が重くなることもあります。
求人情報では「家賃が安い」と見えても、実際の手取り感覚が異なれば、ミスマッチが起きやすくなります。
住環境の違いが定着率に影響する理由
特定技能外国人にとって、住まいは単なる「寝る場所」ではありません。
日本での生活基盤そのものです。
キッチン・自炊環境の重要性
ベトナムなど自炊文化のある国では、
- キッチンの有無
- 冷蔵庫・調理スペース
- 共同か個別か
といった点が重視されます。
外食が中心になると食費がかさみ、
結果的に「生活が苦しい」と感じやすくなります。
共同生活への考え方
一方で、共同生活に比較的抵抗が少ない国もありますが、
- 部屋の人数
- プライバシーの確保
- ルールの明確さ
が曖昧だと、トラブルにつながることもあります。
住環境の不満は、仕事の不満よりも表に出にくく、
気づいたときには「突然辞めたい」と言われるケースもあるため注意が必要です。
給与水準だけでは人材確保が難しくなっている背景
以前は「給与を上げれば応募が集まる」という時代もありましたが、
現在は住環境を含めた総合条件で比較される傾向が強まっています。
特定技能外国人の情報収集は、
- SNS
- 同国出身者の口コミ
- 先に働いている知人の話
によって行われることが多く、
「家賃が高い」「生活費がかかる」といった情報はすぐに共有されます。
結果として、
- 給与は高いが住環境が悪い企業
- 給与は平均的だが住環境が整っている企業
であれば、後者が選ばれるケースも増えています。
採用時に企業が意識すべき「伝え方」と実務ポイント
住環境は、条件そのものだけでなく「伝え方」も非常に重要です。
採用時に意識したいポイント
- 家賃・寮費を求人段階で明示する
- 水光熱費が含まれるかを具体的に説明する
- 写真や間取りでイメージを共有する
- 「実質いくらかかるか」を本人目線で伝える
「後から説明すればいい」という姿勢は、
不信感につながりやすく、採用後のトラブルの原因になります。
また、
「家賃が高い代わりに個室」「設備が充実している」など、
なぜその金額なのかを丁寧に伝えることで、納得感は大きく変わります。
社宅・寮ルールの整理も重要
- 家賃改定の有無
- 退職時の扱い
- 途中退去の条件
家賃設定の適正化(実費を超えない)が重要です。
企業が物件を借り上げて社宅とする場合、本人から徴収できる家賃(寮費)は「実際にかかっている家賃・共益費等を居住人数で割った額」までです。 会社が利益を上乗せして徴収することは法的に認められていません。適正な金額設定であることも、トラブル防止の重要なポイントです。
※特定技能の住居基準や社宅ルールについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
👉 特定技能の社宅・住居ルール解説記事
https://linkasia.jp/blog/?p=1638
まとめ
特定技能外国人の採用では、
「家賃3万円の壁」=生活が成り立つかどうかの判断ライン
として意識されるケースが多くあります。
重要なのは、
- 家賃単体ではなく総住居コスト
- 自炊環境や生活文化への配慮
- 条件そのものと伝え方の両立
です。
住環境を整えることはコストではなく、
採用成功率と定着率を高める投資ともいえます。
Link Asiaでは、
特定技能外国人の採用設計から住環境の整備、社宅ルールの整理まで、
現場実務に即したサポートを行っています。
「条件を見直したい」「応募が集まらない理由を整理したい」
といったお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
















■【注意】1人あたり7.5㎡の基準
特定技能の運用要領では、居室の広さは「1人当たり7.5㎡以上(約4.5畳以上)」という基準が設けられています。 技能実習生(4.5㎡以上で可の場合あり)から切り替える際や、複数人でのルームシェアを検討する際は、この基準を下回らないよう注意が必要です。狭すぎる部屋は、不満の原因になるだけでなく、制度上認められない可能性があります。